第二話 出会い・格好いいエルフ
ー六道優樹の家ー
目が覚めた後、準備した荷物を持ち制服を着用し、早めに家を出て馬車停留所えと向かった。
「うーん。いい朝だ」
朝日を眺めながら歩き俺は考える。
今日俺がやるべきことは、真面目で優等生な生徒になることだ。
俺の目的は過去を思い出すこと。
そして、この学院に入ってやるべきことは剣抜祭に出ることだ。
剣抜祭、それは自身の心を剣として具現化する大型儀式。それを祭という催しにしたものだ。
その剣抜祭にでるには、一定の成績がなければ参加出来ない。
しかも、学校内で闘って勝ち取らなければいけないし、剣抜祭はトーナメント戦の闘いでもあるのでさらに目的は難しいと言える。
「それでも、心を具現化する祭り……出ない訳にはいかないよな」
心を具現化、つまり俺の心をそのまま写す鏡のようなものだ。
俺の過去が分かるかもしれない。
だから俺は優等生にならなければならない。
「お、馬車停留所が見えてきた」
馬車停留所にはそこそこの数ならんでいた。
一回で乗れる人数には限りがある。なのでならんでいる数からして三回目ぐらいで自分の番になりそうだ。
早めにきてよかった。
一番後列にならび、馬車を待つ。
するとならんでいる人の声が、俺の耳に入る。これは盗み聞きに入るのだろうか?
「そういばさぁ、あの噂聞いた?」
「ん?」
前にいる二人の声の主(女子生徒)は、俺と同じ制服を来ていた。ヤタノガミ学院の生徒だ。
「特別試験合格者六人もいるらしいよ? 凄くない?」
「あぁー、でも所詮噂でしょ? うちの特別試験って無理難題いっぱい押し付けてる名ばかりの試験じゃない」
「まぁねー。ぶっちゃけ私も信じてない」
「私もー」
へぇー
そんな噂が……
にしても凄いなぁ。
特別試験六人も合格してる人がいるなんて……まぁ噂らしいけど。
あ、ちなみに特別試験は、学費が大幅免除される試験だ。
だがそのじつ、実践経験のある先生方と闘ったり。ドワーフの土の異能で造った大型ゴーレムと闘ったり。全体からの同時攻撃を相殺しろなど……そんな頭のおかしい試験だ。
普通の中高生なら即終了の試験なのだ。
「あ、馬車きたよ!」
「ほんとだ。さっさと乗ろー」
俺の目前まで人が入り、俺は再び待ち時間へと入る。……暇になってしまった。
「……今さらだけど今の子達学院行くの早いなぁ。さすが女子、すげーわ」
早起きは、商売人として当然になったが……始めはきつかった。
自力で起きようと思うと、前日に意識しなければ起きれない。
でも、目覚ましは高いからなぁ
まぁそんな事思って生活してたら身に付いた訳なんだけど。
……女子はみんなこんな思いして早起きを身に付てるのかな?
ほんとすげーわ。
「……の」
でもあれだよな。
こうやってはや起きできるようになれてよかった。 今の早起きして登校出来てるのを考えると、本当に商人しててよかった。
師匠よ、ありがとう。
「あっの!」
「……ん?」
俺が意味のない考えを巡らせていると、後ろから女の子が声をかけてきた。
女子多くないか。
「さっきから声かけてたんだけど?」
「あ、す、すいません」
目の前にいたのは、さっきのヤタノガミの制服と同じ制服を着たエルフの女の子がいた。
肩に掛けるタイプの鞄を掛けている。
髪はエルフにしては珍しい黒と青が混ざった美しい髪の色で、目はキリッとしていて全体的に美しいと言える女の子だった。
……どこかで見た気が
「あんた同じ学院生よね?」
「ええ、そうですよ」
「なら、一緒に登校しなさい」
「え?」
なにを言っているんだこの子は……
男女が一緒に登校?
それはカップルに勘違いされる流れじゃないか? いいのかそれ?
「あ、カップルに見間違われるって気を使ってるなら構わないわ。私周り気にしないから」
「え、なにそれカッコイイ」
なにこの子、イケメンか? イケメンなの?
いや、イケてるレディでイケレディか?
イケレディなのか?
「て、なんで俺がそう考えてるって分かったんですか?」
「見たらわかるわ。王の素質ってやつ?」
「お、おぉ」
い、痛い人でもあるのかな。
王の素質って……痛いな。
「で? 一緒に登校してくれるの?」
あ、そういう話でしたね。
うーん。まぁ初日から友達が出来るのは良いことだ。学校での立場にも関わってくる。
いわゆるカーストなんちゃらというやつだな。
「まぁ、大丈夫です」
「……あと、その敬語やめなさい」
「あ……わ、わかりまし」
「ん?」
「わ、わかった」
「うん。オッケー」
この女の子ぐいぐいくるな。
エルフってもっと清楚なイメージだったんたけどな。
……俺はこれくらいの方が好きだけど。
「……あ、来たわよ。馬車」
「じゃ、じゃあ行くか」
「えぇ」
俺達は、馬車へと乗り込みヤタノガミ学院へと向かった。
馬車から見る景色は結構好きだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーヤタノガミ学院ー
馬車が着いた。
馬車から出ると同じ制服を着た生徒がたくさんいた。これ全部ヤタノガミの生徒なのか……
木々が並ぶ通学路を生徒達が歩いて行く。
これだけの人数がこの学院へ通うというのは、やはりこの世界においての剣は重要な位置にあるのだろう。
改めてそう感じる。
「なに驚いてるの? さっさと行くわよ」
「お、おぉ」
相変わらず余裕があるなぁ
どこから出るのその余裕。
そう思いながら、もう一度ヤタノガミ学院に目を向ける。
ヤタノガミ学院の特徴は、広い敷地を有し、多くの施設がある学院だ。
例えば闘技場。
闘技場は体育祭や文化祭、試験や決闘の際に使われる施設である。
それの更に大きな施設で大闘技場や、好きな武器の試し切りを行う連剣室などなど、様々な施設がある。
どこも綺麗に掃除され、白を基調にした美しい石材が使われて、さすが世界最先端を行くマリアス王国の学院と言った所だ。
王城の小さい番みたいだなぁ。
俺がしみじみとそう感じていると、俺に一つの疑問を隣にいるエルフが投げ掛けてきた。
「……あなたはなんでこの学院に?」
「ん?」
「この学院に来た理由よ」
右手をヒラヒラしながら呆れたようにもう一度聞くエルフ。
聞き直してごめんね。
「……俺は知りたいことがあって来た」
「ふーん。なに知りたいの?」
え、そこまで聞くのか?
結構ずかずかいきますね。
「自分……かな」
お、カッコイイな。
キリッ、どうよ? キリッ
「うわぁ」
うん。そうだよな。
引くよな。普通。
キモいよ。俺。
でも、王の素質とか言ってた人に言われたくないぞ。
「ま、まぁ自分について知りに来たんだ。エルフさんはなにをしに?」
「……私はミサキよ。エルフじゃないわ」
「あ、ごめん」
そうなんだ。ミサキって名前なのか
あれ? 今の文法だとエルフという種族じゃなくてミサキっていう種族だ。という意味にもとれるよな。
どうなんだろうか……
「馬鹿なこと考えてないで、さっさと学院に行くわよ」
さっきの種族がどうのこうのの心の中の話だよね?
なんでわかったんだ……本当にエスパーなの?
エルフ……ミサキさんは、先に前に出て並木道を進んで行く。
その背中を見ながら二つ思ったことがある。
一つはミサキというエルフから縁遠い武国(東洋人)よりの名前の事。
そしてもう一つは
「あれ……来た理由は?」
結局教えてくれないんだ。
来た理由……