1話 深海 (1)
わたしは夏が好きだった。
わたしにつけてくれた名前にもある夏。
夏はものすごくあついけど、おそい時間まで明るいから友達と長く遊べて好きだった。
学校のプールの水面がキラキラと光っているのもきれいで大好きだった。
つばが広くて白の麦わら帽子をかぶり、水色のワンピースと合わせるのが夏の間のお気に入り。
わざとその恰好でお店の手伝いをすると、馴染みのお客さんから「あら、かわいいお嬢ちゃん」って褒められてすごく気持ちが良かった。
うちのお店で売っているくだもの。それも大好き。
夏に食べるスイカやブドウがいちばん好きだった。
スイカの種を器用にスプーンでかき出すのが上手だと、大好きなおばあちゃんによく褒められた。
ブドウの品種をスラスラと披露すると、物知りだと家族のみんなが驚き、褒めてくれた。
お父さんがいつも夕飯で見ているプロ野球中継でも、わたしは得意げにレオネスの豆知識を解説していつも上機嫌だった。
毎日が楽しくて楽しくて仕方がなかった夏。
だから大好きだった。
そうなの、夏が好きだったんだな、わたし。




