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花咲く手には、秘密がある 〜エルバの手と森の記憶〜  作者: ソニエッタ
王宮の毒花と森の片隅のお花屋さん
26/51

営業再開

王宮の馬車は、まるで空を飛んでるかのように揺れ一つなかった。

窓の外をぼんやり眺めながら、オルガは呟く。


「王宮の馬車ってすごいなー……買ったらいくらするんだろ」


呑気にそんなことを思っているうちに、あっという間に見慣れた街並みが目に入ってきた。

 

ここ数日、ドタバタ続きでまともに寝ていない。畑に水もやれていない。それを思い出して、オルガはちょっと恨めしげにレオニダスの顔を思い浮かべる。


(あいつにわらいダケでも食べさせてやろうかな)


 そんなことを考えているうちに、馬車が家の前で止まった。花屋の前には、なぜか数人の見慣れた顔。しかも、そろいもそろってカタギには見えない。


「おーい! みんなごめんね! 今日ちょっと拉致されてて留守にしてたの!」


 ひらりと馬車から降りたオルガが軽く手を振ると、たむろしていた強面の男たちが、殺気を帯びた目で御者を睨みつけた。掴みかからんばかりの勢いだ。


 だが当の本人は、そんな空気にまるで気づいていない。店の鍵を開けながら、のんびりと話しかける。


「ごめんごめん、バタバタしちゃってさ。朝起きたら馬車が待ってるんだもん、断る暇もなかったよ。えーと、カエサルのオーダーはいつものだよね? はい、これ」


 S級冒険者――この街では珍しいランクの男、カエサルは、ごつい手で「体力の実」を受け取る。その顔には似合わぬ、心配げな表情が浮かんでいた。


「オルガ、ギルド長から聞いた。今、王族絡みの依頼受けてるって……大丈夫なのか? 脅されてたり、危ない目に遭ってないか? お前がいなくなったら、俺たちの冒険者生命なんて終わりみたいなもんだ。何かあったら、何でも言え。王族だろうが誰だろうが、俺たちがぶっ飛ばしてやる」


「そうだそうだ! 俺らみたいに回復魔法が効かない体質は、下手したら一撃で終わりなんだ。ダンジョンで怪我したら、その場で終了だぞ? オルガの体力の実がなきゃ、生きて帰れた日なんて数えるほどしかなかったんだからな。あれ、潰して傷口に塗ると嘘みたいに治るしよ」


 傍から見れば完全に強盗団が押し入ったような光景だが、顔が怖いだけで、みんな中身はやさしい。


「融通はきかないけどさー(特に仏頂面の騎士が)、危ない目にはあってないよ!依頼もちゃんと達成したから(たぶん)もう大丈夫、だと思うよ!」


 オルガの言葉に、冒険者たちはようやくほっと息をついた。


 彼らは、回復魔法の“魔力”を拒絶してしまう体質を持っている。そのため、一般的な回復手段が通じず、命がけの冒険を続けるのは常にリスクと隣り合わせだった。

 そんな折、風の噂で「体力の実」の存在を知り、この街までやってきたのだ。

 彼らにとって、オルガはまさに命の恩人だった。


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