5-5
気がつけば、俺は今までと変わらない、フアンさんの面倒ごとを田嶋ちゃんに押し付ける日々を過ごしていた。
「斉藤ちゃん、あとこれも頼むよ。」
「3,000円です。」
「ねえ、田嶋ちゃんいる? これ頼みたいんだけど。」
「はーい! 今行きます!」
あれからビディさんの依頼がどうなったかって?
驚くことにまさかの社長サンは世界合同指名手配犯になった。
まあ指名手配されることは予想がついていたものの、その上を行くのが次から次へと出てきた余罪だ。
レジデンタルルールを後にしたフアンさんとキティさんは血眼になって今井を探していた。
探せばボロはいくらでも出てくるもので、万引きや喧嘩など比較的小規模なものはもちろん、極め付けにまさかの人身売買を行なっていたことが判明したのだ。
その上、売買した人を世界観移動させているそうで、特にタイプ支社周辺では失踪者が後を経たないらしい。
そしてそれらの罪がバレそうになり、自分はコネを使ってトンズラこいたという。
ようは世紀の大犯罪者だ。
「そういえば懸賞金はどうされたんですか?」
フアンさんの厄介ごとを抱えて半泣きになりながら田嶋ちゃんが質問をしている。
今フアンさんとキティさんには禁句だというのに、なんて可哀想なんだ。
「懸賞金だあ……? バカなこと言ってる暇があるんなら、さっさとその脳みそ働かせな!!」
「ふぁっ、ひゃいぃ……!!!」
そうして田嶋ちゃんはぐすぐす言いながらデスクに戻ってきた。
そこへマトヴェイ先輩が来て涙目になった田嶋ちゃんを慰める。
「田嶋ちゃん、先輩からのありがた〜いひと言。」
「マトヴェイさん……?」
「触らぬ上司にパワハラ無しってね。」
「はぁ…………。」
俺はデスクから目が離せなくなった。
本当に恐ろしい人だ、田嶋ちゃんと違った意味で。
この会社でまともなのは俺くらいだと常々思わされる。
「ーーん、……聞いてます、斉藤さん!」
「ぅわあなんだよ急に大声だして。危ないな。」
突然田嶋ちゃんに大声で叫ばれ、椅子から落ちそうになる。
それをみて滑稽そうに顔をしかめられたが、こっちの気も考えて欲しいものだ。
「フアンさんが後で来いって言ってましたよ。」
「ああ、それ田嶋ちゃんが行ってきて。」
「『斉藤に言っとけ、お前こないだの契約取れてねえから経費落ちねえぞ』だそうで……。」
そんな話聞いたことがない。
「なんか『あんたのじゃないわよ』って。」
とんでもない上司だな。
仕方ないから、重たい腰を上げるとするか。




