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眠りの皇子様
通されたのは、城の最奥――“沈黙の間”と呼ばれる、魔封じの隔離空間だった。
大理石の廊下を抜けたその先の扉には、幾重にも魔法陣が刻まれ、強い結界が張られている。
空気が重く、冷たい。
「……ここに?」
「中に入った者は、皆、同じ症状にかかった。すでに数名が昏睡している。今は誰も近づけない」
「へー……それじゃ、なおさら私が行くしかないね」
「待て、結界はまだ――」
オルガは騎士たちの静止を聞かず、すいっと扉に手を触れた。
次の瞬間、扉の結界がふわりとほどけて消える。
「えっ」
レオニダスとゼーレの目が見開かれた。
「魔法師さんたちとはちょっと魔力?の種類が違うの。うーんと、説明できないけど。
だから結界は素通りできちゃう。」
オルガはそう言って、扉を押し開けた。
しん……と静まり返った部屋の中に、彼女の足音だけが響いていく。
――そして、そこに、皇子が眠っていた。