爬羅剔抉だ!
そろそろ限界です。サブタイトルもストーリーも……。
これ以上つづけたら破滅的な破綻をむかえそうな気がします。
怖い怖い。剣呑剣呑。
さあてそうなる前に、一気呵成に書き上げますよー!
❛ちなみにサブタイトルは、爬羅剔抉と読みます❜
「だいたいの予想はついてるし、責めるつもりもないんだけど、カツ丼はどうしちゃったのかな? 主人公にふさわしい月見里くん」
四十川は静かに訊いた。
「これにはわけがあるんです。――そのへんに咲いている雑草にふさわしい四十川さん」
月見里は単身で四十川と向いあっている。周囲にいるのは一尺八寸と小鳥遊だけ――
女子しかいないという意味では四面楚歌だが、ハーレム状態といえなくもない。
「雑草ってなによ?」
「メジャーで活躍している上原浩治選手の座右の銘は、雑草魂でしょう?」
「いや、ごめん。知らなかった。そうなんだ……」
「そうです。だから雑草といいました」
「なんでもいいんだけどさ……」
四十川は背筋を伸ばして、
「カツ丼を買ってこなかったわけを聞かせてもらってもいいかな? へんに期待を持たされたせいで食堂にも行けなかったんだから」
「承知しました。つまりカツ丼を買ってこなかった理由を話せばいいんですね」
なにが『つまり』なのか、なにをつまびらかにするつもりなのかは気にせずに、
「いいんです!」
と。
四十川はスカートをはいて、イスに座っているというのに――
大胆にも大股をひろげ、太股を露出した状態でいった。
待ちくたびれて姿勢が崩れてしまったのだ。――たとえば正座を長時間やっていると疲れるが、まあおおむねそんな要領だ。
「じつはですね……」
人間は考える葦であるとはパスカルの言葉だが、
しかし、なまめかしい四十川の脚を、月見里はあまり注目してはいなかった。
しいてたとえるなら――そう、まるで月見草や雑草をみるような目だった。
「頼まれたカツ丼を買ったところまではよかったんですけど、そのあとからが問題なんですよ」
月見里は――七五三担任の大食いっぷりをみてストレスがたまり、うっかり四十川のカツ丼もやけになって食べてしまったことを話した。
「なるほどねえ。七五三先生がそんなにドカ食いしてたんだ……。健康診断の結果が楽しみね」
「それと、もう ひとつあります。七五三先生からお金を借りて、カツ丼を買いなおそうとしたんですけど、なんたる不幸か、きょうは木曜日じゃないですか」
月見里はヒステリックに手振りをくわえて説明し、同情を求めた。
「なによ。結論を早くいってよ。こっちも時間ないんだからさ」
しかし彼女はにべもしゃしゃりもなかった。ふつうにささくれ立っていた。
だからこれは――
因果の小車というべきなのかもしれない。
四十川の開脚行為に拍車がかかってきたのだ。
もちろんそれは――
人目もはばからずに欲情するほど元気だったからではない。
単純にイライラして、貧乏ゆすりを しているうちに股が開いて、スパッツがみえそうな感じになっているというだけのことだ。
「木曜日の日替わり定食は『とんかつ定食』ですよ。だからとんかつが品切れになっちゃったんですよ」
「そうなの? しばらく逼塞していたから食堂のメニューなんて忘れたわ」
逼塞というよりは、とくに用事がないから食堂に行かなかったというだけのことだ。
思わせぶりな発言をしながらも、それはほんとうに思わせぶりなだけで、月見里の興味をひくためで、とりたてて深い意味はなかった。
「ひっそくってなんですか?」
だがもちろん、月見里はよく理解していないようだった。まさしく犬に論語である。
孔子に論語ではなくて犬に論語。
またはブタに真珠。
「落ちぶれてるみたいな意味だよ。落ちてぶれてるわけだよ、うちの家族は……」
四十川は――
お金に苦しい、貧しい困窮児を装った。
が。
「つぎの授業の準備があるので、これにて失礼しまーす」
お約束というべきか。
ろくに話も聞かずに月見里はピューッと立ち去ってしまったのである。
残されたのは――
四十川がつくり上げた、虚無と虚構の悲哀のエピソードと、
月見里に対する不信感だけだった。
みんながみんな、全員が全員、教師も生徒も、この先に待ち構えているイベント――
黽勉勉励合宿の開催に注意を向けているが、しかし七五三担任はちがった。
ほかの人たちとは、目の色がちがった。
いや、目の色がちがうといっても、虹彩異色症とかではなく――
眼帯をとったら左右の目の色がちがうみたいな、そういうファンタジックでラノベチックな表現ではなく――
もっと直情的で、直截的な意味で――紅一点というべきか。いや、微妙にちがう。
なんていうか……。こう……。
まあいいや。
つまり目の付けどころがちがったということだ。
それも、
見当ちがいなことではなく、
ちゃんとした、うがった見方である。
合宿の1週間後に実力テスト(定期テストみたいなやつ。新入生の学力を分析し、来年のクラス替えの資料にする)があるので、とりあえず自分の受け持っているクラスの平均点だけでも底上げしてやろうという腹積もりだったのだ。
って、
あれ……。
目の色じゃなかった……。
目の付けどころがちがう……だった。
まあいいや。さっきのは誤植。
PCによるひょうきんな表記ミス。
口が達者な人ほど、よくまちがえる。
ところで――
ひと文字で、ものすごく長い読みをする漢字がある。
それは『口』が『達者』と書く。駄文をつらつらと重ねている、上記の文さながらだ。
ことのついでとして述べておくと、こんな漢字だ。
『噠』
読みかたは、ことばがただしくない。
噠……身につまされる思いである。
「国語教師をやっているからかもしれないですが、さいきんこんなことを思うんですよ。正しい意味で正しく言葉を使っている特別な人間――全知全能で日本語のスペシャリストといわれる机上の空論めいた大魔神なんて、じつはいないのかもしれないと。
私は品行方正で謹厳実直だったので、用いる言葉はすべて辞書で調べたものしか使いませんでしたが、それでも小学校のころからすでに、友だちとの会話ですら齟齬をきたすようになりました……」
この日は――5、6時間目の授業にコマが入っていなかったので、七五三担任は職員室にいた。
「かもしれませんね」
たまたま暇をしていた、生徒指導部顧問の体育科教諭。
日焼けのせいで肌が黒く(どちらかといえば、赤いが)、筋肉特盛りの教師――
八月一日生徒指導部顧問はおもむろにいった。
「ぼくは体育系教師だから、あんまりそうゆうことは考えないんだけれど、堂々とまちがった言葉を普及させているテレビやネットの悪因悪果因果応報によって、あやまちが加速させられているような気がしますね」
八月一日生徒指導部顧問はふっと外を眺めた。
窓の外では小雨が降っていた。
『故意的で好意的な恋』も、『恣意的に虐げられた思惟』も、まあいわゆる惰性で読んでくださっている、数すくないリア友がいます。
ある日。
そのリア友につれられて「アニメイト」という店に行きました。(どんな店かは、ご想像にまかせます)
そこで聞かされた――というよりは、訊かれた衝撃的なひとこと。
<「小鳥遊」とか「八月一日」とか「九十九」って、『中二病でも恋がしたい』のキャラ名パクった?>
中二病がどうの……といわれても、よくわからなかったのですが、どうやらそれはラノベ(アニメ化もされている! 人気作品)らしいのです。
だから、ぼくがキャラ名を拝借したんじゃないかと……リア友は邪推したそうです。
なるほどねー。
では、ここできっぱりと断言します。
<『中二病でも恋がしたい』というラノベの存在は、さっきHPで調べて初めて知りました。それに、リア友の地域ではアニメ化していても、うちの地域ではアニメ化していません。してもしなくても、まだ観てません>
なんかネーミングが、『死亡フラグが立ちました!』(このミステリーがすごい!大賞の最終選考で落選)に似てるなーと思っただけです。
ちなみに『死亡フラグが立ちました!』は、ストーリーはそこそこおもしろいですが、あまりおすすめしません。
でもぼくの小説なんかよりは、ずーっとおもしろいですよ。(当然だ!)




