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大城由佳

大城由佳は、生まれて初めて友達の家を訪れた。由佳は、昔ながら霊感や嫌なものを感じたり、この世のものではない何かを見ることが出来た。そのせいか周りからは、変わった子や暗い子だと見られてきた。由佳は、そんなこと別に気にしてはいなかったし、友達が出来ないことも寂しくなかった。だけど、女子中学生になり友達が一人出来た。大橋沙月は、由佳にとって初めての友達だったし親友と言えるぐらい仲良しだった。由佳の母親も、家に沙月を連れて来た時、とても喜んでくれた。そして、今度は由佳が沙月の家に遊びに行く約束をしたのだった。


数日後、由佳が家を訪れると沙月の部屋に案内された。それから、沙月の母親がお茶やお菓子を持って来てくれた。由佳は、部屋に入ってからずっと机の上に置かれてる黒髪の女の子の日本人形が気になっていた。ただの日本人形ではなくて嫌な感じがしたからだ。

「ねえ、その日本人形ってどうしたの?」

由佳が沙月に訊いた。

「ああ、これね!」

沙月が答えた。この日本人形は、沙月達がこの家に引っ越してくる前からずっとこの家にあったらしい。前にこの家に住んでた人が置いていった人形みたいだ。

「なんか、可愛くてこうして机に置いてるの」

沙月が笑顔で言った。

それを聴いて、由佳は不安を感じていた。何か嫌なものを感じ取れる体質を、由佳は初めて沙月に話すことにした。それを聴いて、沙月は、日本人形を手に取った。

「こんな可愛いのに、どうして危ないの?」

沙月が日本人形を見つめたまま言った。

由佳にとってその日本人形は可愛いとは思えなかった。だから、沙月が言ってることが分からなくて怖かった。その時だった人形の目が由佳の方をギョロっと睨んだ。由佳は悲鳴をあげて、沙月から後ずさった。

「どうして逃げるの?日本人形に失礼でしょ」

沙月が突然、声色を変えて言ってきた。まるで、日本人形に感情があって傷ついてしまうという感じだ。気づけば、日本人形が沙月の両膝の上に立っていた。由佳は震えていた。パニックになっている。

「ふふふふ」

日本人形が不気味な女性の声で笑った。

由佳は急いで部屋を出て、玄関へ走った。途中で、沙月の母親が声をかけてきたが、振り向きもせず外へと逃げ出した。由佳は、家に帰ると自分の部屋のベッドで怖くて動くことが出来なかった。夜になり、ご飯の時間に母親が声をかけに来たが食欲が全くなかった。風呂も入らず由佳はそのままベッドで眠った。


夜中に、由佳は目が覚めた。気配を感じる。あの日本人形が部屋にいるかもしれないという不安が襲う。部屋は静かだ。由佳がベッドで少し動くと、その音がうるさく聞こえる。見渡しても、日本人形はどこにもいなかった。

「気のせいか••••••」

由佳は、安心するとまた眠った。


朝になり、由佳は不安を抱いたまま学校に向かった。由佳の頭は、日本人形と沙月のことでいっぱいだった。今日、沙月は学校に来るだろうか?昨日の沙月は一体何だったのだろうか?気づくと、由佳の前を誰か歩いている。後ろ姿だが、それが沙月だと分かった。由佳は、まだ少し学校まで距離があるので、声をかけるか迷った。だけど、怖くてなかなか声をかけられずにいると前を歩いている沙月のカバンから何かが頭を覗かせた。由佳は、その瞬間驚きで心臓が飛び出しそうになった。日本人形が勝手に、カバンから頭を出してこちらを見ているのだ。日本人形は、何か持ってるようだがカバンに隠れて見えない。由佳は、その場で足を止めて、じっと沙月の後ろ姿を見ていた。恐怖で足を動かせない。でも、学校に行って沙月に話をする必要があった。沙月がこのままでは、危ないと思い由佳はなんとか足を一歩踏み出した。


大橋沙月は、その日はまるで別人だった。クラスの皆からも不審な目を向けられていた。沙月の顔は、生力が無く痩せてしまっていた。由佳は、勇気を出して沙月に近づく。由佳が声をかけるが、沙月は俯いたまま返事をしない。沙月を引っ張りだして、話したいとこだけど相手が話す気が無いのだとしたら無理やり連れ出すのは良いとは思えない。学校が終わった時に、声をかけてみようと由佳は考えた。まさか、沙月がこんな姿とは思わなかった。そして、日本人形のことも気になっていた。日本人形はまだランドセルに入っているのだろうか?自分を狙っているに違いない。由佳は、沙月から離れて自分の席に座った。由佳の席から沙月の席は遠い。だけど、沙月の様子を見ていられる。


授業中、由佳は急にお腹の痛さに襲われた。今は授業中だし、もしトイレに行ってしまったら日本人形に襲われる危険だってある。日本人形は、間違いなく自分を狙っている。それなら、昼休みの人が多い時にトイレに行った方が良い。だけど、お腹が痛いのは治まりそうにない。由佳は、先生に伝えると女子トイレへと駆け出した。


しばらくして、由佳がトイレをすませ個室から出ようとした時だった。トイレの入り口から音がした。まさか、日本人形が!由佳は、不安になった。扉を開けられず、その場で震えた。やっぱり、トイレ行くのを我慢していれば••••••。由佳は後悔した。

「由佳?ねえ、いるの?」

聞こえてきたのは、沙月の声だった。

由佳は、一気にほっとした。

「う、うん」

由佳が返事した。

「心配だったから、先生に言って様子見に来たんだ」

沙月が続ける。

「昨日は怖い思いさせてごめんね。由佳が帰った後ずっと謝りたかったの。許して」

沙月が言い終わる。

「私、怒ってなんかいないよ。ただ沙月のことが心配だったの。それだけ」

由佳が言う。

「じゃあ、もう出てきて。先生が心配するよ」

沙月が言うと、由佳は扉の鍵をあけた。そして、扉を開く。しかし、誰もいない。由佳はおかしいと思い、一歩前へ個室から出た。その時、後ろに激しい痛みを感じた。由佳は、そのまま、倒れた。何かが自分の背中から降りてくる。そして、目の前に姿を現した。

「嘘••••••日本人形」

由佳は、もう動く事が出来なかった。目の前には、包丁を持った日本人形が立っている。

「ふふふふ」

不気味な女性の笑い声が日本人形からする。

「沙月は、教室だよ。騙されたね!」

日本人形が喋る。

由佳は、信じられなかった。確かにさっきのは、沙月の声だった。

「そんな••••••」

由佳の目から涙がこぼれた。

「私のことを知ってしまったからには、邪魔者のあなたには消えてもらうよ」

日本人形が冷たく言い放った。

由佳は、最後の力を振り絞って言った。

「沙月だけは••••••見逃してあげ」

由佳の頭に、包丁が刺さった。由佳は死んだ。日本人形はしばらくその死体を見ていた。不気味な笑みを浮かべて。そして、その場から去った。


由佳の死体は、すぐに学校中で騒ぎになった。学校はしばらく閉鎖になった。大橋沙月はそれ以来、不登校になった。


一ヶ月が経った真夜中だった。

沙月の家に、照明がついていた。

「さあ、まだまだ私と一緒に遊びましょう!」

日本人形が言った。

日本人形の前には、ソファにもたれかかっている沙月がいる。沙月には、もう話す力は残っていない。体全体は、搾り取られたかのようにガリガリになってほぼ骸骨だ。家の階段には、沙月の母親の死体があり通路には父親の死体がある。二人は日本人形に殺されたのだ。日本人形は、沙月のことが気に入ってる。

「ふふふふ」

日本人形は不気味に笑った。

                   終



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