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ここかな、多分。
俺はプータローが住んでいるという場所にやってきた。
ぱっと見は魔物のアジトのように見える洞窟の入り口には、曲がった看板がかけられていた。
「アジト、ね……。浮かれまくってんなぁ。」
もしも勇者の職がなんでも許される最強の職業だとしたら、俺が真っ先に転職している。
血みどろの戦闘をして、苦しい思いをして、何度も死んで、それでも得られるのは一生暮らせる巨万の富ではなくわずかな名声と出会った人との信頼だけだから、勇者の職は過酷と言われるのだ。
それを裏切ってしまえば、唯一の名声と信頼も失って勇者とは呼べなくなるのは当然。
プータローはあまりにもバカな事をしでかしたのだ。
明日にも急襲されようとしているのに、何の準備もされていない様子に溜息ばかりが出る。
相当なバカさに現状がどうなっているか見当もつかず、ゆっくりと洞窟の奥の扉を開いた。
そこでは、頭が痛くなるような光景が広がっていた。
「んっふふ……んふふっ。あっ、いやぁ。」
「勇者様ぁ、こっち見てくださぁい。」
なんかもうベタだ。
ベッタベタのベタだ。
とんでもねえ世界が繰り広げられてんな。
変な香りが部屋中に焚かれて、薄暗く、きゃっきゃうふふといった声がそこら中から聞こえる。
エロ漫画の導入じゃねえんだぞ。
部屋の真ん中には半裸でデブのプータローが座り、女の子達を侍らせていた。
「おや、新しい捧げものがやってきたようだよハニー達。」
「ええん、やだあ、あたしの事捨てないでくださいよぅ。」
「大丈夫だよハニー。キミは僕の最愛のハニーさ。」
吐きそう。
共感性なんちゃらと、ちびのデブに似合わないくさいセリフに今すぐここから逃げ出したい気持ちが勝つ。
「俺が女に見えるとはな、薬でも始めたか。」
「んむむっ、強気わからせ系お姉さんかな?!」
話通じてる?
本当にこいつ薬やってるんじゃないよな……。
「まぁいいか。田中プー……風太郎さんですね。私、World World社員の斉藤と申します。」
「…………その名は捨てた。貴様、何者だ。」
社員だっつってんだろ。
「あはは、突然すみませんね。規約違反疑いがあるので、ちょーっとお話伺えますかね。」
プータローは、その時初めて伸ばした鼻の下が元に戻った。