4-3
ひとまず俺は、音信不通となった勇者サマと最後に連絡が取れた宿屋にやって来た。
所々古ぼけた扉を押し開き、中に女将さんがいない探す。
「すみません。どなたかいらっしゃいますか。」
するとしばらくして、二階からどたどたと足音をたてて恰幅のいい女性が降りて来た。
「はいはい、なんでしょう。泊まりですかね。」
「ああ、いえ。人探しをしておりまして。」
そういって一枚の写真を見せると、女将さんの顔がみるみる内に歪んでいった。
一体あの勇者サマ、何をやらかしたんだよ。
「チッ……。このツラ見せるんじゃないよ、反吐が出る。」
そう言い捨てると、写真を奪い取りビリビリに破かれてしまった。
「ああーーっ! ちょっと何するんですか!」
「こっちのセリフだね。そんなドクズの馬糞野郎のこと探すあんたの方が気持ち悪いったら。」
冤罪にもほどがあるだろう。
俺は渋々、粉々になった写真だったものを拾いあげる。
「そんな会いたいとかじゃなくて、ぶん殴りたいんですよね。」
「……。」
「俺も迷惑してまして。さっさと見つけて問い詰めたいことがあるんです。」
シメた。
ぶん殴りたいは本音だったから、女将さんに俺の必死な想いが届いたぞ。
「そいつは、勇者と名乗るばかりの詐欺師だよ。」
耳を疑った。
転生した職と違う職務になっているなんて、特にこの空想支社の管轄内では滅多にない。
0と1で出来たプログラムを基盤としているから、余程のイレギュラーがないと自分の意思ごときで世界は、職は変わらないはずだ。
――ということは、その"余程のイレギュラー"が起きたのだ。
「これは、面倒中の面倒だぞ。」