第一話
~序章~
第一話「東京迷宮」
あたしは今、一人で森を彷徨っている
確か・・・あ、そうだ
あのお姉さんからもらったアイテムで色々わかるんだった
「う~んと、これを耳に付けて・・・あれ、このスイッチを押すと~??」
左耳に小型の装置を取り付け
そこにあるスイッチを押す
「わわっ・・・本当に眼鏡が出てきた~♪ わ~面白~い!!」
森の入口付近で出会った、不思議なお姉さん
あたしに親切にこのアイテムを説明しながら、手渡してくれた
最初は怪しいかと思ったけどね
少し不安なこともあって、そのまま貰いました
それに・・・
優しくあたしの頭を撫でてくれた、あの手の感触を思い出したら
悪い人ではないのかもって・・・
「あのお姉さんは誰なんだろう~、それにこの機械は何かな~??」
眼鏡が出てくる面白い機械
これをどうしたらいいのか、あたしにはよくわかんない
「親切なお姉さんだったな~」
詳しいこととか、別にどうでもよかったの
あそこまで親切にするには、よっぽどの理由があるんだよね・・・きっと
「眼鏡出てきて、後は中を見てわかるって・・・どういう事??」
機械から眼鏡が出てくるまでの説明はわかったんだけどな~
丁寧に教えてくれたもんね・・・でもそのあとよ!!
これが、どうしても曖昧でわかんないんだよね・・・
覗き込めば、わかるって・・・何??
「んっ!? 何これ~♪」
今の時間は??と思って前を見たら・・・
眼鏡越しに時刻が表示されている
でも、本当はその場所に何もない!?
「これって・・・未来の機械かな~??」
あたしは、この手の情報はあまり詳しくない
既に存在する機械だったりするのかもしれない
でも、機械だったら・・・値段高くないのかな??
モニターってことかな・・・試運転に貸してくれたのかも
あのお姉さんは研究者さんだったりするのかな・・・
だったら、かっこいいね~♪
「これは、あたしの考えを眼鏡を通して見せてくれるのかな??」
何か、さっきから疑問ばっかり・・・
でもでも・・・知らないことだらけなんだもん!!
いつもと同じ場所なのに全く違う風景だし
ここは、本当に東京なの!?
「あ・・・東京って表示が出てる・・・う~ん、住所もそのままだね」
引っ越してしまった友達の住んでいる三鷹市に遊びに来て・・・
近所のコンビニに買い物へ行ったんだよね
あ、そうだ~
急にあった地震で・・・あれ??
「これって・・・コンビニの看板よね!?」
普段よく見上げる、サインポールと呼ばれる看板の上部が地面に埋まっていた
「嘘・・・よね?? 地震でこうなってしまったの~!!」
考えたくはないが、確か呼び名・・・天変地異だったかな
最近、続いていた異常な出来事の最大の結果だったりするのかも
「どうしよう~!? みんな、無事なのかな・・・??」
急に色々心配になってきてしまう
しかし、あたしが今どうしようとも変わらない気がする
それとは、関係あるのはわかんないんだけど
不思議な文字情報が表示されていた
「Challenge Anotherspace IN TOKYO LABYRINTH」
何て書いてあるんだろう・・・
あたし、英語苦手だよぉ!!
ううっ~
あ、日本語で表示できるの??
「う~ん、東京迷宮へようこそ・・・どういう事かな??」
訳してくれたみたい・・・でも
意味不明です
これは、何かのアトラクションですか・・・
もう~、さっきのお姉さんに聞けばわかるのかな
「あ~!! 何よ!! 誰もいないの~??」
森に一人、段々周りの様子がわかりつつあり
その分、恐怖が増してくる
「あれ・・・通信?? 何かしら、え~と・・・これかな!?」
直通:ラビリア(ラビリア⇔唯)
ラビリア(唯さん、聞こえていますか??)
唯(あ、はい・・・え~とラビリアさん??ですか!!)
ラビリア(さっきは、ごめんなさい・・・話の途中でいなくなってしまって)
唯(さっき!? 怪しいお姉さん!!)
ラビリア(怪しい・・・まあいいわ、普通そうだろうし)
唯(それで、そのラビリアさんが・・・あたしに、あ・・・続きを説明してくれるんですか??)
ラビリア(ええ、所在がわかったので・・・実体を今から送りますから)
唯(実体・・・何ですかそれは??)
ラビリア(会えばわかりますよ)
唯(あ、ちょっと・・・)
と、通信が途絶える
また、途中で置き去りなの!!
「あたしが子供だからって・・・適当に扱ってるんじゃないの!!」
2度も蔑ろにされ
苛立ちを感じていた
「当然じゃない・・・こんな森の中で一人よ、このままなの~??」
泣きそうとまでは、まだ行ってないんだけどね
でも・・・心細いのは確かです
「色々とあって、なかなかスムーズに行かないのよ・・・本当にごめんなさい、唯さん」
後ろから声がして、振り向くと!?
さっきのお姉さん・・・に似た人がいる
「ラビリアさん、ですか??」
「はい、ラビリア=トパーズと申します・・・さっきは、ごめんなさい」
森の入口で会ったのは
残留するデータの断片だったらしい
聞いても意味はわかんないんだけど
このお姉さんは、データで出来ているんだって・・・??
ああ~もう・・・全く、意味がわかりません
「ううっ・・・会っても、わかりませんよ!! あたしがおバカだから??」
「・・・この技術が存在しなければ、皆無だと思いますから」
「そうなの??・・・でも~、英語もわからないよ・・・それに、この機械もわからないよ~!!」
何か、悲しくなってきた
バカだとかよりも、今の状況に不安があるかなんだろう
「唯さん・・・どうしたんですか??」
「ううっ・・・よくわかりません、うわ~ん・・・お母さん~!! お父さん~!!」
我慢できなかったの・・・
悲しくて、泣いてしまいました
もう、どうしていいのかわかんない・・・
「・・・心が幼すぎます、この娘には酷です!!」
あたしが泣いてしまったから、泣き止むまでラビリアさんが優しく包むように
抱きしめてくれて
データって言ってたけど・・・機械じゃないんだよね
ちゃんと温もりあるし、それに顔に当たるお胸・・・ぽっ♥
あたしもこれくらいのお胸になれるのかな・・・
素敵な、大人の女性なラビリアさんを感じながら
どのくらい時間が経ったのか、確認しなかったから・・・わかんない
泣き止むまで、ずっと抱きしめてくれたラビリアさん
「少しは落ち着きましたか??」
「あ・・・え~と、少しだけ」
不安しかない、今だけど
実際に少しだけ、ほんの少しだけラビリアさんの温もりが
他者を感じる安心感だったみたいです
しかし、これは一体
あたしは何に巻き込まれたんでしょうか??
夢にしては、具体的すぎる
「唯さん、私はこの森の攻略までは同行できます」
「森の攻略・・・攻略??」
攻略って何??
これってゲームでもやっているの・・・
「入口で説明を受けますが・・・記憶が曖昧になってしまうから」
「入口ですか・・・どこの??」
もう、何が入口なのよ!!
あたしにもわかるように話してくれないの~??
「ラビリアさん・・・話がわかんないんだけど~!!」
自分の中でわからず、怒りをラビリアさんにぶつけてしまった
・・・だって~どうしていいかわかんないんだもん!?
「私も制約があって、あなたに話せる内容が決まっているの」
悲しそうな顔であたしを見ている
制約って何、わかんない言葉ばっかり
「わかりにくい言葉も制約というものですか??」
「それは、別なんだけど・・・私の言葉ではわかりにくいのね、どうしたらわかってもらえるのかな??」
少し悩んでいる
あたしのために、伝言できる方法を考えてくれているんだろうか
「私の限界でデバイスに情報を入れておきました、わからなくなった時に疑問を思い浮かべてみて・・・可能な限り、答えがでるようになってるから」
「デバイス・・・それは、この機械のことですか??」
「あ・・・そうです、その機械です」
この機械はデバイスという名前みたいです
眼鏡を通して見る世界は、ラビリアさんにとって当たり前の世界らしい
「唯さんの考える思いで色々動くので、それもわかるようにしました」
そう言うと、あたしの前に立って
丁度見たところにある文字情報を説明してくれた
自分で見ていないのに、ちゃんと場所を間違えないで
やっぱりこの人は凄いんだろう、と改めて思った
「何で、こんなに親切にしてくれるんですか~??」
ちょっとだけ、疑ってみたりして・・・
何か、悪い部分があったら怖いし
「あなたの命をもらうためです!!」
え!?
今、何て言ったの・・・
「正確には、あなたの宝石の情報を得るためです」
「あたしの宝石?? 宝石なんて持ってないよ・・・」
そうだよ~何であたしが宝石なんて持ってるのよ!!
普通の中学生が持ってるわけないじゃん・・・
ラビリアさんは、何か勘違いしてるのかな
それとも、実はあたしが宝石を持っているの??
「所持という意味ではないの、あなたの体内にあるんですよ」
体内・・・って、あたしの中身ってこと??
宝石が埋まってるの!!
嘘っ!!
やっぱり、勘違いしてるよ~
「ラビリアさん、何か勘違いをしているのかもしれないよ~」
「そう思うのは普通ですよね・・・別世界の人はいつも不思議そうにしますから、唯さんも同じような反応をなさるんですね」
別世界の人って、あたしのことだよね・・・
ここは違う世界なの??
あれ、ここって東京・・・う~ん
混乱してきたぞぉ~?!
「はわわ~ん、唯は・・・壊れてしまいました~♪」
「ちょっと?? 唯さん!?」
あはは~、もうどうでもいいや~、はは~ん!!
目の前で心配そうに唯を見ている・・・
「唯さん・・・デバイスの制御を当面強めにしないと、本当に壊れてしまうかもしれません・・・一人では難しいですかね、早めに仲間を用意して、う~ん」
あれ??
どうしたんだろう、さっきの変な気分がなくなった
「ここまで、介入してしまうとは・・・私も甘すぎますね」
「介入?? あたしに何かしたんですか・・・ラビリアさん??」
どうなっているのか・・・
世界の違いについて・・・あ、表示されてる!!
「アナザースペースチャレンジ・・・電脳異空間??」
「情報を開示しましたか?? キーワード『ルビー』です唯さん!!」
ルビーって宝石よね・・・赤い色の
どういうことだろう~??
デバイスは思うと反応する機械だったよね・・・
ルビーで何がわかるのかな??
ルビーシステム:ファーストパージ・・・
ルビーシステム:セカンドパージ・・・
ルビーシステム:サードパージ・・・
あれれ~??
あたしの中に何かいるよ~!?
「ラビリアさん!! あたしの中に・・・変なのが聞こえてきたよ~??」
「いきなりレベル10まで解放されましたか・・・唯さんのルビーが能力を発現したんです、本来は自らの力で行うんですが、あまりにも見ていられなかったので、私が微調整だけしました・・・限界ギリギリです」
また、わかんないことを言っている
急に不明なことを言い出すんだから・・・ラビリアさん
「直接的なサポートはこれ以上はできなくなってしまいました、後はデバイスの情報を頼って下さい・・・最後まで中途半端ですいませんでした」
その言葉を残して、姿が消えてしまった
手品かな??
イリュージョンだって、そんなお姫様いた気がする~!?
「ラビリアさん・・・本当に途中でいなくなっちゃった」
また、森に一人になってしまった
怖い感じではないんだけど・・・寂しくなってきたよ
何であたしだけ、こんなことになってるのかな~??
これは情報出ないんだね・・・
どんな情報なら、教えてくれるの
身体の中のルビーさん??
あたしを助けてくれるの・・・
文字情報が色々出てきた~
「ルビーシステム・・・レベル10 これってさっきのだよね??」
上の方に表示が出ていて
あたしにもわかるように、日本語で文字が書いてある
英語とか他の文字はわかんないから
「戦闘力1200・・・これは、あたしのかな??」
色々な文字が書かれてある
火属性とか
次の解放まで残り8800とか
ソウルコンボ0とか
謎の文字が沢山だよ~!?
「これも説明してくれるのかな~??」
文字に目を向けると補足説明をしてくれる
と思ったんだけどね・・・
そういう仕組みではなかったみたい
「この感じ・・・どこかで見た気がする、んだけど~」
思い出せる記憶を探って
友達の家で見た、テレビで遊ぶゲームだ!!
「テレビゲームの画面の表示に似てる~♪」
自分ではあまり遊ばないから
どのようなゲームかは、わかんない
聞いた話だからかな
世界を滅ぼそうとする魔王と呼ばれる存在を
冒険して強くなって自分が操作する勇者と呼ばれるものが倒して
平和になる
だったかな・・・
「この世界も同じだったりして・・・あたしが勇者ってことかな??」
ラビリアさんが導きの賢者??
あれ・・・と、言うと
「魔王がいるの!!」
急に怖くなってきた
思い出した、ゲームが実際に自分がいるこの世界なのかもしれないと
「・・・火属性って、火が使えるのかな??」
フレイムアタックと表示が出ている
ソウルスキルの火属性・・・本当に使えるの
恐る恐る、そのスキルというのを使えるのか、な??
「フレイムアタック・・・」
声に出してみた
・・・
・・・・
・・・・・
・・・・・・
あれ??
「何も出ないよ~!!」
火が出るのかと、少し期待してしまいました
何よ・・・あたしのやり方が悪いのかな
表示があるんだけど・・・
使い方がわかんない
「ソウルスキルの使い方・・・え、開くの??」
何か、開けとヒントみたいに書かれている
何を開くの・・・
「ああ~ん、わかんないよ~!!」
気が付くと周囲に視線を感じて
見渡すと、見たことのない動物さんが何匹かいた
「動物園でも見たことない・・・何かな、あれは??」
う~っと聞こえてくる
口から、ヨダレを垂らしている
何だろう・・・これってあたし、危険なんだろうか
「もしかして、あたし狙われてるの・・・食べられちゃうのかな!!」
本気で覚悟を決めた瞬間だった
もう、わけのわからない世界で一人だけ
このまま動物さんの餌となって
寂しさも感じなくなるよね・・・
「お母さん、お父さん・・・ごめんなさい~!!」
涙が出てきて
震えが止まらなくなって
覚悟を決めたけど、やっぱり死にたくないよ~!?
動物さんがあたしに一気に近づいてくる・・・
「きゃ~!! 助けて~!!」
思わず叫んでしまった
誰も助けなんて来ないのに~
このままあたし死ぬんだ
森に一人、最後の瞬間を迎えようとしていた・・・