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一章 転生

はじめまして、楽しんでいってください。

~本日5話までUPします

①転生、一歳






「間違えて殺しちゃった後免ぽよ 」


転生トラックに轢かれ、神と名乗る人間からぴえんな謝罪を受けた。

顔面に『神』と書かれた所謂白ハゲ姿の、性別のよくわからないソレは、転生特典になんでも願いを叶えるよ、君たち好きでしょ? なろう系。などとライトに言った。



 今日はすごくいい天気だった。

ひさしぶりに親友と待ち合わせをして、歩きながらわくわく今日の予定を決める。二人でいるといつも楽しい。


「靴、服。映画も観たいし、どうする?」

「うーん、ちょっと遠出しちゃう?」

「賛成!久しぶりだもん、ぶらぶらしたいよね」

「カフェも行こうよ、あのケーキが美味しいところ」

「それじゃあ、映画はこの16時の回にして……」


私達は手を繋いで道を歩く。

駅に向かう一つ目の角を曲がった瞬間だった、何かが飛んできたことだけわかった。


 で、今だ。


神にとって凡百の命の処遇などさほど重要でも無いのだとご通達頂いている。わくわくお友達デートを返せ。



それでお詫びに好きなスキルを上げるからさっさと転生してくださいと言われてもワクワクデートは返らないのだから仕方ない。


――私と親友は握り合った手を無意識に強く握って、お互いの顔を見た。


「 ……私たちは親友なので、生まれた先でもまた出会って親友になりたい」

どちらからともなく言った。


「せっかく……せっかく人生もうゴールしていいよね? だったのに! あんまりだ! ちくしょう! うさぎになりたい!!!! 愛らしいダッチ柄のうさぎプエーー!!!」

 もともと厄介な持病があり、人生に絶望していた親友は現実逃避の真っ最中らしい、耳にたこが出来るほど聞いた「うさぎになりたい」を叫びながらテンションが乱高下している。私はおちつけと親友の背中を叩く。



 私は考えた。なんでも転生特典でくれるというのなら言った者勝ちなのでは? 

 そうだ! そうだよ!

「異世界転生楽しみたい! 文明レベルが今までの世界より低いけど人権はちゃんとある! これ絶対ね!! ファンタジー世界で、科学が発展してなくて、そのくせ魔法でなんでも出来ちゃう世界!!! 当然私たちは特別異常なまでに高い魔力を有していて、魔法を使うのも特別上手いんだよ!!!! 」

 私もテンション上がるわ。でもこれは譲れないよね!!!

 親友はそんな私を見てドン引いているが気にせずに畳みかける。



「私は絶対に金持ちになりたいの! 貴族! そう! 貴族がいい! 貴族で天才で美少女のぶっ壊れ性能! ハイエンド主人公! でも他の人に嫉妬で刺されるとか嫌だから誰にも嫉妬されない憎まれないパッシブスキルもください!! あとドラゴン食べてみたい! 美味しく食べたい!! 」

 私の矢継ぎ早の要求を聞いて、親友もおずおずと手を挙げる。


「文明レベルが低いの? あの……ならわたしは健康な体が欲しいかも……せっかくうさぎになれるのに生まれてすぐ死ぬなんて嫌かも、人並の健康でいいから」

 親友控えめすぎでつまらん。

 で! どうですか? と白ハゲ神に声をかけてみる。


 白ハゲ神は、「おけまる~」と言った。

「うさぎになりたいのならば、汝はうさぎの国へ。貴族で天才で美少女のぶっ壊れ性能で嫉妬されずドラゴン美味しく食べたいのならば、汝はドラゴンのいる国の、貴族で天才美少女に」

 一応神々しく言われる。




 お願いしまーすと2人で手を強く強く握り合って、綺麗に頭を下げ、ぽぽぽぽーんと知らない世界の、知らない星の、知らない街に飛ばされたのだった。


 きっと私達が轢かれたのはおもちゃ屋のトラックだったんだろうなと思った。



____________________________________________________


うさぎ姫0歳



森を抜けた草原に、深い堀と高い壁を有した街がある。

この街は少数種族の国だ。


高さ2メートル弱で白壁の丸い家が立ち並び、大通りには野菜や果物の露店が所狭しと並んでいる。

通りを抜けた広場には掲示板があり、国民へのお触書が掲示される。

そこから更に大通りを真っ直ぐ行けば、小高い丘の上に王族、貴族の居住区があり、漆喰の壁とレンガの門が備えられ、槍を携えた門番が立っている。


居住区には貴族専用の様々な建物が並び、郊外には一般国民の入れない専用の森と川もある。


丘の一番上にあるのが王城だ。


王城の隣に、円形の、分厚く美しく光る茅葺屋根の、立派な屋敷があった。



屋敷の隅にある納屋には10人ほどの人間がいる。


その人間達はワンピースを着ていて、全身がふわふわの毛に包まれており、頭から二本の長い耳が、おしりからは短いふわふわのしっぽが生えている。

うさぎが人の真似をして立ち上がったような姿の種族。


この世界では兎人うさひと族と呼ばれている。



茅葺のこの屋敷は東兎人国ひがしうさひとくにの王妃と産まれたばかりの子供が暮らす後宮だった。日本でいうところの大奥、イスラムでいうところのハレムに近い。



納屋の前に集まっているのは、この屋敷に住む10人の兎人族だ。

まだ子供で、ふわふわの毛玉の様だ。

ぽわぽわと綿毛のように愛らしく、耳も短く、体も細く、歩くのも拙く、人間というよりもうさぎに近しく見える。


「今日は末の妹の為に皆でべっとを造るわよー! 」

年長の兎人達が弟と妹達に指示を出す。

「はーい! 」

小さいふわふわの塊達が元気に返事をした。

「お日様の光と香りがついた草をたっくさんとってくるのよー! 」

「それじゃ、いってらっしゃい! 」

「いってきまーす」

子供達は納屋から、楽しそうにわっと駆け出す。


年長の兄姉達は納屋の外でシーツを縫って、下の弟妹たちは各々の場所で草をむしって手提げ籠に集めている。

もちろん寝床用の干し草も忘れない。


「クローバーと、チモシーと~、スギナも取っとこう、タンポポは美味しいから…ちょっとだけあげよう」

まだ小さい弟妹は妹の為にせっせと色々な草を摘んでいく。


こんな光景が兎人族の集落では日常で、変わりのない一日である。大人達もにこにこ見守るだけだ。

何しろ兎人族は多産であるから子供も出来る仕事を皆する。



弟妹達が集めた草は兄姉が編んだ袋に、土を払ってから詰められていく。

一つはベット用の大きな袋。

もう一つは枕用の小さな袋だ。


草をぎゅうぎゅうにつめて閉じてから、兄姉の中からドワーフホトの女の子が二つの袋に手をかざす。

すると袋から水が出て空中に水の玉が出来た。

わぁ! と弟妹達が歓声を上げる。

袋から水が出なくなると、袋にかざしていた手を庭へ向ければ、水玉もならって庭の方へ飛んでいき、パシャンと花壇の上で弾けた。

水気の抜けた袋は、草の良い香りをそのままに一層フカフカの手触りになる。


「お姉さまの魔法すごい! 」

「私にもおしえてー! 」

と、出来たばかりの寝具を抱きしめる弟妹たち。

「はいはいあとでね、ほらやっとできた、このベットを寝室に並べるのよー! 」

数人がかりでベッドを茅葺屋根の屋敷の中、最奥の寝床に運んでしまう。


寝床は竹で編まれた丸い籠の様な形で、如何にも巣、といった骨組みだ。


その寝床に子供達は、せっせと干し草を敷いてベッドを乗せていく、最後に枕も置いて。

「完成だ~! 」

わーいと子供達は楽しそうに跳ね回る。


「私は末の妹に会いに行くわ」

しっかり者で甘えん坊なサテンアンゴラのお姉様の言葉に、私も! ぼくも! と弟妹達の声が上がる。

子供たちは寝室を飛び跳ねながら出て行った。




茅葺屋根の屋敷は木造ながら立派な造りである。


兎人族は一般的に寒さに強く、暑さに弱い。

夏は通気性を良くし、壁を抜いて布を張る。

冬は火を起こすからしっかりしたと梁が組まれていて、天井まで空気が抜ける。

温度を逃がさないように、床は土を掘り固め、湿気取りにダイアトマイトの層、炭の層、最後にすのこの層を重ね、干し草を敷いた上に伝統の織物が敷かれている。

干し草と織物は頻繁に変えられ、同じく壁はダイアトマイトや漆喰で塗られており、木の柱と柱の間には、取り外せる木の壁がはめ込まれカラフルな絵が描かれている。


この絵は代々の子供達が描いた絵で、毎年10人以上は産まれるので、描く場所が無くなり、絵の具の上に絵の具が重なったり、飛び跳ねて高い所に描いたために、絵の具のしぶきを伴っている絵があったりと兎に角騒がしいが、不思議とほっこりさせられる壁として評判であり、また、現国王が産まれた時に描いた絵は花飾りの額縁で飾られている。上から塗り重ねられて何を描いた絵なのかはさっぱりなのだが。


つやつやした毛並みが美しいサテンアンゴラのお姉様を筆頭に、広い廊下を兄弟達が跳ねて走る。中にははしゃぎすぎて四つ足で飛び跳ねる兄弟もいる。

廊下は脚を傷めないように厚手の絨毯が敷かれ、両側に飾られる両親たちの記念写真や絵画の脇を兄姉は駆け抜けた。


兄妹たちは重厚な木造のドアを幾つか通り、日当たりの良い通路を進んで、最奥の部屋に入る。


そこは豪華な寝室であった。


大きな窓から春の暖かな日差しが差し込んでいる。

ベッドは上等な木材を編んで作られた大きな物で、天蓋にカーテンも付いている。

廊下の絨毯より一等ふかふかなカーペットは綿入りで、素足で歩いても気持ちが良い一級品。

白い漆喰で塗られた部屋は広く、ベッドの向かいには洗面台に化粧台。

反対側には文机に機織り機(機織りは兎人の花形仕事だ。)にソファ。奥に続く扉があって、その横に従者の女性が二人。


「あら、よくきたわね」

部屋の主はふくよかなマフを持つ、シルバーブラウンの毛並みのホワイトオターの美しい女性だ。

頭にティアラをつけてシックな色の伝統衣装のドレスを着ている。

兎人族の第一王妃である。


部屋にやってきた子供達を一人一人ぎゅうとハグしていく。

「おかあさま、草一杯とってきたわ」

「がんばったよ」

「ふふふ、ありがとね、末の子供達が乳離れしたから、やっと皆と眠れるわ」


王妃のベットの横に屋根の付いたベビーベットがある。


ふわふわの草と王妃の毛に包まれた小さな寝床だ。

そのくぼみの中央には、末の子供達の最後の乳離れっ子、ぱちくりお目目に黒い和毛のダッチ柄の子うさぎがいた。

まだ立ちきれないお耳はプロペラのようで、首にも胴にもくびれがなく、ふわふわの短い手足がとても可愛らしい。


「おねーしゃま! おにーしゃま! 」

ぴょん、ぴょん、と、たどたどしくベビーベットの柵に近寄り2本脚で立つダッチ子うさぎの名前はまだ無い。



兎人族は多産ではあるが死にやすい。

生後は骨も弱く、体も、視力も弱い。

王妃が産んだ子の総数は本当は6人だ、でも一緒のベッドに寝かされたのは4人。

他族より弱く、怪我に、病に、魔物に負け、それはもうぽろぽろ死んでいく。

故に多産なのだ。


ダッチ柄の末っ子は今のところ兎人族68位王女に当たるが何年かしたら継承位も大きく変わるだろう。


「末っ子ちゃん、今日からわたし達と一緒に寝れるわよー」

「一杯遊べるね! 」

迎える兄姉達の中でも名前があるのは一歳以上の子だけだ。

だからみんなあだ名で呼び合う。今後別の妃に子供が生まれれば末っ子ちゃんではなく別のあだ名が付くだろう。


兄姉の一人がワンピースのポケットからタンポポを取り出した。

「これ、末っ子にあげるね! 」

「たんぽぽだ! ありがとうおねーしゃま! 」

傍のメイド服を着た兎人族の従者にたんぽぽを渡す。

「今日の夕飯に付けられるよう料理長に相談しますね」

にこりとほほえんで従者は部屋を出て行った。


子供達はタンポポにたいそう喜んでいた。

他の兄姉達も涎をたらしそうな顔でそれを見ていた。

兎人族の多くはたんぽぽが好物だ、でも食べすぎると来年生えてこなくなる事も知っている。

とにかく今夜はたんぽぽが食べられる。

なら良しなのだ。



兎人族は楽天家であり快楽主義でもある。

それは死にやすく、弱く、短命である兎人族の、人生を楽しむ知恵でもあった。


ダッチ柄の末っ子の頭には意味はわからないけれど『ケセラセラ』という単語が浮かんで、間もなく眠気にかき消された。

(そうだ。約束…、おでかけ、しょっぴんぐ、えーが、かふぇ、…あのこはどこ? ふぁあ、とってもねむたい…)


今は春。温かく、葉っぱが柔らかくて美味しい最高の季節なのだから眠たいのだって仕方ないのだった。


____________________________________________________

公爵令嬢0歳



人間種が暮らす大きな町のお屋敷にも、一人の人間の赤子がいた。


赤子の名はフィオナ・アヌ。0歳。

公爵家の娘で4人兄弟の末の妹だ。

見た目はシルバーブロンドの髪に明るい青緑色の瞳。

長いまつ毛と大きな目。

誰が見ても美しいと感嘆するような赤子である。


フィオナは産まれてすぐに魔法を発動させてみせた。

ベットの上でふよふよと浮かんで落ちそうになったり、大泣きすれば繰り出される炎弾や氷結魔法。

興味をもてば、大きなクマのぬいぐるみだろうが大の大人だろうがぐっと引き寄せられた。



当然、フィオナの周りの大人達はたいそう驚いた。


「自分のお家を壊してはいけません」

と穏やかながらも空中のフィオナをしっかりつかむ護衛。

フィオナは何が面白かったのかきゃっきゃと笑っている。


すぐに有能な魔法師を呼んで魔法封じの腕輪を付けさせた。

が、「やぁ」とフィオナがむずがるとすぐに腕輪はヒビが入って壊れてしまった。


それならと魔法師数人がかりで結界をつくりフィオナの周りを囲んでみたが、赤子の進みたい方向を遮る邪魔な結界は破壊されてしまう。

「規格外、規格外だ…」

その日魔法師達は天才だと信じていた自分の鼻っ面をぽきりと折られてしまった。


ならば弱体化させようと、魔道具が造られる。

出来たのは魔力を吸って空気中に拡散させる髪飾りだ。

腕輪やネックレスは邪魔に感じると壊してしまうので、軽くて邪魔にならない髪飾り、ヘアピンくらいが都合が良かった。


赤子の体に負担の無いように初めこそ様子を見ながら付けていたが結局足りずに、髪意外の服飾品にも刺せるだけヘアピンを刺した。

その総数は10本になった。


フィオナの使う衣類やおもちゃにも徹底的に魔法耐性の呪文をかけたし、もちろん、世話をする護衛や従者にも。


光輝く魔石の付いたヘアピンは彼女のトレードマークとなった。

元は灰色の魔石なのだが、随時効果を発動しているせいで赤紫色に光り輝いている。

夜寝るときは涎掛けの内側にヘアピンを付けて眩しくないように配慮された。


そうして魔力を奪われたフィオナは普段気だるげな様子を見せ、ときおり魔力切れを起こして倒れるようになった。

その時は急いで魔法のかけられたヘアピンを取り払い魔術師や従者が慎重に様子をみた。


また、突然ヘアピンが壊れて家具や人を吹っ飛ばした事もあった。

いつ何時魔力の暴走を起こすかわからないと、魔術師のルーサー・レジスはフィオナの専属付きとして公爵家当主に雇われた。


魔術師ルーサーは青い髪を一つに束ね、丸縁黒メガネをかけた不遜な態度を感じさせる40代男性である。

それからルーサーは屋敷にあてがわれた研究室に籠りつつ、1日3回決まった時間にフィオナの様子を見に行く生活になった。


「お嬢様の調子はどうですか? 」

朝食を食べ終えたフィオナの所へ魔術師ルーサーがやってきた。

「変わりないです、食事もいつもの量食べられました」

侍女が答える。

「髪飾りも上手く作動しているようですね」

魔術師はフィオナの頭を撫でながらヘアピンの様子を確認する。


魔力を暴走させてしまう子は珍しくないものの、フィオナほどの力の持ち主は類を見なかった。

ルーサーは王都でも指折りの才を持つ魔術師だったが、フィオナの魔力量はそれより多い。

これからも魔力制御の研究を続けフィオナの髪飾りを何度も改良する事になるだろう。


(フィオナの人格が育ち、自分で力を制御できるようになれば状況は変わるかもしれないが、それまでは油断ならない日々が続くだろう。自由にしていたいだろう子供の時間には、酷な事だ)

ルーサーはフィオナに同情した。


フィオナは公爵家の娘だ。

この世界では特権階級と呼ばれ、誘拐などされないように常に護衛や専属侍女が付き添うべき存在である。

フィオナの母君である公爵家当主が懐妊した時も、フィオナが産まれた時も明るいニュースとして国民に報道された。


が、フィオナの魔力の暴走をきっかけに、両親は警戒して会いにこなくなった。

乳母は恐怖のあまり逃げ出し、侍女もすでに何人か変わっている。


「あの魔力量、魔術師であれば素晴らしいものなのだが…」

魔術師ルーサーは人知れずぼやいたのだった。


ともかく幼児の体を生かす為に動物の乳を与えたりと工夫していたが、必然的に離乳食が早くに与えられた。

幸いフィオナ本人はそういうものだといった態度で与えられた食事を素直に口にしてくれた。




侍女がフィオナの部屋の窓を開ける、気持ちのいい風が流れた。


窓枠から数匹の妖精が入ってくる。

髪飾りを付け魔力を放出するようになってから、フィオナを訪ねて妖精が遊びに来るようになったのだ。


10センチ程の羽が生えた子供の姿をした妖精がフィオナの顔の前を飛んでいる。

フィオナはその1人をわしっとつかんで口にいれてしゃぶる。

《やめろぉー! 》

とじたばた手足と羽をばたつかせて抵抗しフィオナの口から避難する。

これがいつもの光景だ。


「だぁだぁ」

フィオナは不満そうに手で幼児用テーブルをバンバンした。

《酷い目にあった》

妖精はテーブルの上の潰したサツマイモを一欠片持って窓辺に座り、食べ始めた。

この世界で妖精は縁起の良いものとされているので、特別悪さをするわけでもなければ追い払わない。


フィオナは時々、不思議そうに左右を見回し、誰かを探す様な仕草をする。

食べていたサツマイモを置いて、何も握っていない手を不思議そうに眺めるのだ。

まるで誰かの手を握っていた、それが当たり前のように、フィオナは手を握ったり開いたりして。

諦めたようにまたサツマイモを食べ始めた。

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