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雨戸

作者: ゆき



二つの隙間から、差し込む光は何処か、遠いものだと感じていて、

重たかった鉄の戸を今は、容易く開けることが出来るようになっていた。

気付けばガラスに滴る水滴もなくなり、カーテンを濡らさずに済む、暖かくなってきた証拠だ。

ふと、私がその戸をあけると、爆発した閃光の様な、一瞬の眩い光に目を開けることが出来ず、数秒の間目を瞑る。普段から、太陽の光に浴びていればこんな風に感じないのだろうか。

薄眼を開け、もう一枚の戸を掴み横に流す。

共に歳をとった、枯れた木々には、新しい緑が私と同じように、顔出していた。

いつもとは、違う唄を唄っている鳥達は、何処かの誰かを大喜びで向かい入れてるみたいだ。

まるで子供がサンタクロースの訪問を、楽しみに待っているかのようだった。

そういえば、今朝の彼等の朝食を一体なんだろうか。

私は使い古した、トースターに昨日までだった、期限切れの食パンを二枚焼き、少量の油を熱したフライパンの上に卵と二本のソーセージを焼いた。

鳥が唄う声とセッションするかの様に、卵と肉が焼ける音が静寂でつまらない部屋を賑やかにしていた。

鳥達の前で卵を焼くことに、なんとも複雑な気持ちでいっぱいだが、そんなことは気にしてはいけない。

食べなければ、私が死んでしまう。

思えば、自分の身体の進化に、人はなかなか気付けないものだ。

私も、そこまで大きくなってはいないが、自分では気付かないまま、両親の背丈を超えていた。

幼い頃にみた、逞しく遠い存在だった兄とは、今ではもう同じ背丈だ。

幼少期に感じた感性が、そのまま今の自分に憑依してきたが如く、くだらない事を考えてしまった。

そうだな、あの重くるしかった、戸は今では簡単に開く。



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