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6:盗み聞きは役にたつ?

誤字脱字報告ありがたすぎます!

皆様ありがとうございます!


勿論無くすべきなのはわかってます!!


 「ふぁ~、よく寝たぁ」

 異世界クリシェに来てから初めての朝だ。清々しい気持ちになってくる。


 「いい朝だな……」

 「ハイミネ様。既にお昼時です」

 「あ、おはよ。ミラノさん」

 目覚めるとあきれた視線を寄越すミラノさんが待機していた。これは、昨日の内にタイミングを見て部屋に来るようにお願いしていたからであり、彼女がプライベートを犯しているわけではない。


 それよりも、目覚めたら美少女の冷たい視線を浴びるとは新鮮だ。


 「あり、もうそんな時間」

 「皆様は寝付きが悪いようで起きてますよ」

 「まぁ、異世界初日だしそりゃ、寝れないでしょ」

 俺も初めての異世界は突然の森での遭難ということもあり、寝ること等叶わなかった。寝てたら死んでたというのもあるけどな!



 「その割にはハイミネ様はよくお眠りになってましたよ。意外と神経が太いんですね」

 「はは、無能のくせにってか?」

 俺だって慣れるまではそれなりに苦労してたさ。それに、今回は帰ってきたのは朝方だ、寧ろ睡眠時間が足りないと文句を言いたい位だ。


 「皆は何やってる感じかわかる?」

 「皆様は早速訓練を頑張っているようですよ。ハイミネ様はよろしいのですか」

 「いーの、いーの。俺は俺でやんなきゃいけない事もあるし」

 「やらなければいけない事ですか?」

 「そ、お勉強」


 この世界について俺はあまりに知らなすぎる。

 日常的な事から魔王とは何なのかモンスターとは何なのか、誰が何を支配しているのか、俺は何一つ分かっていない。


 無知は罪だ。知ろうとすれば防げたものを怠惰によって無に帰すなど罪でしかない。だから、一刻でも早く情報がほしい。

 将来的にはリアルタイムで情報収集できるシステムを構築したい。


 「勉強はよろしいのですが、訓練は……」  

 ここまで食い下がらないってことは上から俺も訓練を受けるように指示されてるのかな。確かに俺が訓練しないとあいつだけずるいと不満を抱く奴が現れるとの判断って所か。


 「わかったよ。訓練に顔をだすよ。でも、はじめは勉強させてくれ。訓練後だと疲れてるかもしれないし」

 「はい! 承知しました」

 嬉々として退出していくミラノさん。あれは余程お小言を言われていたな。

 それにしても訓練か……面倒な事にならないといいんだけどな。


 

 



 俺達の逃亡を防ぐ意味もあってか三階にあてがわれてた部屋から訓練所がある一階まで降りてくる。


 道中には使用人や、役職を持っているであろう貴族等が遠巻きに此方を見ながら通りすぎていく。


 辟易としながらも訓練場に着く。


 地面が整備された広い空間だ。

 そこではクラスメイト達が各々の武器で素振りしている。


 今は基礎を学んでいる最中なのか?


 「意外だなぁ」

 「何がですか?」

 「てっきり、魔法の練習しているのかと思ってたんで」

 正直魔法の練習を目的に来たのもあるため拍子抜けだ。

 

「魔法の練習は間もなく行うと思いますよ」

 ミラノさんの言う通り見学していると直ぐに素振りの時間は終わったらしくクラスメイト達は武器をさげる。

 

 クラスメイトの前にローブをきた魔法使いぜんとした女が説明をはじめる。


 「勇者様がたはそれぞれ魔法適正が高いことがわかっています。中にはスキルで魔法を得ているものもいるでしょう。魔力を練り現象を口にしてみてくださいませ。例えばこのように『炎の玉よ……全てを燃やせ』」

 女性が口にすると火の玉が掌の先に浮かんで現れる。

 初めて目の当たりにした超常の力にクラスメイト達から感嘆の息が漏れている。


 「魔力がない世界との事でしたので、先ずは魔力を感じるところからはじめましょうか。イメージは体に流れる血液です。血液が全身を流れるように魔力もまた全身を巡っているのです」


 魔法使いの女性はイメージを伝えながら魔力を全身に纏って実演してみせる。

 簡単そうに行っているが魔力を認識し、全身に巡らせるのに俺は何年もかかった。


 「なるほど……魔力とはこれか」


 俺が何年もかかって取得した事を初見で成して見せたのは我等が赤城だった。


 「ふむ、こんな感じか」

 「うーんと、このぽかぽかしたやつかな?」

 「雅に負けた……」

 赤城だけでなく、龍王子先輩や青山に東雲さんまで初見で魔力を感知しやがった。チート極まりだな。


 流石に一度で会得するのはチート集団のクラスメイトでも難しかったらしくクラスメイト全員が魔力を感知するまで数時間かかった。そうとはいえ、これは驚異的な早さである。


 「これが勇者……ですか」

 魔法使いの女性も驚いていたほとだ。


 「では、次は早速魔法を使ってみましょう。魔力を感知している勇者様がたなら自ずと魔法を扱える筈です」


 

 「――――おりゃぁ!!」


 魔法使いの女性が話しているのを裂くようにして雄叫びが響くと轟音が訓練場を包む。


 「はははは、こりゃ、すげぇなぁ!!」

 砂煙が晴れると張り裂けそうなほど笑っている金城が現れる。 


 整備されていた地面が爆発したように抉れている。

 確か、金城のスキルは爆裂拳というものだった。

 実際に目の当たりにすると中々強力なスキルだったようだ。


 「金城! かってな行動は慎め! 周りに被害が及んでいたらどうするつもりだ!」

 金城に怯えることなく赤城は叱責する。

 


 「ちっ、へいへい。わーったよ。気を付けるって」

 赤城相手では金城も大人しく身を引く。

 ただ、一度得た力を行使する快感でその顔は酷く醜かった。


 

 「勇者様方皆さんの凄いですね。一日でここまで魔法を操るなんて流石勇者……」

 隣でずっと訓練を見学していたミラノさんが感心している。

 それだけ勇者の力は規格外だった。

 魔力すら関知できなかったクラスメイト達は関知から数時間の訓練で火の玉や水の弾丸等、様々な魔法を扱っている。


 魔法系のスキルがない者達も武器にオーラを纏わせたりと戦闘力を確保している。

 たった一日でこの進歩は驚異的だ。

 まるで一足飛びで成長していっているようである。

 


 まぁ、実際女神がそういう風に魂を弄ったからなのだが、実際に圧倒的な成長速度を見せられると嫉妬を越えて呆れてくる。


 救いはこの世界の魔法を大方理解出来たということくらいか。

 この世界の魔法は魔力を短文ながら詠唱を行うことで現象化するようだ。例えば炎の玉と口にすることでイメージを固めてそれが現象となる。イメージと言えば何でも出来るかというとそうではなく、一定の詳細のイメージがなければ魔力は魔法という形にならないようだった。それに干渉力のようなものもあるらしい。イメージと世界に対する干渉力の二点で魔法の威力が大きく変わるようだ。


 俺が知ってる魔法と違うのは、この世界の魔法は適正や、スキル等による補正が大きく僅かな魔力でも大きな効果を発揮する事があるということ。個人差はあるが補正で威力が上がるのは俺が扱う魔術よりも強力な所がある。


 俺の魔術の方が勝ってる所も多いが、この世界の魔法はお手軽に使える感があってその点は優秀だ。


 「勇者様は凄いですよね……」

 ミラノさんが、訓練場からの帰り道俺の方を見ながら溜め息を漏らす。

 「そんな、あからさまか皮肉言わないでよな」

 「ふぅ~」

 何だかミラノさんが辛辣な気がする。一日で随分と遠慮がなくなってきている。


 「よし、ミラノさんを驚かせてあげよう」

 「なんですか?」

 「『灯せ』」

 一言口にすると火の玉が掌の上に現れる。卓球ボールのように小さいが魔法である。


 「え、嘘……なんで」

 「ふふのふ。俺だってこれくらい可能なのだよ」

 クラスメイトの魔法の流れを何度も『視て』いれば自ずと俺も魔法を扱えるようになった。俺が適正あるのは火と風のようだった。


 「でも、ハイミネさん。今短縮で魔法を発動した気が……え、気のせい??」

 おお、見事に混乱してくれている。短縮というのは呪文の長さの事だろう。イメージさえ出来てしまえば僅かなワードで現象を発揮する事が出来るのは一度魔法を『視た』時からわかっていた。


 「ハイミネ様! 凄いじゃないですか! 明日からは訓練に参加しましょうよ!」

 「えー、面倒くさいなぁ」

 「ハイミネ様なら大丈夫ですから! 頑張りましょ!」

 軽い気持ちで驚かせてみようかと考えていたら思いの外面倒くさい結果になった。

 明日の気分次第となんとか丸め込めてミラノさんから逃げるように部屋に戻る。

 



 空は暗くなりモンスターが活発に活動する夜を迎える。


 ――――さて、今日もモンスター狩といくかな。


 「ステルス――――はい、どうぞ」

 隠密形体ステルスモードに入ろうとしていると部屋の扉が軽い音をたて、訪問者の存在を知らせる。


 入ってきたのはお風呂上がりであろう青山だった。

 熱で桜色に染まった肌が少し艶かしい。


 「こんな時間にごめん……」

 「いいよ。それより座れよ」

 「……うん」

 椅子などもないため青山はベッドに座る。


 「それで、どうしたんだ?」

 「うん。何かさ今日の食事の時皆が変だったからさ」

 「あー、あれな」

 夕食時、食堂に行った俺に向けられたのは昨日よりも冷たい視線だった。人数も増えている。

 どうやら、力を自覚した事で無能の俺に対して自分が上だと地球にいた頃よりも強く認識したのだろう。


 力を得てしまって増長してしまうのは若者の特権なので特段俺は気にしてなかったのだが、青山は気づいてしまったらしい。


 「何か、異世界に来てから皆変だよね。実はね今日魔法ってやつを試してみたんだけどね。皆嬉々として発動するんだ。一発でも当たれば人間が死んでもおかしくない威力なのに」


 「魔法なんてファンタジーの力を得れば、そりゃ皆テンションが上がっても仕方ないさ。俺だって魔法が使えればめちゃくちゃ喜んで使うぞ。はは、青山は意外と繊細なんだな」

 それはもう、命とりになってしまうほど繊細で甘い。

 その甘さ俺は嫌いではないけどな。


 「違うの。そこはまだいいの。私が怖いのは今日みたいに皆がどんどん怖くなってバラバラになってしまいそうなことなの」

 「大丈夫だよ。皆今は浮かれているだけだよ」

 内心は知らないが、同じクラスという繋がりは中々切れない。

 例え力を得ても地球に戻ってしまったときの事を考えれば大きな破綻を起こす事はないと思う。


 「ねぇ……私達帰れるのかな」

 「――――帰れるよ」

 そこだけは断言出来る。

 時間はかかるかもしれないが手順さえ踏めば俺は帰れる。

 

 「何せ俺達は物語の主役の勇者様だぜ? 帰れるに決まってるだろ」

 「ふふ、無能って結果だったくせに」

 「おいおい、それは言わない約束だろ――――ま、無能でもやれる事はあるんだよ。青山に何かあったら守るとかさ」 

 「ふふ――――じゃあ、その時は私を守ってね」

 「任せんしゃい!」

 気休めにはなったのか青山は小さく笑う。

 そして、そのままじっと俺の方を見てくる。


 「……ねぇ、りと」

 「ん? なにー?」

 「私……いや、何でもない。今日はもう寝るね」

 ベッドから立ち上がり扉の前まで青山はいく。


 「お休み」

 「ああ、お休み」

 青山は小さく手をひらひら振ってから部屋をでていく。


 遠ざかっていく足音にあんなに見つめて一体何を言いたかったんだ? ――――1度目の世界の俺ならこう考えていたんだろうな。  

 

 「……行くか」


 さてさて、今度こそ隠密形体ステルスモードを発動して悠々と王城を歩く。


 モンスターを狩り行く前に人間関係の把握に努めようと思ったからだ。

 人間というのは他の人の悪口や自慢の出来事を人に話したがる習性がある。意外とそういう事からも表からは見えない情報が得れたりする。


 結果は上々で、誰々が誰々に手をだしたや、どこのお店がオススメなのか、色々な噂話から信憑性の高そうな悪口、果ては大臣がかつらなのではないかという情報までゲットした。


 いやぁ、やっぱり人の口に戸はたてられないんだな。

 暇潰し、もとい情報収集も一区切り出来そうだったのでモンスター狩りに向かうことにする。


 『―――――――の……う』


 「ん? 今、無能って聞こえたな」


 気のせいかもしれないが、今の俺の五感は普段のものではない。声が聞こえてきた方へと向かう。



 「あれ、ミラノさんじゃん」

 薄暗い部屋は本が何冊も積まれた部屋で紙の臭いが漂うその部屋は蝋燭の明かりだけが幻想的に灯っていた。部屋にはミラノさんと一見しただけでかつらと分かる恰幅よい男……大臣が執務机を挟んでミラノさんと話し合っている。


 「して、ミラノよ。あの無能はどうであった」

 「はっ、頭の回転は速そうであり、魔法の適正もあるようでした。しかし、私の鑑定眼をもってしても彼は平凡でしかありませんでした」

 無表情のままミラノさんは俺について報告していく。


 「ふむ、聞いたことのない無能という結果。何かしら隠してるとも思ったが本当に無能なのか? ミラノ魔法の適正の属性とその強さを申してみろ」

 「はっ、本人によると風と火の魔法を発動できたようです。これに嘘は感じられませんでした。適正の規模としては短縮呪文をやってみせたのは驚異的でありましたが魔力量、魔法の干渉力共に平凡でした」


 「ふむ。勇者様がたの才能と比べると劣り過ぎているな……例外はあるということか。ミラノ、確か来週にダンジョンへ行くとの事よな」

 「はい。驚異的な成長速度を鑑みて実戦訓練を組み込むとの事です。これは、宮廷魔法師であるマリア様や、騎士団のアレックス様も容認しております」

 「よし、ミラノ――――そこで無能を始末するとしよう」

 これまで無表情だったミラノさんが反応する。


 「それは、やめた方がよろしいかと。明るみになれば勇者様の信頼を失いますし、最悪勇者様や周辺国に対して弱味になるかと」


 

「大丈夫だ。ダンジョンでは死ぬことなんてざらだ。それに、勇者様の話を聞いた王女様の報告によると勇者様がたは戦闘とは無縁の世界に浸かりすぎておるとの事だ。アレックスやマリアも才能は褒めてたが対人訓練の時強く萎縮していた者達がいるとのことだった。王女様は皆様優しいと喜んでおられたがそれでは困るのだよ。そこで無能の出番だ。同じ世界で生きてた者が亡くなれば自ずと危機感を抱くものが現れよう。そうすれば生きるために殺す意識を芽生えさせる切っ掛けになろうよ」


 おいおい、まじかよ。平和ぼけしてるからこそ強すぎる衝撃を与えたら立ち上がる所かそのまま潰れてしまうぞ。



 「それは、やぶ蛇に成ってしまわないでしょうか? 恐怖で潰れてしまうのではないでしょうか」

 うんうん。流石ミラノさん、わかっている。


 「そんなものは計算している。だが、勇者は魔王と対峙しなければならない――――何故なら過去帰還した勇者は魔王を討伐していたからだ。分かるかこの事実があるかぎり勇者は魔王と対峙する他ない。それならば多少臆病な者が現れようが、同郷の者が死ぬという大きな成長の起爆剤となる出来事を起こすのはこの先の為になるのさ」


 悔しいが大臣に一理ある。

 確かによく考えたら仲間の死とか物語のイベントでいえば成長イベントじゃないか!

 こんな簡単な事をかつ――――大臣から教わるとはおもわなんだ。


 とはいえ、勿論死ぬわけにはいかない。

 だが、かつらよ。敢えて貴様に乗るとしよう。

 俺はクラスメイト達から離れるとしよう。



 ――――そっちの方が王道な物語になりそうだしな。

王城内の様子が適当すぎますよね……詳しい方がいたらアドバイスよろしくですw

(感想も添えてくれてたら嬉しいです!)


 ブクマ、感想お待ちしております。

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