おっぱい
★第8話目
「エ、エヘヘヘ~…」
カチャリと扉の開く音と共に、いづみチャンが湯上りのせいか、頬をピンク色に染めながら顔を覗かせた。
洗い立ての髪が蛍光灯の灯りを反射して、ピカピカと光っている。
「お風呂……出ちゃいました」
そして呟くようにそう言うと、スルリと部屋に滑り込み、後ろ手でドアを閉めた。
「そ、その……い、良いお湯だったよ♪」
「そ、そりゃ良かった」
ぬ、ぬぅ……可愛い。
凄く可愛い。
初めて見るお風呂上りのいづみチャンに、かなり興奮気味の俺。
これが噂のトキメキってヤツか?
トキがメキっちゃってるのかッ!?
良く分かんねぇーけど、ドキドキですぞ!!
目の前には、ピンク地に何やら小さなニャンコ顔がプリントされたパジャマに身を包んだ彼女の姿。
今、俺の座ってる場所からでも、何だかホンワリとした石鹸の匂いが漂ってくる。
「ヘ、へぇ~……ここが洸一のお部屋かぁ」
何処となく落ちつかない様子で視線をさ迷わせ、興味深気に当りを覗ういづみチャン。
「私、初めて男の子の部屋に入ったよぅ」
「あ……そそそ、そうなの?」
おおお、落ちつけ洸一。
ここまで来た以上、後はもう成り行きに任せるしかないぞ。
「お、俺も……女の子を部屋に入れたのは初めてじゃけん……」
「そ、そうなんだぁ」
ふにゃりんと微笑み、いづみチャンは
「う、うん。結構……綺麗にしてるよね」
緊張の色を顔に乗せたまま、そう呟いた。
「ハハ……そ、そうかなぁ?あまり掃除とかは得意じゃないんだが……」
言いながら俺は、彼女に聞こえぬよう喉をグビリと鳴らし、震える声で
「あああ、あの……ここ、ここに……すすすすすすす座ると良かですよ」
自分の座っているベッドの隣をボフボフと叩き招く。
「う、うん…」
コテンと頷き、どこか恐る恐ると言った感じで、ベッド脇に腰を下ろす彼女。
そしてゆっくりと、俺の肩に凭れ掛かるように頭を傾け、
「エ、エヘヘ~……な、何だか……緊張するね」
と、呟いた。
「そそそそそ、そうだね。緊張しまくりですね」
と俺は頷くものの、既に精神は緊張を通り越してゲシュタルト崩壊を起こし始めており、下半身の将軍に至っては、緊張ではなく怒張していた。
もう、やる気満々である。
「え、えと……その……こ、洸一君」
「なな、なんでせうか?」
「ああ、あのね。その……わ、私……その……は、初めてだから……」
「あ、いや……僕チャンも初めてだから……」
――マ、マズイッ!?
いや、いづみチャンの初めてになれるのは、至上この上ない喜びなのだが……
ハッキリ言って、自信が無い。
彼女が経験済みならば、ビギナーな僕チャンは手取り足取りお教え願おうかにゃあ~、等と考えていたのだが……
お互いに初心者同士だと、良く言えば「初々しい」が、悪く言えば「何か間違った事をしでかしそう」と言った所だ。
例えばいきなり穴を間違えるとか。
く……お、落ち着け洸一。
大丈夫……大丈夫だ。
人間だって動物なんだ。
本能的に、失敗せずに出来る筈だ。
……
でも野生動物にも、童貞って概念はあるのだろうか?
初めて交尾をする時、失敗したりはしないのだろうか?
「そ、そっか。洸一君も……初めてなんだ」
その言葉に、俺はコックンコックンとバネ仕掛けの人形のように首を振る。
「いいい、いづみチャン…」
覚悟を決めろ、俺。
震える指先に力を込めながら、そっと彼女の細い肩に腕を回す。
咄嗟の事にビクッと一度だけいづみチャンは体を震わせるが、その後はごく自然に、彼女は先程よりもっと俺に拠りかかってきた。
彼女の熱い体温が、パジャマ越しに手の平に伝わる。
甘い匂いがしていた。
シャンプーの香りと、ほんのりと漂うこれは……化粧水か何かだろうか?
「……いづみチャン」
もう一度名を呼ぶと、彼女は真赤になった顔を上げて俺を見つめ、そしてそっと瞼を閉じた。
固く閉ざされたピンク色の唇が、目の前に曝されている。
微かに震える彼女の体を支えるようにしながら、俺はそっと触れるだけのキスを彼女に施した。
「……」
あ、あかん。心臓が破裂しそうだ。
よく考えたらファーストキスである。
しかも、今日はそれ以上へ先に進むと言うのだ。
恋愛ステップ第三章『ファーストキス』から、いきなり最終章まで飛び越えちゃうのだ。
ある意味、顔の青い総統もビックリなワープのようなものだ。
果たして俺は、ちゃんと最後まで間違えずに出来るのだろうか?
それ以前に、将軍は果たして最後まで持つのだろうか?
・・・
な、なんか……既に初弾が発射されそうなんだがね。
★
※お詫び※
運営の方より、R18相当ですよぅ、と注意を受けたので、
この辺りの描写はカットさせていただきます。
誠に申し訳ない。
と言うか、何処までがセーフのなのか、いまいまち分からのだが……
内容が気になる方は、HP上にオリジナル・カット版として後日UPして置きますので、そちらを御覧下さい。