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四十川の迷走

一二三四五六七と書いて、一二三四五六七はじしらずと読むそうです。


なかなかおもしろいですよね。

 ――昼休みになった。

 教科担当の先生は休み時間だというのに、質問に来る生徒にはまだ授業中であるかのように丁寧に接していた。まあ、それが仕事なのだから、とりたててすごいとか、そんなふうには考えられないけど。

 なにはともあれ雨あられ。

 いつもと変わらぬ、いつも通りの昼休みが訪れていた。

 そんななか――四十川は、

 不遜といっても遜色ないほど、厚顔というよりも傲岸なほど、高慢に高飛車に月見里を見下していた。

 下にみていた。軽視していた。

 べつにそれがどうしたということでもないが、どうもしていないということでもない。どうしたと訊かれたら、どうかしていたというべきだろう。

 そう――

 四十川翔子はどうかしていたのだ。

 繰り返し繰り広げるようだが、だからといってなにかをしたわけではなく、どうかしていただけなのだ。

 責任転嫁はよくないが、しいて責任の所在――どうかしてしまった原因をつきとめるならば、それは九十九のせいということになる。

 歯の浮くような気の多い浮気性。

 九十九が――悪い。

 でも、

 だからといって、

 不条理な世の中は、不合理な世界は、非論理的な世間は、非道徳的な世論は、

 善悪をさばいたり、是非を論じたり、正邪の区別をつけたり、黒白こくびゃくを争ったりはしない。

 是非曲直でも、正邪曲直でも、理非曲直でも関係ない。

『強いほうが正しいのだ』

 だから四十川は、九十九に手がだせない。

 舌もだせない――だせるけどださない、だしたらダサい。それにもし舌をだしたら、ゆとり世代はジェネレーションギャップを感じざるを得ない。まあ、それをいうと四十川もゆとり世代なのだが。 

「ねえねえ、平成ジャンプって、メンバーのみんなが平成生まれなんだよね?」

 益体やくたいもないことを考えていると、小鳥遊が弁当を持ってやってきた。

「そうだね。いまとなっては平成生まれも、それほどまでには、めずらしくなくなってきたけどね」

 いつもの雑談にホッとしつつも、やっぱりどうしても四十川の視線は、月見里の席へいってしまう。

 だいじょうぶ。大丈夫だ。

 ダイジョーブ博士は、フランク・ジョーブ氏とはちがって、丈夫でも、ましてや大丈夫でもないが……

 この場合は、さすがに大丈夫といえよう。

 月見里は案の定、席についてはいなかったのである。

 おそらく食堂にでもいったはずだ。それもカツ丼を買ってすぐに帰ってくる予定である。

 四十川にとっては、もはやそれだけが救いだった。

 よかったよかった。

 丈夫丈夫、大丈夫大丈夫。月見里くんはきっと私のことを考えてくれている。

 そう思うと、

 不思議と失恋の傷も()えてきた……ような感じがする。

 傷が癒えたというよりは、溜飲(りゅういん)が下がった感じにちかい。

 それでも、

 やっぱり失恋というと、

 主観的にでも客観的にでも失恋ととらえてしまうと、

 なんかムカつく。

 ふられたというか、

 もはや付きあってなかった、というふうにしてほしい。

 そのほうがさっぱりするし、そのほうがフェアだ。

 ファールなのはむしろ、九十九と付きあったことなのかもしれない。

 だったらけっかはオーライじゃないか。

 九十九とわかれて、月見里と付きあえば。

 …………。

 本当に?

 ほんとうにそれでいいわけ?

 ほんとうに月見里を、

 彼氏にするつもりなの?

 または彼氏代理かもしれないけど。

 それでいいの?

 いや、もしも。――もしもの仮定で。

 とにかくあり得ない話だけど、

 もういちど九十九と付きあうというのはどうだろうか。

 そのために月見里を橋頭堡きょうとうほとして利用するのは……。

 ダメだダメだ。

 女子はふられてもすぐ立ち直るというけど、立ち直れても、開き直れない。

 居直り強盗みたいに、強気にはなれなかった。

 きっと――。きっとまた飽きられておしまい。

 でも――だからって。

 だからってそんな。

 月見里くんはたしかに……好印象だし好青年(?)だけど。

 だけど――好き、とはちょっとちがうみたいな。

 中学生のときにならった、空間図形っぽくたとえるなら――『ねじれの位置』だ。

 垂直でもないし、平行でもない。対称でも好対照でもなく、無関係。

 けっして交わることのない、ちかくてとおい。

 そんな、関係。

後書きまで読んでくださる熱心なみなさん。

わざわざお手間をとらせてしまい、申しわけないです。二社会科教諭です。


奇兵隊の「高杉晋作」さんの名言で、『おもしろき(5)、こともなき世を(7)、おもしろく(5)』という言葉があります。そうです。その通り。まさにそうなんですよ。

この世の中がつまらない。――それは私も同意見です。私もこの世のマンネリに対し、食傷気味ですから。


『自分に能力がないなんて決めて、引っ込んでしまっては駄目だ。なければなおいい。決意の凄みを見せてやるというつもりで、やればいいんだよ』

これは岡本太郎さんの名言です。「芸術は爆発だ」の人です。

ここからがいよいよ、とたん落ちです。

七五三先生に「芸術は爆発だ」の人といったら、「えっ? デイダラ?」と返されました。

NARUTOを御存じないかた、すみません。わかりにくい落ちでした。

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