3-4
大広場の最奥、一本伸びる路地を歩くと祭壇のような場所に出る。
ちょうど食べ終わったクッキーの袋をカバンにしまうと、後ろから声をかけられた。
「わーるどわーるどさんでしょうか?」
振り向き、足元を見る。
背丈が膝までしかなく、他のよりどこか一回り小さい、コロポックルがいた。
「はい。カナタさんでお間違いないでしょうか。」
「カナタですっ。」
「~~~~~~っ。」
田嶋ちゃんが悶えているが、気にしないでおこう。
「ああ、よかった。少し時間より早くてすみません。
私、地球支社 極東課の斉藤です。」
「はじめまして。さっそくなんですが、あっちではなしましょう。」
名刺を受け取ったコロポックル、もといカナタさんは、祭壇横の小さな小屋に入っていった。
さすがに入れないな……と悩んでいると、カナタさんが椅子を二脚持ってきた。
「どうぞ。」
心許ない気がしないでもないが、ありがたく座ることに。
「ありがとうございます。失礼します。
それで、依頼というのは女神が欲しい、とのことでしたが……。」
「ええ。このさいだんの、いけにえになるめがみさまがほしいんです。」
「いっ、生贄?」
田嶋ちゃんが顔をこわばらせる。
童話支社によくある話だが、彼女は知らないようだ。
「田嶋ちゃん。生贄といっても、喰われたり炙られたりとかじゃないよ。
ここ、ドゥーアの森のトップとなって、えー…巫女として従事する人のこと。」
「巫女ですか。」
「そう。なんで生贄なのかって思ったでしょ。
ドゥーア全体への魔力供給の元となるから、生贄って表現するんだよ。」
「なるほど……。」
俺はカナタさんの方へ向き直る。
ああは説明したが、難しい話だ。
「カナタさん。女神を探すのはお手伝いしますが、人材としてはかなり難しいです。」
「しっています。でも、つぎのしきまでにみつけてほしいんです。」
「次の式、というと、成人の儀ですね。」
「はい。」
この成人の儀は五日後なのだ。
「とりあえず、契約の前にいくつか希望を伺いますね。」
――――――――――
年齢:50~60歳→地球で10~20くらい
性格:生真面目に働く人で、すごい人
綺麗で可愛い人がいいです
業務内容:ドゥーアの女神として君臨
なんでもやる
他所の森林に向かって相談(戦闘あり)
――――――――――
はっきり言って、とんでもなく微妙だ。
中途半端でふんわりしていて、当てはまる人も多そう。
「んー、そうですね。他に、決め手にしている条件はないですか?」
「きめてってなんですか。」
「こういう人なら何でも! みたいに絶対に譲れない条件ですね。」
「……。」
カナタさんは黙りこくってしまった。
眉をひそめたり、こめかみに手を当てたりしている。
果たして、そんな条件がなくて悩んでいるのか、条件が多すぎて決められないのか。
後者だと助かるな。
「きめましたっ。」
「はい、お伺いします。」
「おさけにつよいひとだとすごくうれしいです。」
お酒か。
確かに、童話支社なら宴会やらパーティーやらの回数が以上に多いからな。
「お酒に、強い人……。女性……。」
「どうした?」
「斉藤さん。私心当たりあるかもしれません。」
なんとなくではあるが、俺は嫌な予感を抱えていた。