3、「夢の中の人」に感謝することにした俺は…
「夢の中の人」に感謝することにした俺は…
一年後、俺は朝6時に起床する。
昨日のことを念入りに神様に感謝をしてみる。そして、椅子に座り、カーテンを開ける。外の日差しから垂れ込んだ光はゆっくりとその机にある物を照らした。
それは何なのか、俺は知ってる。
それをどうするのか、俺は知ってる。
それはだいぶ前のこと。
「あの、なんでそんなにいい祈りができんだ?」
「わ、私のことですか?」
プロジェクトに再参加できた日、俺はまたここの店に寄る。
安い酒に美味しいおつまみ、それらは今の俺を十分満たしたが、満たしきれないものがある。
「これです」
店員1号は分厚い一冊の本を渡した。
「内容は難しいですけど、でも、徐々に読むと分かってきますね」
「ちなみにこれ、どこに祈りが乗ってるの?」
「えっと…ぜんぶ」
驚きの目でその本のページ数をめくる。
「あの、もし、よければ参考本とかありますけど?」
「ぉねぃします」
「すみません、聞こえなくて。もう一度仰っていただけますか?」
「お願いします!俺は多分、運命にであったんだ!こんな俺でも奇跡が起きたんだよ!」
と、そんなこんなで店員1号さんに色々な協力をいただき、その本を読み進める。分かったことは、その本はまさに俺のためにあるような言葉ばかり述べられている。
「いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい。」
そして、
「わたしの目には、あなたは高価で尊い。わたしはあなたを愛している。」
言葉の一つ一つが晴れの日に輝く観葉植物のように優しい色を放っている。
俺はそれを開いては閉じ、開いては閉じる。そして、7時になると、
朝食を済ませ、スーツ姿と鞄を持って家を出る。
言葉のメロディーで心を弾ませた俺は
その日、仕事の重圧で苦心を抱いて帰るも、その次の日はまた、あのメロディーと共に心が弾んで行く。
「おまえ、最近何か変わったな。彼女でもできたのか?」
怒鳴り声を立てていた上司が急に話題を変える。
「??」
「なんでもない。ささっと行って仕事をしてこい!」
「申し訳ございません。はいっ!行ってまいります。」
俺は仕事でミスをしてしまい、その代償を支払いに行く。
その後ろで、俺の背中を睨みつけながら上司は、
「全く、あいつは小さなミスはなかなか直らないなぁ。」
同僚の部長に言うと、
「先程変わったと仰ってませんでした?」
「うん?」
「つまりは、これから変われる可能性がある人材ということだ。会社に良い方に変われる人材は貴重だよ?」
「いや、そんな人材になるのは無理だろうよ、アイツは。そんなに簡単じゃないだろう。」
同僚の言葉を否定し、笑う上司。
けど、俺の将来などは彼らの言葉で決められるわけではない。
俺の将来などは彼らの一判断で終わるものではない。
前に向かって走る俺の背中から希望のラベルたちが大きな翼を描くように重なり、少しずつ少しずつ増えては伸びていった。
〜作品の考察〜by「俺」
上司に叱られたあと、さっきのミスを挽回すべく「俺」はふと疑問に思う。
ーなぜ作者はこの選択肢で「俺」にハッピーエンドをもたらしたのか。
「俺」の推測では作品の内容はこの作者の経験によるものだろう。
しかも「いつも喜んでいなさい」って、聖書の言葉じゃないか!要するに、作者はキリスト教徒なのか!
あと、このエンドはそもそもハッピーエンドと言い切れて良いのか?
希望があると言っても、それはいつまでも続くとは限らないし、俺の早起きが完全に解決したことにもなってない。
作者は一体どこをどう見てハッピーエンドだという見解を出したのだろうか?
そこは実に謎だ。
この謎を解き明かすには、やはり他の選択肢を選んでこの目で確かめたほうが良いかもしれない。今に待ってろ作者、この謎はすべて「俺」の目が黒いうちに解決してやるぞ!そして、この後「俺」は7時までに仕事をきちんと終わらせてから過去に戻り、絶望の旅をするのであった。