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選択されたエクストラ三男  作者: Irha
序章
1/1

勇剣・リュードミオン

私は空虚な目で前を見つめた。


一見、神聖に見える長い剣身、適度な古風さの柄。


そして、剣であるのにもかかわらず感じられる強烈な存在感。


『勇剣・リュードミオン』


その剣を前にすると思わず唾を飲み込んだ。


 「ごくん…」


唾を飲み込む音さえも大きく聞こえる静かな場内、少なくはない人数が集まっているが、


誰一人、音を立てる者はいなかった。


こうなって当然、彼らが目にしているのは握った者が気に入らない相手なら、その者を生きたまま深淵へと連れ去る『勇剣』だからである。


これが、子供をビビらせるために作られた説話…だといいのだが。


残念ながら昨日も死刑囚を飲み込んだ前科がある『勇剣』、いや『妖剣』だ。


再びその現実を前にすると、緊張で手が汗で濡れ始めた。


しばらく剣を見つめたまま握ろうとしないと、あきれたのか、周りからせきたてる声が聞こえた。


 「おい、早くしろ」


その声とともに私は、アルネイン・シュバルツ。シュバルツ伯爵家の長男である兄がしかめっ面で見つめていた。


私は不自然な苦笑いで、両手を震えながら『勇剣』、いや『妖剣』を握った。


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