第七十四話 神様、日替わり弁当が大変です
またまた商業ギルドの仕入れ担当者が来ました。
屋台で日替わり弁当を売ることになって3日。ここに来て数が足りないから増やせと言ってきた。
先日の話し合いの結果、一日500食で纏まったのに、倍の1000個にと言うのだ。
「無理です!」
「そこを何とか…… お願いしますよ」
「そもそも500個限定。それ以上は他のお店が売れなくなると言ったのは
ドレースさんですよ。こちらも売れ残ると嫌だから同意したんです」
「それば重々承知しています」
「じゃ~なんで言った本人が来ないの?」
「都合が悪くなると部下まかせと言うか……」
「はぁ~ あの人は……」
「ポタンさんからも店主殿にお願いしてくださいよ」
「……ギルド職員としては後押ししたいけれど、店のスタッフとしたら言いにくいです」
「ポタンさんまで……」
「一度、開店から閉店まで手伝ってみてください。私の気持ちも分かりますよ」
「それは……外から見ていてもお忙しいそうなので理解はしますが……。何とかお願いします」
平行線で話が進まないから、一度ようすを見に市場に来ていた。
事前に聞いたところ、10件の屋台で50個ずつ売っているらしい。
「えぇ~ 日替わり弁当は完売しました~~」
「こちらも弁当は完売しました~~」
「日替わり弁当は残り1個です。ただいま完売です~~」
販売開始は11時。この時間に合わせてギルドに納品しているのだ。そして今は11時15分。
あちこちで完売の声が聞こえてきた。
「くそ~ 昨日も買えなかったんだぞ」
「俺もだよ……」
「誰だよ。店売りを禁止させたのは!」
「商業ギルドの指導が入ったんじゃ~ しょうがねぇだろ」
「今はギルド経由で売ってるらしいぜ」
「ギルドも儲かるってことか」
「みたいだな」
あぁ~市井の噂は怖い……
「なぁ~ 親父さんよ。弁当の数は増やせないのか」
「ギルドで平等に割り振られるからな……」
「もともとの数が少くねぇ~んじゃねえのか?」
「そうだよ。もっと増やすようにしてもらえば良いんだよ」
はぁ~ こりゃ見つかったら囲まれるな…… 見つからないようにしないと……
「おかえりなさい、どうでした市場は?」
「凄い事になってた……ってか、怖かった」
「何かあったんですか?」
「いや、直接は無いけど、数が少ないとか増やせとか……買えない人が怒ってた」
「どうするんですか?」
「お店優先にしたいからね。そうすると倍の数を作る時間が足りないかな?」
「たしかに、今の人数だと500が限界というか、すでに無理をしてますからね」
「ポタンさんからドレースさんに話してもらえませんかね」
「…………」
「やはり無理ですか」
「いえ、言っても聞かないというか、持論を押し付けられます」
「そうなるよね……。困った」
「店長……弁当専門の料理人を雇ったらどうですか」
「……人件費を考えると1000食は赤字になるから」
結論が出ない内にさらに5日が過ぎた頃、三度やって来た仕入れ担当者。
「先日の件ですが、やはり今まで通りでお願いします」
「はぁ~。またどうして……」
「じつは、周辺の飲食店が持ち帰り弁当の販売を始めたんです」
「そうなんですね……」
「ですから、この先、数を減らしてもらう事が有るかも知れません」
「それなら、今すぐ0にしましょう!」
「ダメです~~~~~~」
(ほほほっ……相変わらず振り回せておるのう)
ジジィは気楽でいいな……
(ほほっ……他人事じゃからな)
ほぉ~ 他人事ね~~
(むむっ。また善からぬ事を考えておるな)
そんなことないけど~~
(いや。その顔は何か企んでおる顔じゃ)
信用無いなぁ~~ 僕は悲しいよ……
(僕?? ますます怪しい…… 何考えておるのか言うてみい。)
いやね、ジジィの食う分も0にしようかと……
「ダメなのじゃ~~~~」