14 挑戦
「あれ?言ってなかったっけ?」
「…………」
デビルハンターとはその名の通り悪魔を狩ることを生業としている者のことだ。そして、デビルハンターは大低の場合デビルハンターの組織にその名を連ねている。その中にはE~SSSまでのランクがあり、ランクの高さは同時に強さを示すといわれる。(ちなみに、Sランク以上にヴァンパイアはおらず、他種族が独占している。)SSSは現在三人しか知られていない。その中の一人となれば驚くのも無理はないだろう。
「そんなに驚く必要はないぜ。デビルハンターのランクは強さで選ばれるみたいなことになってるけどよ、実際は少し違うんだよ」
「?」
「SSSは自分の持つ能力をどれだけ引き出せてるかで判定されるからな。ようは武器の扱いと、自分の能力を最大限まで引き出せてるかどうかだ。だから、実際のところ強さと直結してるわけではないんだなー。ま、Sランク以上なら強いやつ多いけどな」
「じゃあ、お前は?」
「さあねぇ。俺より強いやつならそうでもないって感じるだろうし、俺より弱いやつなら強いって感じるだろうからな」
「おぬしら、いつまで話しておるつもりじゃ」
「そういや、明日行かなきゃいけないんだったな。もう寝よーっと」
突然現れたシルビナの欠伸をしながらの文句を区切りとし、その話題は打ち切りとなった。
Sは早々に自分の寝室へとわずかにはねるようにしながら向かった。
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「にしても、危なかったな。誤魔化すの手伝ってくれてありがとよ」
「おぬしは本当に世話の焼けるやつじゃ。まあ、おぬしが己の力を明かしたくないのは気持ちはわからんでもないがの」
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城の管理を村の人間に任せ、住人達が出発したのは午前9時ごろ。既に道のりの半分を過ぎ、昼食も兼ねた小休止がとられていた。
「そういや昨日聞きそびれたけど、何で挑戦なんてされんの?」
「まあ簡単に言えば、強くて名を知られた奴らがその強さの証明をするために挑戦するんだが、それを受けるのもSSSの実力の証明をするためなんだよ。案外知られてないけどデビルハンターの組織って民間でよ。そうすると、国に守られてる軍隊とは違って客がいなきゃ飯は食えないだろ? だから、利用価値の宣伝をしてんだよ。強いやつ叩き潰して。ってお前聞いてるか?」
Sの長い説明にFは既に興味を失い、まわりの景色を眺めていた。
「でも、何でSなんだろうね? 他に二人いるのに」
近くにいたためにSの話を聞いていたM(なのか?)がレディの方へ首を傾げる。
「そりゃあ、あいつが一番弱そうだからよ。他にシエラとジークがSSSなんだけど、シエラはデビルハンターの創設者だから弱いはずないって思われてるし、第一女に勝ってもあんまり自慢できないでしょ?で、ジークは……なんて言うか明らかに強そうなオーラ出してるのよ。で、」
「俺はと言えば、体力不足でなんとなく間の抜けた雰囲気を出してる。だから、こいつならいけそうだ、って淡い期待を抱くわけだ」
レディが体を震わせる。真横にいたSに気づいていなかったようだ。
「そうやってこっそり近づくのやめなさいよ!」
「そんなことより、休憩は終わりだ」
「出発?」
「いや、接客だ」
Sの目が鋭くとがる。Sの言葉を待っていたかのように地面が盛り上がった。その部分から顔を出したのは、
「剣士型レベル三と格闘型レベル三が二体か」
「分かっていたのか。ならば堂々と来ればよかった。モグラの真似は性にあわないのでね」
剣士型のレベル三は両腕にそれぞれ剣が結合している。格闘型とは違い、レベルが上がるにつれ知能も上がることが確認されている。
「レディ、剣士はやるよ。W、メイス持ったやつとモーニングスター持ったやつどっちがいい?」
「じゃあ、鉄球持ってるやつでお願いします」
既にその場にいたWは、答えるとすぐに駆け出した。
「開放してもいいから三十秒以内で倒せよ」
Sも刀を抜き、自分の相手と向かい合った。
「では、お相手願おうか。お嬢さん」
剣士の悪魔はレディへと向き合う。その言葉を聞いたレディは笑みを浮かべた。いや、顔をゆがめた、と言った方が表現としては正しいだろう。好戦的な性格がうかがえる表情だ。レディの体から炎のような赤い影が浮かび上がる。その瞬間刃が交わった。
いつ剣を抜いたのかレディは剣を横なぎに振るい、悪魔の攻撃を防ぐと、同時に悪魔の腹部を蹴った。体勢はそのままで派手に吹き飛んだ悪魔が最後に見た光景は己の眉間から生えた剣だった。
少し離れたところではWの前から灰が風に吹き散らかされ、Sはだるまのような悪魔に止めを刺している。
「よし、いこうぜ」
「開放ってなに?」
出発してまもなく、N(なのか?)がWに聞いた。
「えーっと、そうですね。師匠の言ってたことですけど、生物の体には自分の体を壊さないようにリミッターがかけられてるそうなんです。私達の場合、リミッターをかけた状態だと十五~十六%しか力が出せないんですけど、それを外すやつみたいです。他の生物と違って、『他種族』は百%の力を出しても耐えられる体なんですけど、ずっと百%のままだとエネルギーの消費が激し過ぎるんで、それを抑えてるらしいです」
「ようは、今まで出し惜しみしてた能力を出す技術ね。開放は3段階あって、三段階目で五十%まで力を引き出して、残りもう一段階で百%にするみたい」
「じゃあ開放した時に体から出てたのは?」
「あれはオーラ、だっけ?」
「ええ、みんな色が違うらしいです」
ちなみに私は黄色です、とWが自分のオーラの色を告げた後は全く別の方向に会話が進み、他愛のないないものへと変わっていった。
Sの言っていた通り、試合はあっという間に終わった。《一R二秒、リングアウト、勝者S》(メモ 相手はヴァンパイアで身長百九十cm、体重約二百kg。Sの顔を見た途端怯えだしたが、知り合いなのか? T、Fは相手を知っていたようだが。)
「あいつが相手なんて聞いてねぇぞ! 畜生、あん時と全く一緒じゃねえか……」
変な感じになってしまいましたが、ご勘弁を。
挑戦者は最初の方の話を読んでいただいた方には誰だか分かると思います。