21 予感
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「あの夢からするとあいつらがまた覚醒したのか?」
「うむ確かにおぬしの夢はかなり正確じゃ。じゃが、今回の夢は過去の情景。『影の一族』の覚醒の際は未来か、現在の情景が見えておった。ただの悪夢の可能性も否定できん。とはいえ、我らとあやつらは似て非なるもの、断定は出来ぬ」
「なるほど。用心に越したことはないってことか」
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外に出たSはシルビナと会話している。やはりあの夢のことが気になっているようだ。
そのとき、周囲の静けさを乱すように村の方角から騒音が近づいてきた。
「こら、待てー! この食い逃げがー!」
怒鳴っているのは以前歓迎パーティー(?)に利用した酒場の主人だ。その前方では弁髪の、いかにも格闘家らしい風貌をした男が走っている。
男がSの横を通り過ぎる瞬間、Sは男の髪の三つ編みになっている部分を掴んだ。
「ぬおおおおおおおおおおおおお!」
男は大声を上げながらつんのめった。
「てめぇはなにしてんだ!」
「格闘家というものはいついかなるときでも鍛錬を……」
「お前のは鍛えてるのは逃げ足だろうが!」
Sとその男が口論している間に、追ってきた男もゼイゼイと荒い呼吸を吐きながら追いついた。
「悪いな。こいつは俺の知り合いだ。こいつの食べた分は付けにしといてくれ。今度払う」
Sは村では信用されているようだ。店主は文句一つ言わずに頷くと戻っていった。
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「で、チャンなんのようだ?」
「そうですよ師匠。何しに来たんですか?」
その後Sは再びチャンを連れ食堂へと戻った。どうやらWが以前共にいた格闘家というのは彼のようだ。
棘のある質問を投げかけられた当人は気に留めた風もなくいまだ食事をしている。
質問から約五分、ようやくチャンが顔を上げた。
「うむ、料理がうまくなったなW!」
「いや、それほどでも……って質問したことと全然関係ないじゃないですか!」
「で?わざわざ山ごもりを中断してなんの用だ?」
「うむ!おぬしも最近獣型の悪魔の数が増えていることは知っているであろう!? 我が山にも大量に住み着いてておえん! 力を貸せ!」
「それは依頼ってことでいいのか?」
「うむ! 報酬はないがな!」
「まあ、おれのルールからいけばそうなるか……。じゃあ、行こうぜ」
「私も行きます!」
結局現地へ行くこととなったのはSとWだ。以前のように村が襲われたときのことを考え、ある程度の戦力を残すこととしたのだ。
記録対象が分散するため記録者の追加が必要
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「確かに多いな……異常だ。」
問題の山へ到着してから数時間後。一旦相手の活発に活動する夜を待ち、現在は三方向に分散して戦っている。分かれてから三人が倒した獣型悪魔はおよそ300。普段あまり見かけない獣型の悪魔がこれほど集まるのは異常でしかない。
「S、終わったならば直ぐに帰るぞ。」
「ああ? 別に一晩休んでからだって問題ないだろ?」
「うむ、確かにそうじゃが、嫌な予感がする。」
Sはその言葉を聞いて、顎に手を当てる。
「なら行こう。お前の勘は当たる、生きていたときからな。」
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「W、お前はチャンとこの山の隅まで悪魔が潜んでいないか探索してくれ。俺は先に帰る。遅れていいからな」
「はい。分かりました」
Wは疑問も文句も口にすることなく承諾した。
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「はぁ~、何にもやることがないってのも退屈ね~」
Sが外出してから約一時間後。レディことLは、庭に当たる場所で大の字に寝そべっていた。
久しぶりの自由時間だと思い、満面の笑みとともにSとWの外出を見送ったものの、三十分も経たずに退屈な現実に悩まされていた。
その横ではM、Nが弓の練習をしている。光を放つ矢が空中に線を引き、すぐに霧散する。どうやら能力をうまく使えていないようだ。
「ねえ、自分の武器ってどんな感じ?」
「え?」
「私達にはそれぞれ自分の武器があるんでしょ?私はまだ持ってないから、どんな感じなのかなーって」
「そういえばなんでレディは自分の武器を持ってないの?」
「え……そ、それは……」
言いかけたところで『紅蓮』の部隊の一人が駆け寄ってきた。
「首領、Sに用があると言うものが一人来てますよ」
「じゃあ、今行くわ」
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「そろそろ下りるか」
フェザーの背からSが舞い降りた。村の入り口へと着地する。
「大丈夫そうだな」
「うむ、村に異常はないようじゃな。S、城へ急ぐぞ」
その言葉と同時にS走り出した。
◆
レディが剣を支えとして立っている。そしてそこから20mほど離れた位置に一人の少年が立っている。
「Sが来るまで退屈せずにすみそうだと思ったが、とんだ期待はずれだったようだね」
そう言いながら少年は近くにあった石に手を伸ばし、拾い上げると、手にしたパチンコに引っ掛け引き絞る。
「おやすみ、お嬢さん」
石がパチンコから離れ、唸りをあげながら隕石と化してレディへ向かう。が、
レディへと直線を結ぶ直前、石がはじけた。
熱で溶けてかけていたのか、液状になった一部が地に落ち、蒸気を発生させる。
「やっとご登場ですか」
ゆっくりと振り向いた少年は、自分の目に映っている銃を構えるSを恐れる様子はない。
「伝言があります。『おきたばっかではらぺこ。どこかのくにとおまえたちたべる。』だそうです。では」
そう言って頭を下げ、再び顔を上げたその目に映されたものは、頭上に巨大な鎌を振りかぶったSだった。
Sが鎌を振り下ろし、一回転して着地する。
「今日のところは引いてやろう。だが、次に顔を合わせたときは覚悟するがいい」
少年はその一言と左腕をその場に残し、走り去った。
少年が走り去るのと同時に今まで何とか立っていたレディが前のめりに倒れた。
「当たっちまったな、予感」
そう言葉を漏らすと、レディを方に担ぎ上げ、城へ歩き出した。
Sはレディの目から零れ落ちる水滴に、気づいていたのだろうか。
メモ 紅蓮 名の知れた対悪魔戦闘に特化した集団。以前はフリーの傭兵のようなものだったが、あるきっかけを元にSの城に定住している。その特徴は全員が女性であり、またそれぞれが特殊な武器を使うところにある。
ようやく続きを書くことが出来ました。なぜ更新がやたらと遅くなったかというと、今まで半ば勢いで書いていたので、矛盾点がないように調整してたからです。続きを楽しみにしていた方がおりましたら、ごめんなさい。
これはおまけなんですが、少ししたら人物紹介の部を一回設けようと思います。(ジャックはやってしまいましたが。)もし反対意見などがありましたら、お願いします。それがない場合は強行します。(いつになるか分かりませんけど・・・)




