第七十八話 神様、このお礼は必ずしますから……
17階層の魔物を見た瞬間、防御壁を展開したが一歩も動けないでいた。
『これは……あ奴が一番嫌いなものだよな』
『あの時のケンモたんは異常だったよね……』
『ねぇねぇ~ これあるじが嫌いなやつ?』
『これは食ってもうまくないからのう』
『アレを使われも困るからな。早々に片付けるか……』
『アレって、なあに?』
『すごく恐ろしいケンモたんの攻撃魔法だよ』
『そんなにも恐ろしいのか』
『うん。おいらもポチも死にかけたんだよ……』
『お主たちがか…… そりゃ恐ろしいのう』
『アレだけは使わせていかんぞ』
『そうだよね~』
やっと我に還ったオレはある作戦を思いついた。
「オレに考えがあるから任せろ」
『お主に任せられるか!危険だ。我はまだ死にたくないぞ!!』
『おいらもポチに賛成だよ~』
「今回は安全策を取るから大丈夫……」
『本当だろうな』
『ケンモたんの作戦を聞いてみようよ』
『それが良いのう。話を聞こうか』
題して「お煙大作戦」空間収納から煙式殺虫剤を5個取り出して説明をした。
『本当にこれで大丈夫なのか』
「たぶんな。あと、匂いだが、無臭を選んだがお前たちには気になるかも」
『多少の事は我慢するから良いよ~』
「では、これに賭けてみるぞ」
『ダメな時はその時また考えるとすれば良い』
梱包を取り、カップに水を入れセットする。煙が出てくる前にポチに避難用の防御空間を張ってもらい、微量の風魔法で煙を17階層全域に広がるようにした。あとは待つこと2時間。
「よし、おやつタイムにするか」
『やった~ おやつおやつ。あるじ~ おやつ食べる~』
『ゆっくり待つのもオツなもんじゃな』
『早くだせ』
『ポチはせっかちだねぇ~』
『黙れ!タマ』
出したのはカスタード入りアップルパイ。ダンジョン産フルーツの中にあったリンゴを使って焼いてみた。実はオレの好物だ。
「でも、ケンモさんがゴ○ちゃんを苦手とは知りませんでした」
「リョウ君は平気なの?」
「俺は平気だよ」
「ユウゴ君も?」
「密かに研究で使っています」
「えっ、部屋で逃がさないでよ」
「気を付けますが、約束は出来ません」
「勘弁してくれぇ~~」
みんなに大笑いされたよ…… トホホホ……
それもこれもみんなジジィのせいだ。それに仕返しって言ってたよな……
冗談にも程があるってことを教えねばならんな……
フフフ…… 覚えてろよ。このお礼は必ずさせてもらうからな。
2時間後、思惑通り黒い物体は消え、ドロップ品がいたるところに転がっていた。それをユウゴ君が薬に使えると一生懸命に拾い集めていたよ。おれは使いたくないけど……
『こんなにも簡単な方法、なぜ前にも使かわん!』
『そうだよねぇ~ おいらたち死ぬ思いしたんだよ~』
「ゴメンゴメン。あの時はパニックになって必死だったから……」
ポチタマに怒られてしまった……。
『おい、セーフエリアに行くぞ。やること有るんだろ』
そうだ。魔方陣を刻まないと……。
セーフエリアに魔方陣を刻んで、ボス部屋へ。
『いよいよおいらの出番だよ~』
ボス部屋に入るとやはりブラックゴキゴキ。タマは火炎砲で一気に焼き尽くした。ってか、そんな大技を隠してたんだ…… これは怒らせないようにしないと……
「出来た。今夜はカレーを作ったぞ~。カツとかエビフライとか好きなのを乗せて食べても美味いからな」
『おい、カツ3枚乗せてくれ』
『おいらはカツとエビフライがいいな~』
『あるじ~ あるじ~ ジャルラもカツとエビフライ』
『ワシはカツ2枚でたのむぞ』
はいはい。それぞれの前に出してやる。
「ユウゴ君もリョウ君もどうぞ」
「わぁ~ カレーだぁ~~」
「すげぇ~ 泣きそうです~」
「美味い! こっちに来てカレーが食えるとは思ってなかったよ……」
「俺も…… あっ、涙が出てきた……」
(ケンモよ…… そのカレーわしにもくれるじゃろ)
……
(ケンモ……)
……
(おい。返事くらいせんか)
さっきからケンモケンモって、爺さん誰?
(なにを言うとる……この星の神のイーカンではないか)
……知らんな
(まさか、まだ怒っておるのか?)
……
(……悪かった。すまん。意地悪が過ぎた。許せ)
「みんな~もっとたくさん食べていいからなぁ~」
(ほれ、このとおり。頭を下げて謝るから、カレーを食わせてくれ……)
『主殿よ。そろそろ許してやったらよかろう。時期を外すと仲直りも出来んぞ』
「フン。とかチャンが言うから許してやるけど、二度とゴ○など出すなよ!」
(わかったから、はよ食わせてくれ~)
『我が主様もこ奴の料理には勝てんか……』
(面目ない……)