21 不思議な地下室と告白イベント
宝石を売りに出して数日後。
足のリハビリもかねて私は学園へと来ていた、場所は図書室。
時間は既に昼過ぎだ、もっと早く来るつもりが寝坊した。
可愛らしい司書のフェル君に会いに……じゃなくて、調べ物。
あの、日本語で書かれた書物があるなら知りたい。
何か、凄い事が書かれていて一攫千金が出来るかもしれないし、情報はいくらあってもいいと思うから。
こっそり作ってこっそり売れば安泰よ。
図書室へと入り、呼び鈴を鳴らす。
何度鳴らしても誰も来ない。
だったらと、真っ直ぐに地下室へと向かった。
階段を降りようとした所で地下室から出てくる子と目が会った。
フェル君だ。相変わらず手には本を持っている。
「あ、こないだのおねーさん!」
「居ないと思ったら地下に居たのね」
「はいっ!」
「で、地下室へいきたいんだけど……」
「はい! ダメです!」
元気一杯に拒否するフェル君。
なんだろう、会話が噛み合ってないような?
もう一度聞くことにする。
「「…………」」
「どうしました、おねーさん?」
「地下室に行かせて」
「ダメです!」
「地下の本を」
「ダメなんひゃんれす! …………いたいふぇすおねーしゃん」
思わずフェル君の頬を両手で引っ張っていた。
「っと、なんで?」
「おねーさん、怒ってます? 怪我人が出たので一般生徒の立ち入りはだめって校長先生が」
う……一般生徒の怪我ってどうみても私よね。
校長か、国王だし。
「フェル君!」
「はい」
「無理に通ったら?」
「ボクの首が飛ぶだけです!」
事の重大差がわかってないのか笑顔で答えてくれる。
首が飛ぶってのは仕事を失うのか、物理的に飛ぶのか怖い所だ。
周りを見ると特に他の生徒は見当たらない。
力押しで行けば通れそうなのがまた困る。
「しょうがない、諦めるわよ」
「帰るんですか? 良かったです、おねーさんが無理やり通ろうとしたら、けいほうを鳴らさないとダメだったのです」
「警報って……あるの?」
「はい、何かあったら鳴らせと命令受けてます!」
「そ、そう。また来るかもだからその時にはよろしく」
「はーい」
危ない所だった。
破滅ENDを回避するはずなのに自ら破滅ENDする所だったよ。
さてと……となると、今のままでは私は地下室へと入れない、入れないなら入る許可を取らなければならない。
◇◇◇
「で、何で君は毎回毎回、ボクの所へ来るんだ」
「はい、これお土産」
私はカフェで買ったティラミスをディーオへと渡した。
「ケーキか?」
「そ、男性でも食べれそうなのって聞いたらコレくれたわ」
「悪いが賄賂は受け取れん」
イラ☆
「賄賂ではないですし」
私が机の上に置いたケーキを持ち帰ろうとしたら、ディーオはさっとケーキを手前に移動させた。
「「…………」」
もう一度、ケーキを取ろうとすると、それもディーオは阻止する。
「賄賂ではないなら貰っておこう」
「…………もしかして甘い物好きだったりする?」
「…………嫌いではないな。で、話はなんだ?」
好きなのか、素直じゃないなコイツ。
「あ、そうそう。図書室の地下室へと入りたいんだけど、何かない?」
ディーオは深い溜め息をつく、これ見よがしに。
手が出そうに成るけど我慢だ。我慢っ!
「無理やり入らないだけ褒めてやろう。
そもそも立ち入り禁止になった理由は知っているのか?」
「ええっと、私の怪我よね」
「ご名答。司書は怒られはしなかったが、今後は注意しろと言われたはずだ。
錬金術の勉強は感心するが現在では入る事は出来ない」
「だから、ディーオの所に手土産持って来てるんでしょうがっ」
「なんでそんなに入りたいんだ?」
「え? いいレシピがあれば一攫千金できるじゃない」
「おいおい……まだ金を集めるのか」
「保険としてほしいのよ」
お金はいくらあってもいいし、賠償金を払ったら減るじゃない。
最終的にはパパにも頼らずに楽して稼ぎたい。
「まぁいいか、最近は君の噂も落ち着いてきた。これから入るには許可書が居るだろうな、そもそも昔は許可書が無いとは入れなかった」
「じゃぁ下さい、もしくは買うわよ」
「…………許可書には『金で買える事は無く』功績がいるだろう。ボクから言えるのはここまでだ」
金の部分をいやに強調して私に説明する。
買えないのか……。
これでも忙しいんでなと、ケーキを持って部屋から出て行こうとする。
「まったまった!」
「まだ、何かあるのか……」
「その許可書って他人のでも入れる?」
「過去に許可書を貰った生徒は三人と聞いた事がある、同伴者一名までなら確か入れたきはするな」
「ディーオは?」
「先生ぐらいつけろ、僕は持っていない……その使えないわねーという顔を向けるな」
「え。いやいやムケテナイワヨー」
自然に私もその後ろをついて行く事になった。
廊下に出た時に突然男性の声が聞こえた。
「エルン!」
名を呼ばれたから振り返ると、腰に剣を着けたイケメンが私をみていた。
まぁ、リュートなんだけど。
「何?」
「何って事は……その今更かもしれないが話しておきたい事が」
「こっちは特に無いわよ?」
「俺はある」
普段にこやかで何でも命令を聞いてくれたリュートの笑顔とはちょっと違うわね。
廊下を見ると、こっちの事を振り向きもせずに場所を離れるディーオの背中が見えた。
正直少しは関心もてと蹴り倒したくなる。
「ふう、ここで言える事?」
「いや、場所を変えないか?」
「わかったわよ」
周りの生徒がちらちらと見てるし、しょうがないわよね。
◇◇◇
リュートについて行く事、暫く歩く。
建物の二階から三階にいき最後に屋上へと着いた。
鍵はかかっておらず、日本での高校の屋上を思い出す。
あの頃は合鍵作ってよく授業サボってたなぁ……。
「ルンッ。エルンッ」
「ああ、ごめんなんだっけ?」
「よかった、また話を聞いてないのかと思った」
「聞いてるわよ?」
「とにかく、俺は一方的に婚約解消はされたけど……良ければまた君と付き合いたい」
「はい?」
何言ってるんだリュートは……。
私を毒殺しようとしたし、いやそれは未来か。
でも、変な物を食べさせてきたのは間違いない男よ。原作でもナナに屋上で告白するイベントがあって……あれ? ここ屋上よね。