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「先輩ここまでしちゃったんですか?!」
「ちょっと、私情が乗っただけだ。」
「一体何があったんですか。」
童貞呼ばわりが気に食わなかった、とは言えずに飲み込んで、ちょっとねとだけ返した。
プータローを殴った後、人質及び奴隷の数が三十人程と違法に獲得した金を処理するため、田嶋ちゃんと、RPG課のピーターさんを呼んだ。
鼻血を出して伸びているプータローを見たピーターさんはギョッとしていたが、それも一瞬で後片付けは恐ろしく手慣れていた。
俺は事の端末をピーターさんに報告し、田嶋ちゃんには余罪の追求と被害者への謝罪をお願いした。
「ちち、ちなみに。制裁ってな、殴っただけ…………でしょうか。」
目も合わせないピーターさんが聞いてくる。
「いいや、それじゃ色々と割に合わないだろ。犯罪者の称号と、転生不可の権利をプレゼントした。」
「称号ですか。」
一定評価以上の社員からの制裁には、それぞれの裁量によって罰を下すことができる。
それをRPG課らしく称号という形で与えただけだが。
「そ。その名も【ホラ吹き変態プータロー】」
「あ、悪趣味……ですね。」
「まあ誰も彼の全てを信じてくれず、変態と認識され、何にもできなくなるだけですよ。」
あと、一生童貞でいることにしてやった。
「真面目に勇者として生きればいつかは取れるかもな。神の温情ってやつだよ。」
「た、ただの、平社員……では……。」
俺は面倒になり、ピーターさんを置いて地球支社に戻ることにした。
「待ってくださいっ……まだ人質の処遇がぁっ……。」
「全員元に戻しといてください。」
「そんな適当な……。」
ピーターさんを心配そうにみる田嶋ちゃんの背中を叩く。
「うだうだ言う奴嫌いなんだよね。」
「斉藤さんのSはサディスティックのSですね。」
「ん?」
「帰りましょう。」
こうして、勇者失踪事件は終わった。
帰ってから、殴る必要はなかったから過剰な暴力だ、業務執行妨害をされたから正当防衛だとフアンさんと小一時間喧嘩したのは、また別の話ということで。