3話 逆風 (1)
おばあちゃんのおかげで、ほんの少しだけ心が軽くなった気がした。けれど週明け、その気持ちはすぐに現実に引き戻された。
「なあ、藍川って、なんかいつもくれーよな」
「マジで負のオーラ出てるぜ」
男子たちの笑い声が、教室の端からじわじわと広がっていく。
数人だけが笑っているのに、その場の空気がクラス中へと伝染し、どんどん冷えていった。
わたしはその男子を避けるように黒板に視線を向け、何も言わなかった。
「夏希ちゃん、気にすることないよ。あいつらただのガキだから」
花音ちゃんと仲が良かった咲ちゃんが声をかけてくれた。
「うん、ありがとう」と返したものの、胸の奥のモヤモヤは消えなかった。
男子のからかいは午後も続いた。
「おーい、聞こえてんのかよ。なんか機嫌悪い? うち、お前ん家の果物買ってるオトクイサマだぜ、話ぐらい聞けよな」
その言葉に、肩がぴくりと動いた。
最悪。何で、そんなこと言うの。うちのお店とわたし、どう関係があるっていうの。
自営業の生まれだから、多少の噂やからかいは全くないってことはない。でも、小6になってまで、子どもじみたことを言われるなんて思いもしなかった。
給食後の昼休み。男子がまた思い出したかのように絡んできた。
「藍川~。いつも目、死んでるぜ。おまえんちでも売ってるけど、目にはブルーベリーが良いらしいぜ!」
アハハとたちの悪い笑い声が響いた。
我慢できずにその男子を睨んだ。
「あいてしちゃ、ダメ。っもう、花音ちゃんがいればあんなやつら一発なのに」
咲ちゃんがそう言って肩をすくめた。わたしも大きく息を吸い、苦笑いを返した。
「うん、そうだね」




