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「で、他に何すればいいですか。」
「まだ働いてくれるのか。じゃあこれも頼むよ。」
「……終わりました。」
「そうか、早いな。それならこっちも頼むよ。」
「…………もういいですか。」
「いい訳ないだろう、まだ仕事は残ってるんだ。」
これが、フアンの野郎の得意技。
あーいえばこーいう。
どうして俺が世界渡ってこんなボロオフィスの仕事まで片付けねばならないんだ。
こんなことなら田嶋ちゃん呼んで押し付けでもすれば良かった。
ーーWorldWorld地球支社、特にアジア支部はパワハラの連鎖が酷いことで社外からも有名であるーー
小一時間を2回分ほど作業をしていると、どこからかキティさんの声が上がった。
「あぁっ! やっと見つけた!」
キティさんは一枚の封筒を持ってフアンさんの元へ駆け寄った。封筒にはぞっとする三文字が書かれている気がしたが、俺は一旦見ないふりをした。
「ひとまず、探し物見つかったなら俺はもういいですね。自分の仕事あるんで戻ります。」
すると、騒動の間中ミイラのように動かなかった取引相手が勢いよく飛び起きた。
「ま、待ってください斉藤さん!! しゃ、しゃちょ……今村を探してくれませんか……っ。」
部屋を出ようとする俺のワイシャツの裾を必死に引っ張るビディさん。
その様子に俺はどことなく違和感を覚えてビディさんに向き直る。
「すみません、ビディさん。ご存知かもしれませんが弊社はあくまで世界間の転送や移転を目的とした事業を行う会社でして、人探しは探偵などを頼られた方が確実では……。」
俺が言い切る前にビディさんは首を振って見せた。
そして涙目になりながら訴えかける。
「いえっ、これは転生相談ですっ。今村は斉藤さんの世界に転生してるかもしれないんですっ、それもっ、どこの仲介も無しに!!!」
その言葉に、俺らはぴたりと動きを止める。
世界間移動は簡単じゃない。
移動する人も、受け入れる側も、常に『代償』が伴う重いものだ。
それを、間に立って代償の負担を分担し、世界の均衡を保つ役割を請け負うのが俺たちみたいな仲介業者、WorldWorldを始めとした全世界間人材派遣会社だ。
もちろん弊社以外にも同業は沢山いる。
こういう仕事だから同業者間で監視するため倫理団体を発足し、お互いを守るための取り決めもある。
世界のバランスは崩さない、需要と供給にそぐわないものは断る勇気を。
だが稀に仲介を通さず世界間移動を行う輩が存在する。正規の会社に代償を押し付け、身勝手に顧客の要求を呑み、自分らだけ儲けようとする悪い奴ら。
それは、この概念の戒律に大いに反することだ。
見つかればただじゃあいられない。
警察的な役割も兼ねて探し出し裁判にかけることが多いものの、そもそも規模が広すぎて捕まらないことも多々ある。
とにかくまず捕まえるべきとしてできた一つの制度が……
「あんたの社長、賞金首ですか。」
そりゃああの二人も血眼になって探すというもの。
一生で使いきれないほどのお金が手に入るのだから。




