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異彩の二先生

前話とは一転し、地の文、会話文がちょっぴり長めです。


月見里くんはあまりものを考えないタイプなので、どうしても客観描写が増えてしまいます。

そのぶん、七五三先生視点は書きやすかったです。

 同じく昼休み。

 七五三担任は職員室に戻り、自分のデスクについた。

 そして持参した弁当と水筒を出し、ユーチューブでアニメを鑑賞していた。

 のだが、

 (したなが)先生(日本史、世界史、地理の教科を担当している、社会科教諭)が、

 さきほどまで、なんだかよくわからないマニアックな教本を読んでいた二社会科教諭が、

 七五三担任のデスクにやってきた。

「いささかコペルニクス的転回ではありますが、現代人の教養や倫理観が薄弱なことに対してマンガばかり読んでいるからとか、ゲームに没頭してばかりいるからとか、そんなふうに牽強付会な弁舌をなさる教育論者がいますけれど、あれって人権侵害にあたると思いませんか? だってそれは現代人の趣味を完全に否定しているわけでしょう。いくらその根暗な人たちが幼少期に高尚な文学を読んでいたからといっても、そんなの衒学げんがく的な知識にすぎませんよね。ねえ、そうでしょう」

 二社会科教諭は唐突にわけのわからないことを言ってきた。

 きっとユーチューブの音声がもれていたから、それを軸に教育論を構成してきたのだろうが――

 もしそうなら、なんの脈絡もない話題をふったわけではなさそうだが――

 しかしながら、この人。

 まともな会話が通じるのかどうか……わからない。

 それこそ、同じ学年を担当してはいるものの……。

 はっきりいって二社会科教諭は別格である。

 ――七五三担任と比較してみると、その思考能力はすでに懸隔けんかくしていることがわかるが、その対象はべつに百千万億つもい校長であっても、八月一日ほずみ生徒指導部顧問であっても、二社会科教諭の同輩である五十いそ先生であっても構わないだろう。

 ただひとり――一二つまびら英語教諭をのぞけば、その異常さが浮き彫りになるはずだ。

 だけど――だからといって。

 いいや――だからこそ、か。

 二社会科教諭にはコミュニケーション能力が、それほどない。

 日常生活の些事をこなすうえで問題はないが、日常生活の大事をこなすうえでは問題がある。

 それゆえ。

 そのようなゆえんにちなんで。

 二社会科教諭とはあまり関わり合いになりたくはなかった。

「そうですね、マンガやゲームが好きだというのは、けっしてマイナスではなく、むしろプラスでしょう。物事に熱中するというのは、とても大切なことですからね」

 七五三担任はあたりさわりのないことを言って、とりあえずユーチューブの画面からエクセルの画面に切り換えた。

「ところで二先生は、さいきんハマっていることとかありますか?」

 七五三担任は無難に――

 難しくならないように――

 簡単な話題にすり変えた。

 さいきんハマっていること――

 ガーデニングとか、ランニングとか、リーディングとか……

 魚釣りとか、サーフィンとか、スカイダイビングとか……

 ネトゲとか、SNSとか、ポータブルゲームとか……

 ダーツとか、ビリヤードとか、ボーリングとか……

 七五三担任はさすがにそれくらいだろうとたかをくくっていたが、しかしこれしきの数を列挙したところで、下種の勘ぐりにすらならなかった。

「それならいろいろありますよ。七五三先生がアニメをよくみていらっしゃるように、私にも趣味の10や20はありますって……」

 二社会科教諭は、あくまでもおぼえている範囲を述べた。

「私がさいきん学んだ学問は、フーリエ解析、ウェーブレット解析、留数解析、行列解析、関数解析、無限次元解析、位相解析、コーシー解析、ベクトル解析、調和解析、多変量解析、スペクトル解析、統計解析、信号解析、多変数複素解析、超準解析、テンソル解析、多次元データ解析、数値解析、平面解析幾何学、立体解析幾何学、微分解析幾何学、積分幾何学、シンプレクティック幾何学、リーマン幾何学、代数幾何学、抽象代数幾何学、代数的位相幾何学、リジッド幾何学、射影幾何学、非可換幾何学、微分位相解析幾何学、ユークリッド幾何学、非ユークリッド幾何学、ベイズ統計、回帰分析、コレスポンデンス分析、時系列分析、多次元分析、分散分析、クラスター分析、PEST分析、SWOT分析、スペクトル分析、定性分析、元素分析、表面分析、社会ネットワーク分析、マーケットバスケット分析、ゲノム分析、マルコフ過程、ガウス過程、確率過程、p過程、R過程、rp過程、s過程、ベルヌーイ過程、シーケンス制御、サーボ制御、ベクトル制御、モータ制御、フィードバック制御、偏微分方程式、非線形偏微分方程式、パンルヴェ方程式、常微分方程式、ナビエ・ストークス方程式、ゲージ理論、ゲーム理論、ガロア理論、エルゴード理論、ソリトン理論、カオス理論、分化的接触理論、分化的同一化理論、ラべリング理論、ドリフト理論、イノベーター理論、キャズム理論、社会的絆理論、S-R理論、アノミー理論、プロスペクト理論、文化葛藤理論、精神分析理論、折りたたみナイフ現象、エルニーニョ現象、スプロール現象、ノルマン現象、チンダル現象、フェーン現象、ラニーニャ現象、同調現象、高速催眠現象、ジャックナイフ現象、蒸発現象、スタンディングウェーブ現象、クリープ現象、ホワイトアウト現象、ハイドロプレーニング現象、フェード現象、ベーパー・ロック現象、気分一致効果、文脈効果、スノッブ効果、ディドロ効果、サブリミナル効果、プラシーボ効果、カタルシス効果、ウィンザー効果、ヴェブレン効果、ホーソン効果、ノーシーボ効果、バーナム効果、ツァイガルニック効果、フィードバック効果、ハロー効果、ピグマリオン効果、ゴーレム効果、ウォーターベッド効果、アンカリング効果、バナッハ=タルスキーのパラドックス、砂山のパラドックス、嘘つきのパラドックス、ラッセルのパラドックス、ゼノンのパラドックス、サンクトペテルブルクのパラドックス、カラスのパラドックス、バター猫のパラドックス、リシャールのパラドックス、ベリーのパラドックス、誕生日のパラドックス……あとは忘れました」

 なんだそりゃ……。

 まったくわからん。

「ところで、七五三先生はなにがお好きなのですか?」

 あっけにとられているところに――

 いきなり質問がきた。

「ぼ……ぼくですか。ぼくはですねえ」

 うーーーん。

 うーーーーーん。

 うーーーーーーーん。

「ドラクエとか、ですね。ドラゴンクエスト。社会現象にもなりましたし……。近頃は、3DSで復刻されているので、たいへん重宝していますよ」

「ならびました?」

「はっ?」

 な・ら・び・ま・し・た・?

 やっぱり意味がわからないぞ、この人。

 頭のなかで、スロットでも回していたのだろうか。

「行列ですよ行列。七五三先生ってならんで買う派ですか?」

 行列……行列……

 行列のできる魔法律相談事務所。

 あれ、なんかちがった。まあいいか。

「いいえ。驥尾きびに付すのがきらいなので、行列とかにはならびません」

 そういうと、二社会科教諭は頭をかいた。

「じつは私もです。どうにもこらえ性がないもので……」

 七五三担任と二先生は、へんなところで馬があった。

 それじゃあ、つぎにあうのは鹿……だろうか。

 いやいや、そんな……。

 馬鹿馬鹿しい。

「鹿だけに叱られるぞ!」

「えっ?」

 突然ツッコまれて――

 二社会科教諭はすこし動揺した。

 が、

「そうですよね。教師は忍耐勝負ですからね。こらえ性だの冷え症だの凝り性だの、いってられませんよね」

 と、

 話をつなげた。

「まあ、冷え症は仕方ないでしょう。加齢とともに代謝は落ちますから……。でもその代わり、脂肪はなかなか落ちません」

 七五三担任は笑いながら――高らかに笑い飛ばしながら、

 胸中――

 肥え太った腹の中では――

 やべえ。

 健康診断のとき、どうしよう。

 また太ったとかいわれる。食事を制限される。運動を強制させられる。

 と、

 まさしく笑えないことを考えていた。

二担任が「~解析、~分析、~制御」としゃべるシーン。あと20~30個ほどつめ込む予定でしたが、不慮の災難によりそのデータを消失してしまいました。

ちなみに「~理論」とか「~方程式」とかです。


ですので、あとからもうちょっとだけ、肉付けしておきます。

どうせなら羽振りよく歯切れよく、用語の羅列を100個にしたいところですが。


㊗100個以上を達成しましたよー!!

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