第五十七話 神様、プリン狂想曲勃発です
今日はいつもより忙しくなる予定だ。リーザさん……怒らないでよ。あくまで予定だからさ。
満を持して、冷蔵庫導入記念のプリンが本日初お目見えだ。おまけにカップケーキが有るから、デザート系2種の販売だ。これは売れるね。きっと売れる。いや、必ず売れる……売れる…はず。
「今日は日替わりの他にこれも売ります」
「わぁ~ プリンとマフィンだぁ~ ケンモさん。僕に一つ下さい。こっちに来てから食べてないんですよ~ 良いでしょ。1個食べさせて。ねっ、お願いです。プリン食べたい~~」
ユウゴ君がうるさいです。
「プリンと言うのですか? 初めて見ますね」
「やだぁ~なにこれ……甘くて蕩けるよ」
「店長……もう1個ください」
「ちょっと、リーザさんもセリナさんもなに勝手に食べてるの……」
「良いじゃない。味も知らないで売っちゃダメって言われてるし~」
「店長……もう1個……」
「味見は1個だけです」
「ケンモさん。ぜひ、商業ギルドにレシピを売ってください」
「僕、買います。5個買います。1000ギルでいいですか!」
「いや、そんなに要らないし……って、買い占めはダメだよ」
「「「「「えぇ~~~~~~」」」」」
なに、みんなでハモってんの??
「では、地上はプリンとカップケーキ共に1個30ギル。ダンジョンでは20ギルで売ります。追加は有りませんので、一人各1個でお願いします」
「「「「「はい」」」」」
「あと、自分の分で取り置きしないように!」
「……無理」
セリナさん……
「そうよね~」
リーザさんも……
「取り置きで無ければ良いんですね。いま食べます!」
試食終わったし……
『あるじさま~ あるじさま~ ジャルラも欲しい』
『ジャルちゃん。ごめんね~~ はい。どうぞ』
お皿にだしてあげた。
『甘くて、冷たくて……美味しいの~』
「あぁ~ジャルちゃん。カワイイ~ もう1個食べる?」
『食べる~~~~』
「店長…えこひいき」
「ジャルちゃんだけズルい~」
『おい、我も食ってないぞ』
『おいらも食べたいよ~』
『美味い物は何でも食べたいのだぞ。主殿よ』
結局、開店前にプリンが18個も無くなった。カップケーキ……減ってないや……
そのころ地上店の開店待ちの人々に異変が起こっていた……
どうやら、ユウゴ君とリーザさんのテンションMAXの声が外に漏れていたのだ。
「おい、今日はプリンとかいう冷たくて美味しいのが出るらしいぞ」
「甘いとか聞こえてなかったか」
「きこえた。きこえた。」
「冷たくて甘いって、どんなんだよ」
「こりゃ買わないとな」
「絶対買うぞ」
「俺、列の先頭近くで良かったかも……」
「その話は本当か?」
「前に並んでるやつが言ってたぞ」
「店内から聞こえて来たってよ」
「そりゃ、期待できそうだな」
「おい、今日はプリンとかいうのが出るらしいぞ」
こうして列の最後尾だけでなく、瞬く間に街中に広がった。
11時開店
「プリンくれ」
「プリンプリン」
「俺にもプリン」
プリンプリンプリンプリン………… 店内にプリンの大合唱が響き渡った。
「ケンモさん、地上だけで売り切れそうです」
「えっ? なんで知られてんの?」
「分かりませんが、プリンしか売れてません」
「なにそれ?」
開店15分。プリンが完売した。
「うめぇ~」
「今日はラッキーだぜ」
「ちくしょう……羨ましいぜ」
「だれか一口食わしてくれ~」
「今からでも作ってくれよ~~」
「やだぁ~この香り。口の中で甘く蕩けていくわ~」
「あぁ~~~~食いてぇ~~~」
店の内外でそんな声が飛び交っていたよ……
プリン。恐るべし!!
結局ダンジョン店には回らなかった。
(ケンモよ…… わしもプリンとかいうもの食ってみたいぞ)
完売して残ってないもん
(ナント!)
みんなが食べてるときに出て来ないからだよ
(出て行っても良かったのか?)
いや、ダメだけど
(…………)
カップケーキなら有るよ
(……プリンが食べたかったのじゃ)
カップケーキも美味しいのに……