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バッドエンドライター

作者: 夢見 歌鳥

 バッドエンドライターは、人間が不幸な一生を終えるよう人生のシナリオを書くのが仕事。でも心優しい彼は仕事とはいえ人を不幸にするのが嫌でした。どうして自分は人間を不幸にしなければいけないのだろう。もっと幸せな人生が書きたい、人間に幸せになってほしいのにと毎日悶々と過ごしていました。

 ある日そんな彼の姿を見かねた魂の守り人から、バッドエンドの先を見に行こうと誘われたので、ついていくことにしました。


 守り人に連れられてやってきたのは、ライターのシナリオにより恋仲を引き裂かれ、悲恋のうちにどちらも死んでしまったカップルのいるところでした。二人はとても幸せそうに寄り添いあっていました。ここには仲を裂く両親もしがらみもありません。二人はずっと一緒にいられるのです。

 次に連れていかれたのは宝くじが当たって大金持ちになったけれど、その大金が原因で人間不信になり、しまいには強盗に押し入られ、一家全員が殺されてしまった男の人のいるところでした。彼は家族と一緒に笑顔で温かい食卓を囲んでいました。お金はないけれど、それ以上の物を彼は得たようです。

 最後に忌子として生まれ虐待を受けて育ち、誰からも愛されることなく嫌われ続け、幸せの意味など知る前に事故で死んでしまった少女のいるところに行きました。彼女は死んでからもひとりぼっちだったけれど、もう誰も彼女をいじめたりしません。何もないけれど、それが彼女にとっては幸せなことなのでした。


「どうだい、みんな幸せそうだろう」と守り人は得意げに言いました。

「そうだね。でもどうして?ボクは不幸な人生を歩ませたはずなのに」ライターは不思議で仕方ありませんでした。

「不幸を乗り越えたからさ。人間が悲しいことや苦しいことがない世界へたどり着くためには、まずそれを知り乗り越えなければならないのさ。君は人間を本当の意味で幸せにするために、不幸へ導いているんだよ」

 守り人に言われてライターはハッとしました。そうか、今までバッドエンドを書いていたのは、不幸を乗り越えた先に幸せが待っているからか。自分は人間をちゃんと幸せにできていたじゃないかと気が付きました。

「冥王陛下は心優しいお方、君のことを真剣に考えてこの仕事を与えてくださったのだよ」と守り人は言いました。

 ライターはうんうんと頷き、こうしちゃいられないと仕事場へ大急ぎで帰っていきました。


 それからライターは、自分の仕事に自信を持てるようになりました。今日もどこかで、彼は誰かを不幸にしていることでしょう。でもその顔は、前と変わってとてもうれしそうなのだといいます。

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