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藍の軌跡  作者: シャボン玉


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10話 空白 (2)

 一通り用意していた矢上君の観戦記を話し終えると、わたしの心にはざらつきだけが残った。

 グラスの氷がカランと音を立てる。

 チーム”今も好きな人”の一員、矢上君の活躍を話すことが恒例になっていて、わたしが矢上君をどう思ったかも照れ臭いけど少しずつ話している。だけど、このざらつきである深くまこっちゃんと関わること、腑に落ちないことは話したことがなかった。もしかしたら、そのうち分かるかなと考えていたけど、矢上君の試合もしばらくなく、その機会がなくなっていた。

 それを解消すべく優美さんに聞いてみた。

「あの、優美さん。矢上君は・・・どうして野球続けているんですか?」

「んん・・・ん~~~~~。そうね~~」

 矢上君はお線香を上げてすぐ帰っちゃうから、優美さんはあまり会話しないって言っていた。だけど、同じチーム”今も好きな人”。全然、会話しないってわけじゃないから何か知っているかもしれない。

 だけど、「ん~~~」と、コロコロ表所を変えながら、唸り続けている。

 歯に衣着せぬ物言いの優美さんにしては珍しくて、変なこと聞いちゃったかなっと思った。


 矢上君が野球を続ける理由。


 それを試合観戦の間だけでなく、自宅に帰ってからも、学校でちょっと時間空いたときにも考えていることがあった。


 もし、まこっちゃんの夢を矢上君が知っているとしたら、その夢を叶えようとするんじゃないかなと初めは思った。それはすなわち、ピッチャーとして甲子園やプロを目指す。矢上君は・・・同じまこととして、代わりに夢を叶えようとしている、ってことになる。


 でも、矢上君は出場した試合では全てショートだった。試合前にする練習風景も見たことがあったけど、わたしの期待に反してショートから動くことはなかった。ピッチャーだけでなく、外野や他の内野ですら守っているところを見たことがなかった。


 では矢上君はまこっちゃんのことなんとも思っていないのかも、と思った。でも、それは絶対ないと思う。なんとも思っていなかったらお線香上げに来なくなるんじゃないかな。それに優美さんの話だと、お墓参りにも行っていた。だから、これは一番考えられないこと。


 もしかしたら、わたしとまこっちゃんが交わした約束みたいに、矢上君とまこっちゃんで交わした約束のような何かがあるのかもしれない。

 わたしが知らないだけで、もしかしたら矢上君はまこっちゃんの何かを背負っている。

 でも、もしかしたらが何回も出てきて、考えが前に進んでいかない。

 考え出したらキリがなくて、気づけば迷子になってしまっている。


 そもそも、矢上君がまこっちゃんの夢を知っていても、それはまこっちゃんの夢。代わりに叶えることはできないっていう考え方もあると思う。

 ううん、むしろ最近はその考え方が一番近いような気がしている。矢上君からチームの勝利への強い想いがひしひしと伝わってくる。チームで誰よりも野球を知っていて冷静で、試合中にあまり笑顔を見せなくて、だけど試合後は泥だらけになっているユニフォーム。それはまこっちゃんが見せた野球とは正反対で重なるところを見つける方が難しかった。


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