第二話
~序章~
第2話『東京迷宮 その2』
あたしを狙って、動物さんが飛びかかってくる
何故か、ゆっくりと時間が流れているような気がした
これはどういう事が起きているんだろうか
もう、死んでしまうんだから・・・どうでもいいかな~??
近づいてくる動物さんの餌になって
あたしの人生は終わるんだから
もっと色々な事してみたかったな~
それにしても、動物さん・・・さっきから動かないね??
「赤い髪の人・・・大丈夫ですか??」
目の前に水のような青い髪をなびかせて
颯爽と現れた、自分と同じくらいの女の子が話しかけてきた
「あ、はい・・・まだ、生きてます!!」
「そ、そうですよ・・・会話しているんだから~!?」
よく見ると、あたし以上に震えていた
そこまでして・・・助けに来てくれたのかな??
「あの、ワタシのスキルで一時的に空間を停止させていますので・・・今のうちに逃げましょう~」
「空間を停止?? 手品ですか・・・あ、そうか!! あたし助かるんだ~♪」
一瞬、わかんなかったんだけど
これって、あたしはまだ死ぬ人生じゃないんだってことよね??
「え~と、助けてくれたんですよね・・・あたしは三紅 唯です!!」
「あ、はい・・・とりあえず離脱しましょう~ワタシはアクア=ランスロッドです!!」
アクアちゃん・・・同じくらいの年齢かな??
彼女の手をしっかりと握り
全力で走って、この場所から離れた
「はぁはあ~アクアちゃん、ちょっと待ってよ~?? あたし、息切れしちゃった・・・」
「は、はい・・・はぁはぁはぁ、もう平気だと思います」
あれ、あたしよりも疲れてるみたい
ここまでしてくれるなんて
ラビリアさんよりも親切かも~
「さっきのは・・・この森のハンターです、弱そうな獲物を見つけると群れで襲って来るの!!」
「うん、それであたしを見かけて助けてくれたの??」
泣きそうなアクアちゃん
自分と同じ女の子だから、必死で助けようとしてくれたのかな
でも、本当に助かったよ~命の恩人っていうのか・・・??
あれ・・・いや、ないよね??
「アクアちゃんは、あたしを助けて・・・何か要求したりするの??」
ああ・・・聞いちゃった~
嫌われたらどうしよ・・・
もう、あたしのバカ!!
「そんな事・・・あ、します!!」
嘘!!
あたし、お金少ししか持ってないよ~
ちょっと・・・どうしよう
「ワタシと一緒に冒険して欲しいです!! あなたに要求する対価です・・・」
一緒に冒険・・・これって、やっぱりゲームの世界なのかな
何度も見ていたから
物語の流れだけは、ある程度覚えていた
「ダメですか・・・一人じゃ、心細くて・・・さっきまで泣いていました」
あたしと同じようにこの世界に迷い込んだみたい
一人で森を進んでいたところで、さっきの出来事になったんだって
偶然なら、運命って言ったりするのかな
これは、お友達になるしかない!!
「アクアちゃん・・・冒険するのはOKでいいよ、あたしを唯ちゃんって呼んでくれたら~♥」
「唯ちゃん・・・はい、唯ちゃんと冒険したいです・・・お願いします」
もう、助けたお礼とか関係ないじゃん!!
あたしも心細かったから
「は~い、アクアちゃんと魔王を退治~♪」
「魔王?? 何ですか一体・・・」
「え・・・それが目的じゃないの??」
「違いますよ・・・そもそも魔王って何ですか??」
聞かれれば、一体何なんだろう
何か怖そうな姿してた気がする
同じと考えるのは、変だよね
アクアちゃんとも初対面だし・・・
「変なこと言って、ごめんなさい~何か知っているゲームに近い感じだったの」
「ゲーム・・・ですか」
アクアちゃんも、ラビリアさんから機械をもらったのかな??
同じような機械を耳に付けて
眼鏡がそれに繋がっているから
「アクアちゃんもその機械もらったの??」
「機械とは・・・あ、デバイスのことですか??」
いちいち、調べているかのように
少し遅れての反応をしているアクアちゃん
「唯ちゃんの世界とワタシの世界の違いを調べていました・・・」
やっぱり、同じ機械だよね・・・情報を調べることができるんだ
でも、アクアちゃんも別の世界からってことだと
この世界は、どこなのよ~!!
「唯ちゃんの世界と同じ名称の違う世界・・・複雑な状態ですね、アナザースペースというところみたいです・・・ゲームの空間を模して構築されたようです」
「え・・・ゲームの空間!? アナザースペースって何??」
今度はあたしの機械でも調べてみよう
「アクアちゃん、あたしもこれで調べてみるね・・・」
「あ、はい・・・お願いします」
よ~し!!
デバイスだっけ・・・アナザースペースについて、情報を教えて~??
あれ・・・こんなので教えてくれるのかな・・・
ゲーム情報として、ヒントが出るのね・・・わ~い!!
少し嬉しくなっちゃった、うふふ~♪
東京が迷宮化してしまって
その謎を解くゲームらしい・・・
これって、あたしは少し有利なんじゃないのかな
東京で一応14年も過ごしてきたんだよ
変わった部分と変わってない部分もあるみたいだし
元の東京を知っているのは・・・
と、考えてみたいんだけど
この機械があれば、情報は出るから
「唯ちゃん?? 何かわかりましたか・・・」
「う~ん・・・あたしの知っている東京ではないことはわかりました~!!」
自慢げに話してしまった・・・!?
これって、当然のことだよね
何か、あたしがバカっぽいよ~
「そうなんですね・・・謎の解明には違いを知っている方がいいかもしれません」
食い気味でアクアちゃんがあたしの肩に手を置いて
真剣な目で見ている
近距離で見つめられると・・・恥ずかしいよ~♥
「アクアちゃん・・・近いよ~、ドキドキしちゃう~♥」
「あ・・・あ♥ ごめんなさい、はしたなかったですね」
あたしもだけど、アクアちゃんも恥ずかしがっている
可愛いというよりも、綺麗なアクアちゃんだったりするの
しかも、髪から飛び出る長い耳がすっごく素敵
「アクアちゃん・・・その耳は本物だよね~??」
「え、あ、はい・・・不思議ですか?? エルフはみんなこの耳ですよ」
エルフって何だろう・・・
森の精霊、1000年単位で生きる神のような存在
嘘・・・1000年って、長生き過ぎよ!!
「アクアちゃん・・・いや、アクア様・・・同じくらいだと思ってた、年上だと思わなくて」
急にあたしがぎこちなく対応してしまったから
怒り出してしまって・・・
「唯ちゃん!! ワタシは年上とか関係ないの・・・冒険する仲間だから、気にしないで下さい??」
「でも・・・」
何かアクアちゃんが凄く怖かった
年齢に関しては、これ以上変なこと言わないようにしよう
それに、見た目が同じくらいだから
同級生だと思えばいいよね・・・
「アクアちゃん、ごめんなさい・・・詳しくはわかんないけど、同級生だと思って仲良くしていきましょう~♪ あたしもその方が楽しいし」
「同級生・・・あ、はい、それで構いません・・・急に怒ったりして、すいませんでした」
これでアクアちゃんと楽しく冒険できるのかな??
難しいことを考えても、あたしにはわかんないから
「唯ちゃんともっと仲良くなりたいです・・・」
アクアちゃんもあたしと仲良くなりたいって・・・
これって、普通に話せばいいんじゃないのかな~??
年齢なんて、本当に関係ないかも!!
「ひゃ~!! アクアちゃん~!?」
わ~!? いきなり抱きつかれたよ~??
これはどういう事なのかな・・・
はわわ~びっくりしたっ!?
「仲のいい人同士は・・・このようにすると、あなたの世界では・・・違いましたか??」
「え、え・・・外国ではって話かな、日本ではそこまでしないよ~!!」
アクアちゃんの見た情報って、地球全体なのかな??
世界共通での話だと、あたしもよくわかんない
どう、話したらわかるの・・・
「もしかして、種族ごとの習わしの違いですか・・・気づかずにすいません」
アクアちゃん・・・同級生というか、お姉さんみたいな感じがするよ~
話し方が難しい、ラビリアさんまでは難しくないけど・・・
やっぱり・・・ううん、そんなの関係ない!!
「はい、種族というか・・・国の違いかな、あたしの国では恋人とか夫婦とかは抱き合うかもしれない」
「そうでしたか、愛し合う関係の行為なんですね・・・あれ、それって・・・はぁっ!!」
アクアちゃん、どうしたんだろう??
急にモジモジしてるよ~
「ワタシが最悪責任を取りますので・・・確実に謎を解明しましょう!!」
責任って何??
どうしたんだろう、真剣な感じに見えるんだけど・・・
「アクアちゃん、責任って何かな??」
「え・・・はっきりと言わないとダメだったりするんですか・・・」
「どういうことかなって思って・・・あたしよくわかんないんだけど」
「でしたら、そのままわからないでいて下さい!!」
あれ??
アクアちゃんもあたしを子供扱いしてるのかな・・・
何で、隠し事するのよ~!!
と思ったんだけど・・・これを聞いたら、恥ずかしくなってしまいました
それは、無理に話す内容ではなかった
どちらかというと、子供ではなくて
大人な話ぽかったです
「アクアちゃんとなら・・・あたしも責任取ってもらおうかな~♥」
って、あたし何を言ってるんだろう~
どうしちゃったんだろう・・・
「唯ちゃん・・・!? 本気になってしまいますよ、ワタシ女性の方が好みなので~♥」
あれ・・・何だろう??
たまに見るレディースコミックであるような話に似てるよ
女の子同士で付き合っちゃうぅ・・・もう、熱くなってきた
変なのかな・・・
「・・・あたし、おかしくなっちゃったのかな??」
「多分、正常です・・・そのままワタシを好きになって下さい!!」
また、抱きしめられた
アクアちゃん、どうしちゃったんだろう・・・
あたしのこと好きってことなの??
「アクアちゃんはあたしのこと好きになったの??」
「はい!! 一目惚れかもしれません・・・」
一目惚れ!?
少し、冗談かと思って聞いてみたけど・・・
本気なんだろうか、あたしも本気でアクアちゃんを好きになればいいのかな
急には無理かも~
最初はお友達からだよね・・・
「あの・・・お友達からじゃダメなのかな??」
あたしが怯えた感じで、いるのが嫌われたと勘違いしたみたい
凄く落ち込んだのかも・・・どうしよう~!?
「いきなり恋人同士っていうのは、あたしもアクアちゃんもお互いのことわからないし・・・」
もう、言えば言うほどにアクアちゃんが悲しい顔になってしまうんだけど~??
あ~ん・・・困ったよ~!!
「唯ちゃんは、ワタシを迷惑だと思っていますか・・・??」
「迷惑・・・何で?? あたしを助けてくれて、仲良くなれると思ってるのに~!!」
あれ・・・あたし、怒ってるの??
余計に嫌いだと思っちゃうじゃない~あわわ、謝らないと!!
「アクアちゃん・・・ごめんね、あたし怒ってないよ・・・嫌いでも迷惑でもないからね!!」
「うん・・・」
わかってもらえたのかな・・・??
笑顔もなくなってるし、あたしが嫌われたんじゃない
何が間違ってたの!?
ライン(唯・・・お前は間違ってないぞ、躊躇してしまっているだけだ!!)
いきなり頭に語りかける声がした
しかも、誰だかもわかる感じで
ラインという名前の女性の声だった
唯(あたしに話しかけているのは・・・ラインさん!?ですか??)
ライン(この世界の神だと思ってくれ、今度実際に会うことになるが・・・困っているみたいだから)
唯(神さま?? あたしを助けてくれるんですか・・・)
ライン(同じ境遇の唯を他人とは思えなくて・・・まあ、それはいいとして)
唯(もう、信じるところが・・・あたしにはわかんないの、だからラインさん助けて欲しいです!!)
ライン(素直に助けを求めるか・・・隣のアクアは、普通にお前のことを大好きみたいだから)
唯(それは、あたしでもわかりますよ!!)
ライン(だったら・・・お前がその気になればいい、友達とか小さい枠で収まるな!!)
唯(だって~女の子同士だよ・・・あたしには~)
ライン(確かにお前にはまだその気はないようだな・・・嘘も方便という、仮でも恋人になってしまえ)
唯(何でよ~嘘は嫌です!!)
ライン(真面目な性格は悪いことではない・・・でも、アクアと仲良くなるには多少の嘘も必要になるぞ)
唯(仲良くなるのに・・・嘘が必要、どうして??)
ライン(深く考えなくていいんだけど・・・ダメか、唯??)
唯(う~ん・・・納得できないよ~!!)
ライン(面倒だな・・・仕方ない、少し待ってろ!!)
あれ、急に声がしなくなったよ??
どうしちゃったんだろう~
今の会話って、ほとんど時間が過ぎてなかったんだ・・・??
アクアちゃんが止まって見えたよ!?
「アクアちゃん・・・??」
「何ですか、唯ちゃん・・・!?」
距離感がいきなり変わったからだろう
アクアちゃんは凄くびっくりしている
実際に止まっていたんだろうか??
あたしが少しだけ近づいてみたんだけど・・・
「高速移動スキルでも使えるんですか?? 唯ちゃんは、いきなりワタシに接近しましたよね!!」
急に身構えてあたしを睨んでいる
何・・・アクアちゃんに近づいただけだよ??
「そんなスキルは使えません・・・そもそも、スキルって何ですか~??」
「唯ちゃんの世界では、ゲームの世界の架空の技ですか・・・では、さっきのは一体??」
スキルって何ですか・・・!!
ソウルを放出する技ですか??
意味がわかりませんが・・・さっきのかな
「お待たせ~唯!!」
あたしとアクアちゃんの前に大きな女性がいた
真っ赤な長い髪をなびかせて
それに・・・あれって、胸だよね??
顔くらいあるでっかい胸・・・凄い
「・・・ん、誰ですか??」
「私はライン=ルビーだよ・・・よろしくね(^_-)-☆」
すごく綺麗なお姉さん・・・ウインクしてる
・・・あれ、ラインさん??
この人がラインさんなの・・・
「唯・・・面倒だから、直接指導しに来たぞ!!」
「唯ちゃんの知り合いですか・・・??」
「初対面だと思うぞ・・・さっき、テレパシーで語りかけはしたけど」
「あたしも、実際に見るのは初めてです・・・」
何か、変な会話になってるよ・・・
声だけを先に聞いているからかな
初対面で知り合いじゃないから
う~ん、何て言うんだろう
「唯ちゃん・・・テレパシーでの対話は、本当ですか??」
「うん、さっき話しかけられたよ」
「そうですか・・・でしたら、このライン様は女神ということになります!!」
「ふふふ・・・女神を知っているのかアクアは眠り姫の聖域から来たのか??」
「はい、エルラウンドから来ました」
二人で、何の話をしているんだろう
女神とか眠り姫とか本当にゲームの世界なのかな
「唯はまだ、半信半疑のようだな・・・幻想だけど、現実なんだ、だから死を思うなよ??」
「唯ちゃん・・・死のうとしたんですか~!! 自暴自棄ですか・・・!!」
あれ・・・何かあたしが死を覚悟したことが??
何でわかってるの・・・やっぱりラインさんは神さまだったの
「動物さんに襲われたときに、もうダメだと思ってたんだけど~アクアちゃんに助けられました☆彡」
さっきは慌てていたから、忘れてたんだよね
あたし、死ぬかと思ってた
でも、もう・・・アクアちゃんもいるし
今は神さまのラインさんもいるから
どうなるのかわからないけど、やれるだけやってみようかと思っています・・・