3話 逆風 (3)
男子のからかいは定期的に繰り返されていた。
しかも今度は、お父さんの存在までが“ネタ”になっていた。お父さんは地元の少年野球の監督をやっていて、男子の何人かは教え子だった。
お父さんはよく口癖で「気合い入れろ!」と言うけど、反対にわたしが気合いゼロなのを面白がっていた。
それを見て、やりすぎだとわたしの代わりに担任に話してくれた子がいた。けれど効果はゼロ。
だって担任は石川先生だから、予想はついていた。算数とコンピュータが専門の男性教員で、生徒の相談に乗るなんて全然しないって有名。
みんなが慕う青木先生とは、全然違った。仕事として先生をやっている感じが強くて、人気もなかった。
クラス替え、男子のからかい、苦手な担任。
何もかも、わたしには都合が悪い。
おばあちゃんは「受け入れるしかない」って言ったけど、耐えられそうにない。
むしろ、ダメージがどんどん蓄積していくのが自分でも分かる。
だから学校のことを忘れようと、帰宅したらタブレットで野球を観る日々。
大好きな野球だけが、嫌なことを忘れさせてくれた。時間も流れてくれて、無気力なわたしには救いだった。
でも、レオネスの調子もずっと悪かった。開幕から最下位を続けているのは、初めての経験だった。監督が6月に退任して新監督になったけど、結果は変わらなかった。
それにホームで勝ったとしても、ヒーローインタビューまで観る気になれなかった。
ヒーローに選ばれた選手を見て、どうしてもまこっちゃんを重ねてしまう。そして、隣に立つインタビュアーの姿に“あのころのわたし”が映る――そんな想像を何度もした。
あの日が来るまで、わたしはまこっちゃんとの壮大な夢を何本も立てていた。
完勝、接戦、0対0で延長、サヨナラ勝ち――。
そのどれでも“勝利投手まこっちゃん”が映っていて、質問を投げかけるのはわたし。
お気に入りはヒーローインタビュー中に、まこっちゃんが勝利ボールをわたしに差し出してくれるの。その度にドキドキして、顔が赤くなった。
その恥ずかしいくらい好きだった想い。
でも、もうまこっちゃんの夢は叶わないし・・・わたしの夢も叶わない。
チャレンジの前に結果が出てしまった――ううん、チャレンジ1歩目、1回表で終わってしまったんだ。
いま思い返せば、まこっちゃんとの日々はすごく貴重で幸せだったんだなって思う。――とても、幸せだった。
だから、正反対のこの苦しさが身体に染み込んでわたしの全ての奪っていく。




