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勇剣・リュードミオン
私は空虚な目で前を見つめた。
一見、神聖に見える長い剣身、適度な古風さの柄。
そして、剣であるのにもかかわらず感じられる強烈な存在感。
『勇剣・リュードミオン』
その剣を前にすると思わず唾を飲み込んだ。
「ごくん…」
唾を飲み込む音さえも大きく聞こえる静かな場内、少なくはない人数が集まっているが、
誰一人、音を立てる者はいなかった。
こうなって当然、彼らが目にしているのは握った者が気に入らない相手なら、その者を生きたまま深淵へと連れ去る『勇剣』だからである。
これが、子供をビビらせるために作られた説話…だといいのだが。
残念ながら昨日も死刑囚を飲み込んだ前科がある『勇剣』、いや『妖剣』だ。
再びその現実を前にすると、緊張で手が汗で濡れ始めた。
しばらく剣を見つめたまま握ろうとしないと、あきれたのか、周りからせきたてる声が聞こえた。
「おい、早くしろ」
その声とともに私は、アルネイン・シュバルツ。シュバルツ伯爵家の長男である兄がしかめっ面で見つめていた。
私は不自然な苦笑いで、両手を震えながら『勇剣』、いや『妖剣』を握った。