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花咲く手には、秘密がある 〜エルバの手と森の記憶〜  作者: ソニエッタ
王宮の毒花と森の片隅のお花屋さん

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営業再開2

強面の冒険者をダンジョンへと見送り、ようやくオルガは一息ついた。


両親――母マーシャと父トリスタン――からこの花屋を継いで、もう五年になる。両親が失踪するまでは、ここは普通の花屋だった(オルガ自身は今もそのつもりでいる)。けれど今は、花よりも彼女が生成した種から育った草や花、実などを目当てに、冒険者たちがやって来る。


オルガの両親も植物を育てる力はあったが、種を生み出す力までは持っていなかった。

ある日、母方の家系に伝わるという「生成本」を、オルガがなんとなく試してみたところ――種ができた。埋めてみたら、芽が出た。それがすべての始まりだった。


ただ、それが本当に「生成本」に書かれていた通りのものかどうか、確かめようがない。仕方がないので、ギルド長のマッシモを半ば強引に生贄にして、いくつか試し、毒の花や眠り草を生成しては、彼を再起不能に陥れた。マッシモ曰く、「もうあんな思いは二度とごめんだ」らしい。

それでも今となっては、良い思い出である。


そんなことをぼんやり思い出しながら庭先に目をやると、数日前に畑を荒らしたと思しき白いカラスが、また来ているのに気がついた。


「あー、数日前のカラス!よかった、生きてたんだ。美味しかったからまた戻ってきたの?」


オルガはそう言いながら外に出て、小皿に体力の実をいくつか載せて、そっと地面に置いた。


白いカラスはそれを見つけると、一目散に駆け寄り、実をひとつ咥えたかと思うと、そのまま勢いよく飛び立っていった。


あっけにとられて見送っていると、どこからともなくふわりと、食欲をくすぐる香りが風に乗って漂ってきた。

振り返ると、遠くの道からセレンがこちらへ向かって歩いてくるのが見えた。

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