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第90話 ”怪異の神”の召喚儀法




 ――衝撃の発言が二人の口から飛び出した。



「怪異の神......その神聖完全体の顕現方法とか......」


「んな!?」


「!?」



 怪異の神が“完全体ではなかった”──その情報を公開したのは、これまでラナにだけだ。


 あまりにも絶望的で、あまりにも救いのない事実。

 人類が知れば容易に集団パニックを起こしえる。

 しかし目の前の二人はその事実を認知しており、それだけで彼らの言葉に重みが生まれるほどだ。



「怪異の神は、元々高次元に住む異界の魔王......らしいです。そしてそれ故に地球に住む存在とは物理法則が違うんです。」


「怪異の神は文字通り怪異達にとっては神であり、本来崇拝の対象でしかなくその、本来、相互干渉できない存在なんだとか......」



 うん......?どうにも話が見えてこない。

 しかし半世紀前に廃れた信仰宗教の残滓にも似て、どうにも馴染みが薄い。



「人間でいう所の宗教の”主神”と同じってわけね......。感じることはできても、会話したり姿を視認したりはできない。そういう認識ね?」


「はい......そうです。結論から言えば、怪異と”怪異の神”は全く別種です。」



 私が首をかしげているのを察してくれたのか、ラナは簡単な例えで確認してくれた。

 だけどそうなると──不完全とはいえ、怪異の神と殴り合えた私は何なの......?



「それが......何故だかその次元の境界線が崩壊し、行き来できるようになってしまったんです。」


「僕たちにも理由は分かりません。そしてFCTも紛失した極秘の映像には......その怪異の神が何かに倒されたように見える映像があるんです。」


「は......?待ってどういうことかしら? 怪異の神が11秒しか確認されていないのは......」


「消えたのではなく、何かに倒された......これを僕らは仮名”守護神”と呼んでいます。」



 ──これは間違いなく、ルシア様のことだ。


 怪異の神と対峙した際、奴はルシア様の名を口走っていた。

 恐らく地球次元のバランスを保つため、ルシア様が怪異の神を殲滅したんだ。


 しかし......ルシア様もやはり上位存在だと再認識せざるおえない。

 あの方は私たちが滅びかけていても、何も助け船は出さなかった......

 彼女にとって怪異の神の殲滅は”人類の手助け”ではなく、地球の均衡を保つための業務でしかない。



「さらに......僕たちは怪異の記憶を、映像として抽出する技術を保有していました。」


「そこにあったのは......何者かが、世界の境界線を壊しバミューダトライアングルに穴を空けた記憶でした。」


「なら......バミューダトライアングルの下には、怪異達の世界があるってことかしら?」


「さぁ?......その答えを知る前に、僕たちの組織.....壊滅しましたから!」


「嫌味かしら!!!」



 言葉は軽く聞こえるけど、二人の表情はその真逆だ。

 バミューダトライアングルの“大穴”は現在、とある異能者によって完全封印されている。

 もし本当にその下に怪異の世界が存在するのなら──いずれは総戦力で乗り込む日が来るかもしれない。


 しかし1つ、どうしても拭えない疑問があった。


 ──なぜ怪異の神を、地上で呼び出す必要があったのか?

 状況的に見て2025年の出現時は、大穴の中から出てきたはずなのだが......?



「ここからは怪異の神の現界方法です。”怪異の神”出現には四大超怪異の存在が必須なんです。」


「なぁるほど?この学園の情報をFCTにリークしたの.....あんたたちってわけね?」


「この学園に四大超怪異がいる可能性がありました......」


「本当にごめんなさい......私達、寒熱のレイ様を助けず放置しました。絶対にムーノが派遣されるように......」



 寒熱のレイを助けなかった──

 その意味は一つ......二人は“救える位置にいた”ということなんだろう。

 しかし四大超怪異を確実に撃退するために、あえて”寒熱のレイ”を助けずに見殺しにした。



「殺すには十分な理由じゃない。話し終わったら覚悟しなさいよ?」


「.......」


「ラナ!」


「分かったわよもう! 保留するから早く話しなさい!!」



 ラナはずっと臨戦態勢を維持したままだ。

 こうしている間にもラナの殺意はいつ溢れ出してしまうか分からない......

 もしこの二人を生かすと私が判断した時に、ラナと対立することは避けたい......相棒だし?



「四大超怪異は騎士にして祭司でもあるんです。奴らは”支配、戦争、飢餓、”死”の順で地上に現れます。」


「僕たちの得た情報だと......伯爵級以上の血肉を触媒に、四大超怪異が召喚の儀を行うことで”神”が現れるらしいです。」


「前回は四大超怪異じゃなく、血肉となるはずの怪異自身が儀式したから不完全だったわけね......」



 なんとなく見えてきた。

 贄となるはずの怪異が、“猿真似”で儀式をしたから”怪異の神”は不完全だった。

 とはいえ......伯爵級が複数体いれば呼び出せるのなら、もっと出現してもおかしくない。


 ここから推察できる理由は......

 ・より別の複雑な条件があるか。

 ・儀式方法を知る怪異が極端に少ないか。

 どちらかのどちらかだろう。


 何にしても人類は2025年から私の誕生まで、信じられないほどの幸運で生き残ってきたわけだ......



「ホントかしらね?その話だと四大超怪異が揃った瞬間に、神を呼べばいいじゃない?」


「そ、それはそうなんですが......僕たちもそこまでは。」


「重要なとこで使っえないだから!!」


「有益な情報ありがと......。」



 だが同時に、サクラの証言と噛み合わない点もある。

 サクラはまだ何かを隠している......それもとんでもなく重大な何かを。



「で?もう殺していいかしら?」


「っ!?僕たちも無抵抗では死にません!」


「せっかくここまで生き残ったんです、私達見逃してもらえませんか?」


「......ラナ。殺すのはなしにしよ。」


「は!?あんた何言ってるの!?情に流されてそれでも人類最強の......」



 ――次の瞬間


 私は臨戦態勢に入った二人を、加重の異能で押し潰した。

 回避も認識もできない、理解すら置き去りにする速攻。

 その瞳には驚愕と、初めて”朔月のムーノ”への畏れが宿る。



「ぅ......ぅごかない......これほどなのか......」


「油断なんて......してない......のに......」


「身柄は拘束させて貰う。二人にはこれから私の為に働いてもらうから。」


「まっ......利用するっていうなら譲歩してあげるわ。奴隷として生きなさい。」



 いや、奴隷にするつもりはないんだけど……

 ラナが納得しているし、説得する気力も今は残っていないからもうそれでいっか......

 私は何事もなかったかのように向き直り、ムーノとして平常の声で言い放つ。



「とりあえずFCTに戻る。ことの顛末も報告が必要だし。」



 そのとき、ラナが二人に聞こえない声量で刺すように言う。



「あんた......レイのこと、完全に忘れるわね?」


「あっ......。」


「流石にドン引きなんだから。」


「ぐうの音も出ません......」



 ――私は余計なことを考えないようにしながら、寒熱のレイ救出へと足を向けた。





 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 ここまで読んでくださりありがとうございます!


 四大超怪異による怪異の神の召喚......

 裏で暗躍し続けていた、淡藤の神が活動を停止した理由は果たしてただの退職なのか?


 次回.....”寒熱のレイ”救出に潜む不穏な影が......?


 面白い、続きが気になる!と思った方は【応援】や【レビュー】をくれると超嬉しいです!!


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