2、「祈ってくれた店員1号」に感謝をする俺は…
二ヶ月後、あの日の店の常連客になり、日頃の疲れをあの店員1号の祈りで癒してもらうのが俺の日課となった。
「いらっしゃいませ!あっ、今日はお疲れ様です〜。」
「いつものを二つ」
「はい、お待ちど様。で、この前の取引先とはうまくいきましたか?」
「ああ、俺のこと気に入ってくれて、次の取引の際もここの会社にするって言われたし、順調だよ。」
「うわぁー、おめでとうございます!」
生ビールを運びながら、嬉しそうな表情を浮かべる店員1号。
そして、俺は今日、勇気を出して胸の内を告げる。
「なあ、実は、悩みがあるんだ今。」
「よければ聞きますよ」
「あの日お前がいて本当に助かったよ。ありゅがとうな。」
緊張のあまり、言葉が噛んだことが恥ずかしくなり、ついそっぽを向く。
「お前は何かほしいものはないか?お礼といってはなんだけど、何をあげようかわからなくてそれで悩んで」
その時、店員1号の後ろからもう一人の店員がやってきて、小耳を挟む。
「分かりました。すぐ行きます。あっ、あの、すみません、ちょっと別支店に用事ができましたので失礼します。」
それからあの店員1号は帰ってくることはなく、残された俺は酒と食事を淡々と味わう。
次の日、俺は時計のアラーム設定を間違えて遅刻する。そして、あの日と同じように、上司に叱られ、参加していたプロジェクトをまた降され、さらには転勤命令まで言い渡される。
俺はコピー機の前で無数にででくる書類を一枚一枚整理整頓し、引き継ぎのファイルに閉じるとともに、深いため息が出る。
「今日も癒してもらうか。」
だが、その日もあの店員1号は会うことは叶わない。酒を飲む量が増えるだけだ。そして、次の日、また次の日も癒しは来ない。
そしてついに、俺はその怒りをぶちまける。
「くそっ!なんでだ!」
ソファーにネクタイを投げ飛ばし、ミニモダンテーブルを蹴り倒す。
頭を掻き毟りながら、俺は連続する不運な出来事、その理由に結論を出しながら、酒に溺れる。
「なんでこんなことになるのかな。結局、全部俺が悪いのか?」
荒れた部屋に慰めてくれる者はもういない。励ましてくれる者も。
「ああもうなんでもいいや。だから、許してくれよ。これからすることは」
椅子から立ち上がるなり、寝室に入る。
なんの変哲も無いクローゼットを開け、
置かれるはずのないソレに、哀しみの目に向かって
「俺のこと、頼むから祈ってくれよ!」
絶望のラベルが俺の悲痛な叫びとともに俺の胸を突き破るかのように重なっていった。
〜反省会〜
いきなりですが、刑事裁判を開きます!
「ちょっと待て!俺何した!?なんでクローゼットの中にあの人が!」
被告人とある会社員Aさんの罪状は「略取誘拐罪」、詳しくはサイトもしくは刑法224条で調べて下さいね。
「俺はやってません!」
えーと、被告人には有罪判決を下します。軽ーく100年の懲役もしくは全財産の没収。
「それはない!無茶苦茶だ!なんだって俺がこんな目に…泣」
というわけで今回の反省点はズバリ、人に頼りすぎ、です。
時に人に頼りのは良し。頼りすぎても良し。
ただし、頼る相手のことも尊重しよう!
まだまだ続くので、何度も絶望してね、絶望は希望の元なり。
「え!俺まじで刑務所行くの?やめてー、社会復帰できなくなるヨゥ…泣泣」