第六十五話 神様、ドレースさんが怒りました
ただいま商業ギルドのギルマス。ドレースさんが来ています
「ケンモさん、今日は重大なお話があって参りました」
「はい。どんなことでしょうか?」
「実はですね、こちらのお店で売られているお弁当と、宿泊代に付いてです」
「はぁ~」
「こちらのお店は中心地から離れていて開店してもまだ短い期間という事で、今まで当方で抑えてきましたが、そろそろ改善のお願いと言うか、指導と言うか……。ダンジョン内は管轄が冒険者ギルドなので私が踏み込んだ事は言えませんから、今日は地上の店舗という事でお聞き頂きたい」
「わかりました」
「実は、食べ物を扱っている飲食店組合と宿屋が集まった旅館組合があって、その両方からこの店に価格の是正を早急に指導して欲しいと申し出が出ています。また、組合への加入も促すようにと要請されていて、今日はこの件についてのお話がしたくて伺ったと言う訳です」
「やっぱり安すぎましたか」
「そのようですね……」
「わかりました。値上げします」
「はっ、そんな簡単に決めて良いわけ?」
「大丈夫です。ってか、助かります」
「助かるとはどういうことなの?」
「えぇ~っと、開店前に市場調査もせず値段を決めたのは良いけど、設定を安くし過ぎたんです。だけど値上げするタイミングが分からなくて……。でも、商業ギルドから是正勧告が有ったとなればそれを理由に出来るでしょ。こちらとしては願ってもない話です」
「おまっ…… じゃ~値上げすることは良いのですね」
「はい。いつも利益が出ないってポタンさんにも言われてたんです……」
「はぁ~? ポタン・カートン。あなた帳簿の管理をしているはずよね。私にも見せみなさい」
そう言えば、オレ帳簿なんてぜんぜん判んないからポタンさんに任せてあったんだ…… それすらすっかり忘れてたよ…… 地球でも帳簿は女将が付けてたしなぁ~
帳簿を見だしたグレースさんの顔がだんだん歪んで来たような……
「これを見る限り価格の是正と言うより、根本的な経営指導が必要のようね」
「そんなに悪いですか?」
「悪いというレベルでは有りません。宿で出している利益を全部小売りの方で食い潰しています」
「はは……そうなんですよね」
「笑い事じゃありません!」
「すいません……」
「帳簿はこのまま預かって、明後日までに何らかの対策を考えてきます。それまで地上店は休みにしなさい」
「わかりましたけど、ダンジョンは営業しても良いんですよね」
「ダンジョンは管轄外と初めに言いました」
「そうでした……」
「ポタン・カートン。あなたは私と一緒にギルドに戻りなさい。詳しい話を聞きます」
「はい」
こうしてドレースさんはポタンさんを連れてギルドに帰って行った。
「店長……ダンジョンも値上げしましょう」
「それが良いですね。これからは多少の利益も出す方が良いですよ」
「値上げ賛成! お客が少なくれば楽になるし~」
「ケンモさん僕の薬を売りましょう。たくさん作ります」
「僕も……武器作ります」
「二人ともありがとう。でも、おいおい頼んで行くからその時はよろしくね」
「「はい」」
『おい。話は終わったのか』
おわったよ
『では飯にしろ。美味いものだぞ』
『おいらもペコペコだよ~』
『あるじ~ ジャルラご飯たべたいな』
『早く頼むぞ。主殿よ』
お客が帰るや否やポチとかタマジャ腹ペコ軍団はすぐに美味しいご飯を強請ってきた……
(だから十二話で言うたじゃろ。桁が少ないと)
だから、開店前に教えてくれてたら問題無かったんだよ
(わしのせいか?)
ちがうの?
(誰じゃったかのう~ 事前に市場調査もせんかったのは……)
オレだけど、なにか??
(お主、反省しとらんな……)