7話 出会いの人 (2)
「なつき、間違いなくなつきにとっての新しい出来事じゃよ。」
「やっぱり、そうだったんだね。予言してたおばあちゃんがいちばんすごいよ」
わたしは予想していたおばあちゃんの返事に、身体が高揚していった。
「ふぉふぉふぉ。じゃがのう、その矢上君という子。もしかしたらじゃが、出会いの人なのかもしれんのう。」
おばあちゃんのその言葉を聞いたとき、わたしの胸は一瞬だけひりりとした。
“出会いの人”その響きには、たしかに怖さと期待が入り混じっていた。
「矢上君が?出来事だけじゃなくて、新しい出会いもあるってこと?」
「そうじゃ。何もどちらかだけとは限らんよ。まぁ、一期一会となるのはせいぜい1つや2つじゃがな。」
少し意外だった。もう十分すぎるほど大きな変化が出ていて、ものすごい力をもらっている感じがする。
新しい出会いによってわたしはどう変わるんだろうか。なんとなくだけど、そう都合よくとんとん拍子で良くなるとは思えなかった。プロ野球でも、1点差に追いついたのに、また突き放される展開なんて何度も見てきた。
ーー仲間は多い方がいいと思うのよ。チーム「今も好きな人」
もちろん、優美さんのことは信じているし、じぶんも矢上君を一目見てみたいとは思う。だけど、直感的な不安は取り除けないでいる。
「おばあちゃん、新しい出会いって、わたしにとって悪いことってある?」
「なつき、そう身構えんでもええ。今年いっぱい、なつきの運気は底なのじゃ。底に落ちて行く途中だったら悪い出会いも考えられるが、いまは良くなる出会いしかない。」
不安を否定するのではなく、前を向いていい理由を与えてくれた。
「ほんとに?いま、良くなってるってじぶんでも分かるから、良いことが続くなんてないんじゃないかなって。なんか不安で」
わたしが面倒くさい返事しちゃったからなのか、珍しくおばあちゃんの返事が遅かった。
「なつき、大事なことだから良く聞くんじゃぞ。」
「うん」
わたしは安堵して、改まって正座するとおばあちゃんの言葉を待った。
「なつきにとって良いことがあったのは間違いない。じゃが、閉じ籠ってばかりでは、本当の新しいなつきには出会えんよ。それにな、不安っていうのは行動しなければ一生解消されんのだよ。」
はっと気づかされた。今日のために笑顔の練習したり、コスメ試したり頑張っていたんだった。それは決して閉じ籠っていたわけではない。
それに不安は悪いものじゃない。それはこれから先へ進むための勇気の欠片なんだ――そう思えた。
「うん、分かった。じゃあ、やっぱり矢上君の試合、観に行った方がいいと思うかな?」
問いかけた自分の声は驚くほど落ち着いていた。
不安が消えたわけじゃない。だけど、それと向き合える昨日までいなかったじぶんがいた。
「うむ。何も話しかける必要はない。それに気になるんじゃろ、誠君にとって特別だった矢上君が。」
「うん、そうだね。ありがとう、おばあちゃん。行ってみる!」
心を込めて伝えたその言葉には、揺るぎない感謝がこもっていた。
「礼を言うのはちと早いぞ。なつきも前に進めるようになるまで、もう少しじゃろう。頑張りすぎるんじゃないぞ。」
わたし”も”前に進む?何のことを指して言っているのか、わたしには分からなかった。
「うん、また報告するね」




