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藍の軌跡  作者: シャボン玉


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8話 リトルシニア (2)

 試合はテンポよく5回まで進んでいった。

 両チームとも0点のまま。

 だけど、6回に均衡は破れて試合が動き出す。相手チームに先制されて、久喜西が0−2とビハインドを背負ってしまった。


「2点取られちゃったけど、けっこう、いい試合」

 わたしの胸の中の素直な感嘆が、口から漏れた。

 勝負はまだ終わっていないけど、両チームのピッチャーが崩れず、締まった試合になっている。わたしは素直にリトルシニアってレベル高いんだなぁって感心した。


「あれっ?」

 ふと、わたしの目はある選手に引き寄せられていた。三塁ランナーコーチの位置に立っている背番号12の選手。わたしからは最も近くにいる久喜西の選手。

 身長はわたしより少しだけ低いくらいで、深めに被った帽子で顔の大半が隠れて確認できない。表情は見えないけど、4月なのに日焼けした肌がどこか頼もしさを感じさせる。

 

「ピッチャー疲れてるよぉ!!良く見ていこうぜぇ!!!」

 その選手の声が、グラウンド全体によく通る声で響き渡った。

 

 試合は最終回の7回裏まで来ていた。ノーアウトランナー一塁、久喜西の攻撃。

 

「ばててるよぉ!!!ストレートしかはいらないよぉ!!!ストレート狙いでいいよぉ!!!」

 

 背番号12の選手はただ大声を出すだけでなく、具体的な指示を飛ばしながら手を大きく叩いていた。

 

 わたしは冷静に状況を分析してみた。

 試合途中から観始めたけど、0対0だったから相手投手は完投ピッチングのはず。確かに疲れが出てているかもしれない、ちょっとだけ体が上下している。それにコントロールが乱れてきている。

 この回、先頭打者は追い込まれながらもショート後方へのポテンヒット。最終回に来ての先頭アンラッキーは気持ちの切り替えが難しいところ。ここは投手交代で流れを切る場面なんだけど・・・。

 ベンチを一望したけど、ピッチング練習をしている選手の姿はなくて、誰もマウンドに出る気配がない。


 案の定、それから2つの四球を挟み、2アウトフルベースと、土壇場まで試合がもつれている。

 久喜西にとっては今日最大で最後のチャンス。一打同点、野球観戦としてはこれ以上ない面白い展開。

 そして、それを作ったのは久喜西のバッター陣。早打ちがなくなり、狙い球をストレートに絞っている空気が読み取れた。

 もしかして空気が変わったかもしれない。久喜西は全員がベンチから立ち上がり応援している。チーム一丸となって勝利を望むその姿、甲子園の熱戦を見ている既視感と重なり、わたしの胸が熱くなる。

 

 だけど、選手たちや、わたしの期待に反して後1本が出ず、三者残塁で0-2のまま久喜西の負けとなってしまった。

 両チームの選手がグラウンドに駆け集まり、一礼をして試合終了となった。

 

 わたしはラストバッターとなってしまった選手の記録をスコアブックアプリで確認した。三振が二つで、今日はタイミングが合ってなさそうだった。だから余計に思った。最後、代打で起用して欲しかったかなぁ・・・ランコーの子。

 わたしは役目を終えたタブレットを閉じてバッグにしまった。

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