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第92話 死によるチート

――レイ救出後の旧校舎廊下――




「ラナ!......まだ来る!」


「こ、校舎が縮んで......なによこれ!」



 ラナがそう言いかけたその刹那──異変は、もう起こっていた。

 旧校舎から見えたはずのビッグベンが消失。肉眼での確認は不可能となっている。

 中庭の向こうには紫の霧が立ち込み、耳鳴りのような不快な金切り音が周囲に響き渡る。


 すると野菜とお肉のコンビ二人が、震えた声で叫ぶ。



「なんだとこれぇ!?僕たちも把握してない!」


「いや......死にたくないぃぃ!」



 ……え?登場前はすごい強者感を出しておいて、この有り様?

 まぁ今はいいとして、一つ確かなのは現状が芳しくないということだ。



「旧校舎周囲の空間そのものを、丸ごと圧縮してるのか......」


「校舎ごと!?広範囲の空間圧縮なんてどんな怪異よ!?」



 私の転移の異能”従刃転移”なら抜けられる可能性は高い。

 だが、拘束した二人にそれを見せるメリットはない。あくまで最終手段だ。


 ならば……”模倣”の手持ちを”条理超越”で“使える形”に書き換える。

 圧縮そのものへ、こちらの法則を被せる。



「怪能中和結界・発動。」



 ”模倣・怪装抑圧”×”条理超越”×”回生と融合”×”護光結界”


 圧縮される空間に“怪能中和結界”を重ね、上から無理やり上書きする。

 初めて作ってみた組み合わせだが、全く押し潰される気配はない。

 もちろんこのまま破ってしまうこともできるが...... 実は1つ、物凄く試したい事がある。



「ラナ.....”異能・歪界虚曲”を発現して。」


「は、はぁ!? んな異能ないわよ!ボケてるのかしら!?」



 ラナは激しく反論するが、私の”完全看破”は嘘を吐かない。


 加えてそれだけじゃない......

 ”戦装・炎龍”の等級が純白へと上がり”戦装・炎龍王”へと進化している。



「ラナ......また新しい異能が目覚めたみたい。」


「は?」


「ラナの異能......増えてる。」


「本気?だとしたら我ながら最高ね。」




 前回の限界突破といい、短期間で異能は二つも増えた?

 これはラナ以外では観測されていない現象......この私でさえ異能が増えた経験は無い。


 もしかするとこれこそが、ラナに与えられた才なのかもしれない。

 極限の状況下で新たなる異能を発現する......資質だ。物語の中心に立つ主人公の性質に近い。



「多分ラナなら数分で知覚できるとおも......」


「もうできたわ。これなら確かに破れるんだから。」


「えぇ!?僕ちゃん凄い歴史的なヒストリーに立ち会ってるんじゃ!?」


「うん......それに関しては、最強の私でさえ同意する。」



 ――新異能・歪界虚曲。

〈完全看破〉で視るだけで分かる......これは、恐ろしいほど強力な異能だ。


 端的に言えば、物理法則そのものへの干渉。

 空間を歪曲させ、存在するあらゆるものに“ノイズ”、綻びを発生させる”異能・歪界”。

 そして指定した対象の“認識そのものに、”ズレを生む”異能・虚曲”の二つからなる複合異能だ。


 空間と認識、その両方へ同時に作用するこの異能の等級は”白銀”。

 回避・防御・攻撃のすべてに応用できるうえ、ラナの〈空間断絶〉と組み合わせれば......


 ぼぼ反則級の超攻撃を繰り出せる――



「やっと.....やっと見えてきたわ。」


「うん、まだまだだけど、待ってるね?」


「えぇ、見てなさい。すぐに追いついてやるんだから!」


「ストォップ、ストップ!ハ二ーたち!早くこの状況どうにかしないとよ!?」



 確かに。

 依然として私の結界が破られる気配はないのだけど......

 確かに無駄話で和やかな雰囲気を出している場合ではなかった。


 私はラナへ視線を送る。



「どうぶっつけ本番......扱える?」


「問題ないわ。最初から持ってたかのように自然なんだから。」


「さっすが~私の次点!」


「バカね......相棒よ。」


 ラナは静かに目を閉じる。

 並みの術士には分からないだろうが、私にははっきりと感じ取れる。

 彼女は周囲の空間へ自身の異能を押し広げているのだ。



「いけそう?」


「もう終わったわよ?綻びは作った。あとはこれをぶっ壊して終いなんだから!」



 そう言い切ると同時に、ラナは空間断絶を放ち”私の結界に”巨大な亀裂を作り出した。


 だが、それだけじゃない。

 空間断絶の刃はさらに奥......圧縮の境界へと到達し、上空の雲すら引き裂いてみせる。

 結果として巨大な亀裂が走った結界は、割れた風船のように勢いよく弾け飛ぶんだのだ。



「力を抑えたとはいえ......私の結界を斬るなんてやるじゃん。」


「当然よ!!あたしはいつか、朔月を超える超天才なんだから!!」



 抑え込まれていた二人が、呆然とした声を漏らす。



「一体何が......」


「もうあたし達には訳わかんないよぉ......」



 どうやら中和結界を斬られた反動で二人の拘束が少し緩んだらしい。

 この程度で出力がブレるとは、私もまだ、練度と集中力を上げなければ......



「レイ?もう異能は使える?」


「バッチシだよハニー達!!」


「異能使えるだけで怪我はそのままよ!でも随分元気そうね??」


「アハーン!流石ドラゴンハニー!僕の異能で主要な血管は全て直したよん!」



 ……相変わらずの再生速度。

 それにしても“ドラゴンハニー”って……ラナのこと?

 龍装系の異能を持つ女性術士は他にもいたはずだけど、そっちはどうやって呼んでんの?

 するとラナが呆れた声でレイに返答する。



「相変わらずゴキブリみたいな生命力なんだから.....」


「ラナにだけは言われたくないと思う......」


「ムーンハニーに激しく同意だぜ☆」


「こんな変態と話すだけ、時間の無駄だわ。とっとと帰るんだから!!」



 ラナは全てを放棄した軽蔑の目線のまま、踵を返す。

 だが、その態度にすら――



「アハーン。辛辣ジーザス!!」


 ……どうやら罵声でも興奮できるらしい。


「絶対言葉の意味違う......」


「古の古い古代言語さ!」


「取り合うだけ無駄なんだから......」


「ゴホンッ....とにかく待機させといた専用ジェットでFCTまで送る。」



 私は学園の後始末を、市内に待機していた最上位退怪術士へ引き継ぎその場を離れた。





☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★



 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 ここまで読んでくださりありがとうございます!


 死からの帰還を果たしたラナに刻まれた新しい異能。

 それはまさに、受肉生命という意識の外側に出たことで悟った異能。


 次回:セラフィアを匿う四川省地下基地に向かうのだが......


 面白い、続きが気になる!と思った方は”いいねで応援”してくれると嬉しいです!!

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