第四十二話 神様、旅の薬師が売り込みに来ました
10階層の売店は期待以上にドロップ品の買取りが多い。
同じドロップ品が多量に出るダンジョンでは、収納容量の関係で持帰り分を調整していて、買取サービスが出来たことで、収入が上がると冒険者に好評だ。まさにプラムさんが言ったとおりだ。さすが、元冒険者だね。
一つ一つ素材鑑定と価格鑑定をして値段を提示、冒険者と合意が出来れば買取ることにしている。
時折、吊上げ交渉もされるけど、鑑定で示された価格でしか取引はしないことを徹底している。
だって、資金にゆとりが有るわけじゃないからね……
買い取った素材は、オレには謎素材ばかりだが、鑑定では薬系と表示される素材が多い。
もちろん錬金素材と鍛冶素材もあるけどね。
「こんにちは~」
地上店にお客が来たようだ。
「いらっしゃいませ」
ポタンさんが対応してくれている。
「店主さんにお願いが有って来たのですが、お取次ぎ願えませんか」
「はい。私がこの店の店主。オオサキケンモです」
「貴方が。実は店主さんにお願いがありまして、お話を聞いてもらえませんか」
店先では落ち着いて話せないだろうと思ったが、通す部屋が無いから厨房に案内した。
こんどちゃんとした応接室を作ろう……
「私は、旅の薬師をしています、トカチユウゴと言います」
「トカチユウゴさん……?って、えっ……? まさか……」
「はい。たぶん同じだと思います」
「ご出身はどちらですか?」
「芭蕉の結びの地と言えば……分かりますか?」
「おぉ~~~~~同県ですか! オレは隣。鵜飼の町です」
「ほんとですか~~~驚きです」
「でも、まさか同じ境遇の人が居るとは思いませんでした」
「私も、旅の途中で店主さんの名前を聞いた時、まさかと思いましたよ」
「それで訪ねて来てくれたんですか?」
「それも有りますが……」
(おぉ~やっと来たか。ユウゴとやら)
「な…なに?? 変な声が聞こえた」
(変な声とは失礼な奴じゃな)
「そうだよ。変な声じゃなくて、変なジジィだよ」
(……お主もたいがいじゃな)
「店主さんにも聞こえるんですか?」
「あっ、オレの事はケンモでいいよ」
(こ奴はわしがここに導いたのじゃ)
導いたじゃないよ……
「あの…ですね、夢でこの変な声が聞こえて来て、ここに行くようにと……」
(わしが告げたんじゃ~)
なに? その得意げ……
「ケンモさんは分かるんですか? この声が……」
「えぇ~っと……この星の神様です」
「神…さま??」
(そうじゃ。わしはこの星を司る神・イーカンじゃ)
教えてなかったのかよ……
「ジジィの…イーカン様のご教示はなんと言われたのですか」
「はい、ここでケンモさんのお手伝いをしろと言われました」
(ほら。お主言っておったろ。薬師が欲しいと……)
言ってないけど……って、ジジィ!オレの思考を読んだな!!
(しまった~~~)
「えっ~と……ユウゴさんでしたね。ジジィがご迷惑を掛けたようで……」
「は…はぁ~」
「話は次回に持ち越しになりました。すいません」
「は…はぁ~」
「すべてはジジィの責任です」
(なぜわしのせいなのじゃ!)
一番平和だから