第二十一話 神様、アンテナショップが炎上中です
試食のご飯が美味しいと聞いた冒険者たちが、俺にも食わせろ、私にもと一気に押しかけて来た。
と言っても10人位だけどね。余裕~~。
「おぉ~このモチモチした触感は…」
「口に広がるこの香り~」
そうだろそうだろと、小さくガッツポーズを作ってほくそ笑んでいるところに
「俺も一つ」「私にも頂戴」と買って行ってくれた。
地上店が完売しそうなところで、追加を作ってください。とポタンさんが言ってきた。
「まだ大丈夫じゃないですか?」って渋ってたら、「私はお願いしましたからね」と、念を押された。
その時、昼食を取る冒険者が増えていたこと、おにぎりと唐揚げが話題になっていた事に、
オレは全く気づかなかった。
そもそも、この階は初心者向けで、冒険者もそれなりの人数が居ることすら、失念していたのだ。まさに墓穴。
「すいません。おにぎりセット5個ください。あと、水の補給もしてくれると聞いたのですが…」
「こちらにもおにぎりセット3個ください」
「私にも」
「おれにも!」
えっ… えっ…えっ… なに? この人だかり。
ちょっと待ってください… 残りがもう無いので…
「えぇ~」
「冗談だろ」
「今からでも作れないの??」
「噂を聞いて急いで来たんだぞ」
「そうだそうだ!」
「唐揚げってやつ?食ってみてぇ~」
これは暴動か?という騒ぎに、ちらっとポタンさんをみると「進言しました」と言わんばかりに視線を外された。
あぁ~素直に聞いておけば…と後悔先に立たず。馬車馬のごとくおにぎり作りに追われた…
もう作っては売れ、作っては売れで、どれだけ作ったのか分からないほど…
ぜったい地上店でも売ってるなと思いつつ、せっせと作った。
「まだですか?」「早くしてください!」「お客様が待ってますよ!!」と
矢のような催促を受け、トイレも我慢したよ。
ホント、オレ頑張った。褒められても良いくらい頑張った。
だから褒めて!
だれか誉めて~~~~~!!
14時を回った頃、やっと一息がつけた。ポタンさんから500個も売れたと聞かされ、ダンジョンだけでも150個は売れたのだとか…。
そりゃ、グッタリモードにも入るよ…
そんな俺に、ポタンさんから追い打ちを食らった。
「ちゃんと人の言う事は聞いてください」
はい…。 教訓にします。
(ほほほっ…。忙しいようじゃのう。良い事じゃ~)
ジジィ…生きてたのか…
(神は死なんのじゃ~)
このところ静かで油断してたわ…
(3話も我慢したんじゃ、そろそろ出とかんと忘れられるからのう~)
いや…忘れていたいんだけど…
(読者にじゃよ)
…………