15 迷惑
Sへの挑戦は瞬く間に幕を下ろされた。
伸びをしながら外に出るとそれぞれに銀貨を一枚ずつ渡した。
「さてと、野暮用も片付いたし、観光でもしよ『なにを言うておる』うぜ。解散」
背後からの声を完全に無視し、脱走しようとするSを何かが捕らえた。
「わかった、わかったから! 首を絞めるな!」
解放されたSはため息をつきながら振り返った。そこに立っていたのは、
「……シルビナ……さん?」
「いや、そいつはシエラだ。似てるけどな」
そこに立っていたのはシルビナそっくりの人物だった。服装、身長、顔つき、どれも鏡に映したようだ。しかし、唯一目の色は違い、黒い目の周りを暗い赤が縁取っているが、不自然さは感じられない。
「なんだよ。もう片付けたぜ」
「いや、そのことではない。わらわからおぬしに依頼があるのじゃ」
「あぁ?」
「うむ。その前にそこで休憩するとしようかの」
シエラが近くの酒場を指し、そのまま入っていった。
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「で、依頼ってのは何だ?」
酒場だと見えたのは表面だけであり、内部(入ってすぐは酒場になっている。)は、
「でか!」
「なんだこれ……」
「…………」
T、Fは率直に感想を述べている。M、Nも言葉は発していないが、目を見開いている。
地下へ下りるとかなりの広さがあった。
およそ二十階ほどが地下へ続いており、各階は円形の廊下となっている。
ここはデビルハンターの本部となっているらしい。
「おい、落ちるぞ。とりあえず食堂でも行くか。あそこなら座れるしな」
「おぬし、その方向では完全に逆じゃぞ」
S=方向音痴(疑う余地なし)
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「で、依頼ってのは?」
全員が席に着いた時点でSが切り出した。普段とは違い、鋭さが顔をのぞかせている。
「うむ、これじゃ」
シエラはテーブルの下に手を入れると何かを引き出した。
「…………………………………………………………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………………………………………………………
……………………………………………………………」
「おぬし、いつまで沈黙しておるつもりじゃ?」
シエラが下から引き出したものは、少女だった。容姿は黒髪、黒瞳で年齢は十歳ほどだろう。
引き出された後もシエラから離れようとはしない。シエラはその子の頭をなでている。
「悪いが俺にロリコンの趣味は『ゴツッ』ぐっ……ない」
「この娘の面倒を見てほしいのじゃ」
「ここにいれば安全だろ?たぶん世界中で一番安全だぜ、ここ」
「うむ、この娘は両親を邪教にされてな。それゆえここで保護しておるのじゃ。年のころは遊びたい盛り。このような狭苦しい場所で閉じ込めておくのはかわいそうに思っての。しかし、まだ幼い上、両親共に強制的に邪教にされたとなれば、おそらく悪魔どももこの子を狙ってくるであろう、遠出するわけにはいかん。
そこでじゃ、この町の近くに娯楽施設が出来たそうじゃ。そこに連れて行ってやってほしいのじゃ。おぬしが護衛になれば問題あるまい?」
「なるほどな、いいぜ。引き受けた。で、お前はどうするんだ?つかなんでここに?」
「もちろんわらわも一緒に行くが?」
「…………」
Sはすねを押さえながら再び沈黙した。《ならお前だけ行けばいいだろ。》とその顔は語っている。
「ほほっ、おぬしらとて遊びに来たのであろう?都合が良いではないか。それにこの娘はわらわから離れようとはしないでの」
先ほどまでの鋭さはどこへ消えうせたのか。Sはぐったりとしている。
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「まったく、面倒なことになった」
「ほほっ、良いではないか。おぬしらとて息抜きのために来たのであろう?」
「まあな。だが、邪教候補にされてる娘か。いったいどんな力が……?」
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精神でシルビナと会話しているSをその子供は見つめ続けていた。
どうも、ようやく色々な高校の行事に区切りがつき、落ち着いて執筆できるようになりました。と、いっても文章は全く改善されないと思います。
余談ですが、そのうち前書きか、後書きの欄を使って用語の解説などをしてみたいと思います。用語の中で分からないものがありましたら、感想に質問として書き込みお願いします。答えられるものならば、優先的に解説するつもりです。(実は物語の中で解説するのが予想以上に難しいので、こちらで出来たら楽かなと・・・サボリ、かな?)