8話 リトルシニア (7)
ねぇ、まこっちゃん。
ヒーローインタビューをするなら誰にする?
・・・ふふっ、そうだよね、やっぱり親友の矢上君だよね。
わたしも同じ。でも、途中出場のショートが矢上君じゃなかったとしてもやっぱりショートを選んでたと思うよ。
でもあの盗塁のプレー、他の人だとできなかったかもね、プロっぽいって思っちゃった。
・・・あははっ、でたでた、まこっちゃんの「野球って、やっぱ面白れぇ」発言。
いっつも大袈裟に言うんだから。
ふふ、でも今回はわたしも面白いって思ったよ。
わたしの知らない野球ってまだまだあるんだなぁってね。
ランナーコーチに、イニング間のキャッチボール、盗塁でのプレー、どれも知らない野球。
沢山の試合を観てきたはずなのに、矢上君が見せてくれたプレー、その新しい景色に胸が躍る。
わたしは思い出したように、6回に会心の当たりを打った相手の4番打者のデータをスコアブックアプリで見返した。1回から球数含めて入力していたデータ。
だけど、ショートゴロとセカンドフライで、大きい当たりを打ちそうな傾向みたいなものを見つけることができなかった。
矢上君・・・6回はどうして、打球がそこに行くってわかったの?
何か感じ取って、チームを救ったのかな
じぶんのことばっかりのまこっちゃんはこんなこと絶対にできないよ。知ってると思うけど。
ねぇ、矢上君。どうして野球続けているのかな?
わたしはあなたの努力を知らない
わたしが塞ぎ込んでいた時にも頑張っていたんだよね
それならどうして、ピッチャーじゃないのかな?
最後のあの力強い送球。びゅんって伸びたボール。今の矢上君ならピッチャーもできると思うんだよね。
矢上君は・・・まこっちゃんのこと、どう思ってるの?
夏希の視線の先にはチームメイトとキャッチボールをしている矢上真の姿があった。
勝利の勲章でもある砂で茶色に汚れたユニフォームに夏希は胸の奥底に小さな熱を感じていた。
だが、夏希の興奮や想いに反して、矢上真は初出場に加えファインプレーで勝利したにも関わらず、表情に浮かれた様子がなかった。
むしろ、試合は終わったというのに、小刻みに肩で息をしていて、険しい顔をしている。
保泉誠のような周囲を照らす笑顔とは真逆で、静かで、どこか孤独すら感じさせる真摯な横顔が、夕暮れのグラウンドに焼き付いていた。
夏希は矢上真のその姿から、かつて自身が感じた孤独さを垣間見えた気がした。




