6話 今も好きな人 後編 (2)
「どの子だろう。ファーストのうまかった子かなぁ」
「ううん。矢上君はね、ベンチだったのよねぇ。6年生になったら少年野球、辞めちゃったし・・・」
意外だった。まこっちゃんの親友なら、てっきり野球も上手な子だと思い込んでいたから。
「でもリトルシニアに入ったんですね」
「そうなの。入団テストがあるような強豪じゃないんだけどね・・・・。ねぇ、なっちゃん、矢上君のこと、観に行ってみたいって思わない?試合日と球場はネットに出ているの」
「えっ・・・。まこっちゃんの親友・・・どんな人か、少し気になるかも」
一度少年野球を辞めて、なぜまた始めたんだろう。でも、興味が湧いたのはそこではなく、彼が”まこっちゃんの親友”だったから。その事実だけが、わたしの心を突き動かしていると思う。
優美さんはわたしの視線の先にあった写真立てを一つ手に取ると、指を差した。
「あのね、この子よ」
笑顔のまこっちゃんと肩を組む、一人の男の子。記憶には全く残っていない顔だった。
「2年近く前の写真だから、今は随分変わっているわよ。背も伸びて、体つきも大人っぽくなって。会うたびに、見違えるくらい格好良くなっていてね」
少し熱っぽく語る優美さんの姿は、かつて全力でまこっちゃんを応援していた頃の姿と重なって見えた。
その時、ふわりとお線香の香りが鼻をくすぐっていった。
「そういえば、その・・・もしかしたら矢上君も今日ここに?」
「あれ、私、言ったっけ?・・・うん、そうなの、お昼前にふらっと来たのよ」
「よく来るんですか?」
「そうね、月に1、2回はきてるのよ。連絡もなしに突然ふらっと来て、お線香上げたらすぐ帰っちゃうんだけど」
えっ、うそっ、月に1、2回?わたしと同じか・・・それ以上なの!?




