第十二話 神様、足元に何かいるんですが
開店の翌日も戦場のようだった。
初日の反省も踏まえ、日替わりサンドを300個に増やしたが、ものの30分で完売。
おまけに、今日も整理券を出せと、店の外でも騒がしい。
(ほれ、客に譲歩するからこのようになるんじゃ~。見ていて面白いがのぅ~)
イーカン様…って、もうジジィで良いか。
忙しい特に話かけてくんなよジジィ。手伝え。
(ほっほっほ…… 神様は姿を現せられんのじゃ~) 暇人が!
こんなやり取りをしながらも、なんとか2日目を終了。この日も宿は満室となった。
3日目。日替わりサンドはもちろん、宿にも行列ができた。
どうやら貴族の気分に浸れる宿が500ギルで泊まれると口コミで広がったらしい。
お蔭で特別期間中、予約で満室となり【期間中満室】と張り紙を出したほどだ。
4日目には800個。5日目には1000個と、さすがにこれ以上は増やせないと
ひたすら断り続け、魔の開店特別期間を終了した。
「ご苦労じゃったんのぅ~」
「ジジィなに出てきんだよ」
「お主に良い事を教えようと思ってのぅ~」
「なに?良いことって……」
「ココでの物価じゃがのぅ…… 1桁少ないぞぃ」
「はい……?」
「10ギルなんて、子供の小使いにもならんわ」
「そんな大事な事、開店前に言え!」
「面白かったからのぅ~」
「……このジジィは……」
「お主こそこの半年何しとったんじゃ?市場調査もせんかったのか?」
うっ。言われてみればこの半年、冒険者ランクを上げるために街から離れ、野宿ばかりしてたからな……
そういえば、初日の客が言ってたな…… 50ギルでも安いと。
そりゃ客も来るわけだ。まぁ~宣伝効果は有ったな。
今日は休みにして商業区を歩いている。いわゆる市場調査というやつだ。
イーカン様が言った通りだった。屋台の食べ物でも150ギル~300ギル。
お店だと500ギル~1000ギルだ。宿も一泊で一人4500ギルから。
しかも風呂もトイレも共同だ。風呂付になると最低でも8000ギルからだ。
そりゃ10ギルならみんな来るよな~と、思い知ることになった。
まてよ。この物価でオレの家の家賃?安すぎないか?
まさか、幽霊が出るとかの不良物件とか?
(幽霊などおらぬわ。ワシからのサポート価格じゃ) おっ、ジジィにしては良いとこあるジャン。
ここまで来たついでに市場により、明日の日替わり用の食材を選んでいた時だった。
何やら足元をうろちょろする犬が居た。
野良犬か?お腹が空いてるのか??
でもご飯あげると付いて来そうだし……と考えていると、何やら声がした。
『お主がイーカン様の手下か』
ふぅん……空耳?
『お主がイーカン様の手下かと聞いておる』
だれ?どこ??
『足元を見よ』
足元? 犬しかいないけど…
まさかね……