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間違いからの第2人生  作者: ふぅみき
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7 長い夜

シャロンは息を飲んで口を開く。


「始末って…脱獄する気は無いですが、私が自由になった方が貴方にとっても都合が良いんじゃないですか?」

「へえ、つまり?」

「…清潔な布くらいは用意できます」

「ぶふっ」


再度吹き出す男。自由になってまずすることがそれかよ、とカラカラ笑う。


「俺は別に物に関しちゃ不満はねえよ」

「じゃあここの空気を綺麗にします」

「いらねえな」

「…逃すことはできないですよ?」


男はそれを狙っているのだろうと先んじて断りを入れる。

だが返ってきたのは予想外の回答だった。


「頼んじゃねえよ。てめえにしてもらわなくとも俺はいつでも抜けれる」

「…いつでも抜けられる?」

「お前が質問すんじゃねえ。俺が知りてえのはてめえが何をするつもりかってことだ」


(この人のさっきの理論でいくなら、本人は即抹殺ではない雑魚になるんだけど…でも脱獄宣言してるってことはそこそこやばいんじゃない?)

得体の知れない囚人に不信感が募る。男の言葉を全て信用する訳ではないがこれ以上関わりたくないと彼女は思った。


「……脱獄はしません。枷を外す、それだけです」

「なわけねえだろ。殺すぞてめえ」

「嘘じゃないです。そもそもこの枷の結界も最後の繋ぎ目が分からなくて外せなさそうですし」

「普通は最初の繋ぎ目も分かんねえよ。それが解かれちまってんだからロイドのじじいもついにボケたか?」


(伝説の魔道士に対してなんたる言い草)

思わず眉を寄せるがシャロンはこれ以上話す気が無かった。口を閉じていると男は苛立った様子で鉄柵を揺らした。


「おいてめえ、無視してんじゃねえぞ。俺は別にそこで寝てる無能な牢番叩き起こしても構わねえんだからな」

「…分かりましたからやめて下さい。もう枷の結界解くことはしません」


なんて面倒な隣人だとため息をついた。劣悪環境な上に隣人トラブルなど本当に厄介だ。

 

「それで、貴方はどうしてここにいるんですか?」

「あ?てめえに関係ねえだろ」

「色々聞いてきたのはそっちじゃないですか。これからしばらく一緒にいるので気になります」

「ちょっと物を壊しただけだよ」


(そういえば言ってたなぁ。でも枷からの魔力の流れを読めるなんて珍しいよね…この人いつでも脱獄できるとか言ってたし)

俄然興味が湧いてきたシャロン。

こちらの番とばかりに質問を繰り出す。


「いつからここに居るんです?」

「あ?来たのは4日前だ」

「4日前…」


迷惑そうに言うが答えてくれた事に少し驚く。

しかし4日前ならつい最近だ。何故この男はこんなにも王宮の事情に詳しいのか。


「あなた何者なんですか?」

「やかましいな。正義の味方だよ」

「…牢屋に入ってる正義の味方とか、正義の概念いつのまに変わったんですか」


ここは答えるつもりがないらしい。


「ふあ…まあまあもういいじゃねえか。寝ようぜ新人。ガキはもうお寝んねの時間だ」

「そっちも大概新人のくせに」

「はいはい。じゃあな」


あくびを噛み殺し、床にごろんと横たわった音が聞こえた。話は終わりという合図だ。


囚人の寝顔を拝見しようと隣によって鉄筋と鉄筋との間に顔を近づけるが、やはり暗すぎてその先が見えない。

今だに熟睡中の牢番の隣にある蝋燭以外、この牢屋にある明かりは月からのささやかなものだけだ。


(結局臭い布と寒い空間で寝なきゃいけないのか)

男に止められてしまったため、環境改善は叶わなかった。なぜ止めるのかその意図も分からない。

少女は不服そうに身を丸める。


「朝まで我慢すればいいだけだもんね…」

「…」


彼女は、気付かない。

隣の囚人がその言葉を聞いていたことも。

また、それは彼も同じだということも。


それより早く訪れた眠気に安らかに乗っかるしかなかったのだから。


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