表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花咲く手には、秘密がある 〜エルバの手と森の記憶〜  作者: ソニエッタ
呪いの皇子と森の片隅のお花屋さん
2/70

帝都の城へ

馬車ががたん、と大きく揺れた。


 


「わっ、こぼれた。あーあ、せっかくのスープが……」


 


オルガはひらりとスカートをたくし上げて、膝の上にこぼれた朝食の残骸を気にするでもなく、ぐいっとスプーンを突っ込んでそのまま飲んだ。


隣に座るレオニダスは、鎧の肩がピクリと動くのを自覚しながら、できるだけ視線を合わせないように外を見つめている。


 


「……食事を馬車で取るのは推奨されていない」


「え、そうなの? 知らなかった〜。でもさ、お腹すいてると動けないタイプなんだよね、わたし。力が発揮できない気がする」


 


レオニダスの眉がぴくりと動く。


 


「”エルバの手”の力は、食事によって増減するのか」


「うーん、わからないけど……“気分”? 気分が乗らないとダメかも」


 


「……」


 


たぶん理解していない。

というか、納得してない。



「まあ、見てもらえば早いよ。あ、ほらほら、街の門だ。すごーい! 帝都って、やっぱ広いんだね〜」


 


窓の外には、石造りの高い門と、衛兵たちの整列する姿。朝日を受けた城壁がきらめいている。


その向こうに、王城の尖塔がそびえ立っていた。


 


オルガの目がきらきらと輝く。


レオニダスは、なんだか遠足に来た子どもを連れている気分だった。




***



「そちらの者は、許可証を……って、レオニダス副団長!? ご、ご無礼を!」


 


門前で待っていた衛兵が慌てて直立し、背後の門がゆっくりと開いていく。


馬車は城内へと滑り込んだ。


 


「お前が“その者”か」


 


門のすぐ先で待ち構えていたのは、青いローブをまとった壮年の男だった。


銀縁の眼鏡に、ぴっちりと結い上げた白髪。魔法師団の筆頭、ゼーレ=ハルト。


 


「……見たところ、ただの村娘にしか見えんな」


 


「花屋です。草いじりしてます。こんにちは」


 


オルガが笑顔で手を振るが、ゼーレの視線は冷たいまま。


 


「このような素人に頼るなど、帝国の威信に関わる。私が最後まで責任を持つべきだったのだ」


 


「全部やってダメだったから、私のとこ来たんでしょ?」


「……ッ」


 


一瞬、ゼーレの眉がぴくりと動いた。


オルガは、レオニダスの背後に立って彼を見上げる。


 


「それで、どこにいるの? その皇子さま」


「案内する。禁域の奥だ」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ