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01 悪役錬金術師令嬢へと転生しました。

 現在の時刻は午前二時。



 私はと言うと下は真っ黒な海で上は星空、そう崖から落ちている最中だ。



 何の事かといわれたら、私にもわからない。

 可愛い弟のために合格祈願を願えば良く効くという崖で、必死に祈った。

 もっとご利益があるように前にある柵を越えたら落ちただけ。

 そうそう、なんで深夜かというと飲み会の帰りだったからである。



 いやいやいやいやいや、ちょっと待ってよっ!

 一気に酔いが醒める。


 これじゃ、勝手に自殺しに来た人でしょうがっ。

 しかも季節は一月、海に落ちただけでショック死の可能性大。

 こんな事なら、お姉ちゃん家でゲームしとくんだったよ……。


 お姉ちゃん、ぬいぐるみ集め以外でも、こう見えてもゲームが好きでね、育成ゲームとか、経営ゲームとか、そうそう、十…………いいえ。うん年前、学生時代に初めて買ったのは錬金術のゲームでね。


 痛っ!


 背中が痛い、水面に強打した。寒い、冷たいっ、水が口にっ。


 私およげっ泳げばっおよげ……。



 ◇◇◇



 私の体が突然浮き上がる。

 目の前に金髪を濡らした青い瞳の青年が私の顔を覗きこんでいる。


「大丈夫?」


 日本語ではない気がするけど、私には伝わる。


「助けに来るのか遅くなってすまないとは思っている。エルン許して欲しい」


 エルン。

 そう、それが私の名前だ。

 信条は楽して暮らす、私は絶対一番だったわよね?

 季節は二月ではなくて、四月に入ったばかりで春の風が心地よい。

 今日は学園で嫌な事があった日、婚約者のリュートに命令して海へと遊びに来た。


「リュート……?」


 リュートは静かに頷く。

 金色の濡れた髪を手で無造作に整えると、相変わらずのイケメン顔を私へと向けてくる。 そして、このイケメン顔で、心の中では私を殺そうと思っている事。


 理由は簡単で、私の我侭な性格についてこれなくなったから、それと別な娘を虐めているのを我慢が出来なくなったからだ。

 実際に二年ぐらい後に殺される。

 その黒い心を取り除くのが、私の大嫌いな錬金術見習いのナナで、個別ENDでは罪を犯したリュートを十年先ぐらいに妻として支える。


 なんで知ってるかと言えばゲーム、錬金術師のナナというゲームをクリアしたから。


 まって、頭が混乱してる。


 あれ、私って弟の合格祈願で崖から落ちたのよね。

 でも、水面に映る姿は、腰まである黒髪で眉間に皺を寄せた細目。

 元の姿はこんなに美人ではない。

 いや訂正しよう、美人だった。


「エルン?」

「え? ああ……助けてくれてありがとうございます」

「えっ」


 イケメンの表情が少し動いた。

 何を驚いて……、ああそうね。

 普段礼なんて言わなかったもんね。

 この記憶って前世……?。

 いいえ、お姉ちゃん知ってるよ異世界転生ってやつよね。

 でもって、エルンとして過ごした十六年間も忘れては居ない。

 さっきから頭が痛いし、濡れた服も気持ち悪い。


「とりあえず浜辺へもどりましょう」

「すまない。そうだな」


 気づいたら足はつくし、何でこんな浅瀬で溺れたのかも良くわからない。

 体が重く、頭が痛い。

 一歩前に進んだところで私の意識は無くなった。


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