第2部:第6話:『涙』
俺が後ろを見るとそこには桜がいた。
桜は胸を抑えハァハァと息を整えようとしている。
そして、俺の横に来て
桜「横座ってもいいですか?」
と聞いてくる。
だが、今の俺は一人になりたいので
俺「駄目だ」
と言いたいがそんな元気もなく心の中でそう言った。
しかし、桜にそんな思いが通じるわけがなく桜は俺の隣に座り俺の顔を心配そうに覗き込むが
俺は顔を俯けた。
桜「煉次様・・・」
と横から泣きそうな声が聞こえるが俺は俯いたままだ。
俺はこのままだと桜に当たってしまいそうなので
俺「もうどっかいけよ・・・」
と軽く言ったが桜は何処かに行く様子もない。
ただ俺の横で俺を心配している。
俺「どっか行けって!」
と遂に怒鳴ってしまった。
俺はハッと自分が最低な事をしたとすぐにわかった。
そして、俺は居づらくなり違う所に行こうとし立ち上がった時
ぎゅう・・・
と後ろから桜が抱きしめた。
桜「私じゃ駄目ですか?
私が煉次様の傍に居ては駄目なんですか?
私が怖くて何も出来なかった時煉次様は助けてくださいました。
そして、今度は煉次様が困っているのに・・・
私では支えになりませんか?そんなに信頼できませんか?
私は・・・煉次様の一体何なんですか?」
と言い俺の背中で泣き出す。
俺は昔、親父に教わった事を思い出した。
『いいか?もし女が泣き出して止まらなさそうなら口を口で塞げ!いいな?
それとお前の事だ。お前は誰にも頼らずに生きていくつもりかもしれないがな
余りにも耐えられない時はお前の1番信頼できる奴に支えてもらえ
そうしないとお前はいつか潰れる。
そして、最後に何事も最後まで諦めるなよ』
と昔、散々親父に教わった。
俺は腹部の所にある桜の手を握り
俺「ごめん・・・ごめんな桜」
と謝った。
そして、俺は桜の方へ向いた。
俺「桜・・・今日だけ・・・今日だけ・・・甘えていいか?」
と聞くと桜は自分の涙を拭き出来るだけの笑顔で
桜「えぇ・・・今日だけと言わずいつでも甘えてください」
と言ってくれた。
すると、俺の中で溜まっていた全ての物が込み上がって来た。
そして、桜は俺を抱きしめた。
俺の顔は丁度桜の胸の辺りに来ていた。
丁度俺の顔を隠れるようになり
桜「もう我慢しなくていいんですよ・・・」
と言う桜の一言で俺は泣き出した。
よく考えてみると俺は目の前で友達が死んだ時も美奈子が捕まった時も
無理をして泣かずに中に溜めていた。
そのせいか俺はただ泣いていた。
桜はそんな俺の頭を優しく撫でていてくれた。
真夜中の海の浜辺で俺と桜は肩を並べていた。
しばらくして俺も泣き止んだ時桜がヘクション
と可愛いクシャミをした。
俺はプッと笑ってしまう桜は恥ずかしそうに俯いている。
俺は立ち上がりパッパッとお尻の砂を叩き落し桜に
俺「風も冷たくなってきたし戻るか?」
と言って手を差し出した。
桜は『はい!』と嬉しそうに俺の手を掴み立ち上がり
パッパッとお尻の砂を落とし
俺と桜は並んで暗闇の道を歩く
だけど、この海に来る前のような暗い気持ちはもうない
俺は桜を少し見て心の中で(ありがとう)と小さく言った。
そして、俺達は犬神が居るホテルに戻った。
桜と手を繋ぎながら・・・