4話 切れそうな糸 (3)
でも、どれだけポジティブに思ったところで、状況は少しも好転しなかった。むしろ、日々はゆっくりと積み重なるように悪化していった。
朝、目が覚めた瞬間から、胸の奥に重い鉛のようなものが沈んでいた。
私服に袖を通すたび、「今日も行かなきゃ」と思うだけで息が詰まる。
それでもまこっちゃんに制服と笑顔を見せる、その想いだけでなんとか登校する。
学校に着けば、無理に笑顔をつくり席に着く。だけど授業内容は頭に入ってこなくて、休み時間にはからかわれ、休まる暇なんてなかった。
午後には朝の勢いが剥がれ、表情も心もどんどん沈んでいく。
「もう、頑張れないかも」――そんな言葉が喉元まで上がってくるのを、必死に押し込めていた。
それに最近、体がだるい日が増えた。階段を上がるだけで息が切れ、教室の明るさが眩してふらつくこともあった。
まこっちゃんのこと以外で、涙がこぼれる夜が増えた。
そしてついに、ある朝、「今日は学校、休みたい」とお母さんに言ってしまった。病気じゃないのに。理由なんて説明できなかった。
その一日を過ごしたあとは、自分を責めた。“サボった”という罪悪感が、さらにわたしを追い詰めた。
「甘えてるだけじゃないの」
「こんなことで将来どうするの」
「まこっちゃんはどう思うんだろうね」
自分の中にいるわたしが容赦なく言った。
そんな毎日の記憶しか残らなかった6年生が終わり、小学校を逃げるように卒業した夏希は地元の公立中学校に進学した。
クラスは5つ。かつての小学校の仲間は分散し、花音や咲とは当然のように別のクラス。
新しい教室で名前を呼ばれた時、返事が震えてしまっていた。




